姪の就職2

「だいたい日本語の字は複雑すぎるよ。日本人にもね」

「その点、アルファベットは楽だよな」

「それにしてもパソコンでよくぞワードをつくってくれました」

「そうだよな。ノーベル賞ものだと思うね」

「いずれにしてもインターネットの弊害はあるが、便利になったものですね」

「弊害と言えば、ゲーム中毒も心配なようですね」

「そのようだね」

「私の息子のころに流行りだしましたが、家ではゲームを買っていなかったので、息子は友達の家でやらしてもらったようで、中毒にならずにすみましたが…」

「中毒になると、回復するまで大変ですね」

「親も一緒になる人もいるといいますね」

「漢字への変換は大半が訓読みで行うが、「春」とか「夏」のように音訓両方とも変換できる。知っている漢字でも訓読みがわからないと、辞書に相談するので時間がかかる。息子も自分なりの漢字を打ち込んで登録しているが、多少、漢字の勉強になっているように思える」

 真三は息子と話し合う。

「僕にもやらせて…」

「富士山はまだ登録していないね」

「まだだよ」

「最後に登録リストを見せてよ」

 登録を終了すると、これまで入力した単語、熟語がすべて画面に現れる。

「これ僕の漢字だ」

「まだ全部で423個か、少ないね」

 この程度の単語数では文書作成の場合、便利だと思うまではいかない。字数だけでも3千もあるのだから万のオーダーにならないとダメなんだろうと思う。

 前島とママは時々、つまみを口に運びながら真三の話に耳を傾けている。

「真三さん、マイコンというのはどのようなものでしたか」

「要するに外国語を勉強するようなことに似ている」

「そうですか」

「考えてみると、英語を中学生から高校、大学、社会人になってもやっているが、どうだろう」

「とても外国人と対等に話ができるレベルにはほど遠いです」

「私も日常会話程度です。第二外国語のドイツ語になると、日常会話もできない。外国語をこれだけやっても話せるレベルは知れています。マイコンも同じですね」

「日本語でも方言で話されると、まったく通じないですが、マイコンも極端な言い方をすれば、まったく通じない。だからマイコンの一般論を聞いても、実際にはほとんど役立たない」

「レコード盤なら買って帰ると、メカに弱い親父でもすぐかけられるが、マイコンはノイローゼになりますね」

「真三さんが取り組まれた顧客管理ですが、生命保険会社で同じような話を聞きました」

 前島が話した。

「生保にとって顧客管理は大変重要です。本社の大型コンピュータにソフトがありますが、それだけでは万一、災害でビルが崩れた時に失ってしまう心配があります。そこで予備をつくり、違う場所に厳重に保管しているそうです。このためコンピュータは結構、コストがかかるそうです」

「個人も同じです。企業のように住まいが崩れたときのことまで心配しないですが、擦り減ったり家人がなにかの拍子で壊したりすることも考えられるので予備をつくって別な部屋に保管しておかないと心配になります」

「真三さんは情報を大事にされているからですね」

「誰でも情報は大事ですよ。昔、親父が住所録を写して保管していたのを思い出しますが、人は予備をつくることによって安心するんですな」

「手書きでは大変ですね」

「これもパソコンができて以来、バックアップといって情報の保存を促しています。ソフトの予備、そしてそのソフトを使ってつくったデータ入りの予備、最低二つのディスケットを普段、まったく使わない状態で置いておかなければならないのです。ディスケット一枚1、000円もします。便利さを求めるということはおカネがかかるということです。企業ならコストを下げるために機械化、コンピュータ化した方がメリットはあるだろうが、個人ではそう簡単にメリットは出てこない」

 真三は仕事帰りにマイコンを買った店に立ち寄った。そこで専門学校のマイコン教室生徒募集のパンフレットを手に取った。ベーシックコースから国家試験受験準備コースまで週3回の4コースが記載されている。学費は入学金1万円と合わせて9万円とある。時間は午後6時30分~8時30分だからサラリーマンの真三には続けられない。

 科目(マイコンとは)についての内容:マイコンピュータとマイクロコンピュータ、マイコンの現状と応用、マイコンの近未来とその発展、ソフトウエアー、ハードウエアー、ファームウエアー、何故のCなのか?、各種プログラミングの言語比較、さらに科目としてプログラム(C言語を用いて)、マイコンの中身となっている。

 真三はベーシックを基礎からみっちり学ぼうと思ったらおカネと時間が十分でないと難しいということであることを知った。しかも第3外国語をマスターする根気がいる。当時、40歳の真三には絶望的だった。行政と産業情報センターの共催で行うマイコンスクールもあるが、これは中小企業を対象としたもので3分の1以下の費用で受講できる。ただ内容的には大学の理工学部か工業高校出で実務経験者が対象になっている。要するに専門分野は市の催しでも費用と時間はかかる。

 この日、店のフロッピィコースの教室に申し込んでいた。参加者は真三と合わせて4人だけで、見たところ30~40歳のサラリーマン風である。

「この中でフロッピィをお持ちの方は何人おられますか」と講師がたずねた。

 手を挙げたのは真三だけである。

「フロッピィも慣れてくると難しくありませんので、ぜひマスターしてください」

 講師の話だと、前日から各デスクにマイコン、CRTディスプレイ、フロッピィを4組準備したという。受講者の一人はPC―9800を会社で使用。真三の持っている機種の上の機種で、後の二人は富士通のFM7を自宅で使っている。教科書は『仕事に役立つ実践BASIC』を用いる。フロッピィの概念はこの講座でつかめる。ただシーケンシャルファイル(順次読み出しファイル)の作り方については、その時は理解できたつもりでも、自宅でやってみるとうまくいかない。講習は午後5時まで続いた。

 この講師がマイコンについて余談で話した時に、メーカーのなかには一つのモデル機種を売り出しても他のメーカーの動向を見て、すぐに新機種を出すところがあるが、このあたりはよく観察して買うことが大切だという。たえずモデルチェンジされるとユーザーが迷惑する。またマイコンを買いたいと相談を受けるが、何に使うのか目的をはっきりさせないと選択が難しいそうだ。自動車でも荷物を運ぶのか、スピードを楽しみたいのかといったように用途に応じて選ぶように、マイコンでも目的に応じて機種を選択すべきだという。もっとも真三に言わせれば、自動車のようにイメージがはっきりしないので選択に困るわけで、普通ならゲームもしたいし、ビジネス用にも使いたいと広範囲の用途を考えるのが自然で、とくに個人使用の場合はそうである。沖電気のようにビジネス専用機種に限定しているところは、プログラムを作りやすいようにできているという。機種別のソフトとその内容を説明したパンフレットをメーカーは準備すべきだ。これは今流行のスマフォでも同じで、書店で売っている書籍を買わなければ、商品に付いている説明書だけではほとんど役に立たない。書籍は決して安くなくリスクが少なくない。ソフトも広範囲の機種に使えるよう、メーカーは考えるべきである。同じメーカーでもゲームソフトが使える機種とそうでないものも少なくない。ましてメーカーが違えばどうにもならない。

 最近、総務省はスマフォの2年間縛りや通信費の値下げを要請しているが、社会主義国でないのだから通信業者、メーカーはもっとユーザーの立場に立ったことをしないと、世界から取り残される。

「確かに消費者が置き去りにされているように思いますわ。果物でも家で食べる時に中身が腐っているときがあります。面倒なのでそのまま捨てることも多いですが、返品するには領収書が必要ですし、時間や交通費を考えると、料金の返済だけでは納得できないことがあります」

「メーカーや流通業者、スーパーなど大量販売をするために商品を雑に扱っているように思える時がありますね」

「やはり過当競争の影響ですか」

「そうでしょうね。これから人口減がいろんなところに弊害をもたらすと思いますよ。どうしても人手不足のため従来通りのサービスを維持できないのです」

「モノだけではないですね。介護や老人ホーム、病院など命にかかわるところでも人手不足は深刻になっています」

「だから海外からの移住者を政府は緩和しようとしていますね」

「そうです。日本も欧米並みに移民政策を考えなければならない時代が来るでしょう」

「今は観光客の増加に喜んでいますが…」

 

■岡田 清治プロフィール

1942年生まれ ジャーナリスト

(編集プロダクション・NET108代表)

著書に『高野山開創千二百年 いっぱんさん行状記』『心の遺言』『あなたは社員の全能力を引き出せますか!』『リヨンで見た虹』など多数

※この物語に対する読者の方々のコメント、体験談を左記のFAXかメールでお寄せください。

今回は「就職」「日本のゆくえ」「結婚」「夫婦」「インド」「愛知県」についてです。物語が進行する中で織り込むことを試み、一緒に考えます。

FAX‥0569―34―7971

メール‥takamitsu@akai-shinbunten.net

 

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姪の就職2

「だいたい日本語の字は複雑すぎるよ。日本人にもね」

「その点、アルファベットは楽だよな」

「それにしてもパソコンでよくぞワードをつくってくれました」

「そうだよな。ノーベル賞ものだと思うね」

「いずれにしてもインターネットの弊害はあるが、便利になったものですね」

「弊害と言えば、ゲーム中毒も心配なようですね」

「そのようだね」

「私の息子のころに流行りだしましたが、家ではゲームを買っていなかったので、息子は友達の家でやらしてもらったようで、中毒にならずにすみましたが…」

「中毒になると、回復するまで大変ですね」

「親も一緒になる人もいるといいますね」

「漢字への変換は大半が訓読みで行うが、「春」とか「夏」のように音訓両方とも変換できる。知っている漢字でも訓読みがわからないと、辞書に相談するので時間がかかる。息子も自分なりの漢字を打ち込んで登録しているが、多少、漢字の勉強になっているように思える」

 真三は息子と話し合う。

「僕にもやらせて…」

「富士山はまだ登録していないね」

「まだだよ」

「最後に登録リストを見せてよ」

 登録を終了すると、これまで入力した単語、熟語がすべて画面に現れる。

「これ僕の漢字だ」

「まだ全部で423個か、少ないね」

 この程度の単語数では文書作成の場合、便利だと思うまではいかない。字数だけでも3千もあるのだから万のオーダーにならないとダメなんだろうと思う。

 前島とママは時々、つまみを口に運びながら真三の話に耳を傾けている。

「真三さん、マイコンというのはどのようなものでしたか」

「要するに外国語を勉強するようなことに似ている」

「そうですか」

「考えてみると、英語を中学生から高校、大学、社会人になってもやっているが、どうだろう」

「とても外国人と対等に話ができるレベルにはほど遠いです」

「私も日常会話程度です。第二外国語のドイツ語になると、日常会話もできない。外国語をこれだけやっても話せるレベルは知れています。マイコンも同じですね」

「日本語でも方言で話されると、まったく通じないですが、マイコンも極端な言い方をすれば、まったく通じない。だからマイコンの一般論を聞いても、実際にはほとんど役立たない」

「レコード盤なら買って帰ると、メカに弱い親父でもすぐかけられるが、マイコンはノイローゼになりますね」

「真三さんが取り組まれた顧客管理ですが、生命保険会社で同じような話を聞きました」

 前島が話した。

「生保にとって顧客管理は大変重要です。本社の大型コンピュータにソフトがありますが、それだけでは万一、災害でビルが崩れた時に失ってしまう心配があります。そこで予備をつくり、違う場所に厳重に保管しているそうです。このためコンピュータは結構、コストがかかるそうです」

「個人も同じです。企業のように住まいが崩れたときのことまで心配しないですが、擦り減ったり家人がなにかの拍子で壊したりすることも考えられるので予備をつくって別な部屋に保管しておかないと心配になります」

「真三さんは情報を大事にされているからですね」

「誰でも情報は大事ですよ。昔、親父が住所録を写して保管していたのを思い出しますが、人は予備をつくることによって安心するんですな」

「手書きでは大変ですね」

「これもパソコンができて以来、バックアップといって情報の保存を促しています。ソフトの予備、そしてそのソフトを使ってつくったデータ入りの予備、最低二つのディスケットを普段、まったく使わない状態で置いておかなければならないのです。ディスケット一枚1、000円もします。便利さを求めるということはおカネがかかるということです。企業ならコストを下げるために機械化、コンピュータ化した方がメリットはあるだろうが、個人ではそう簡単にメリットは出てこない」

 真三は仕事帰りにマイコンを買った店に立ち寄った。そこで専門学校のマイコン教室生徒募集のパンフレットを手に取った。ベーシックコースから国家試験受験準備コースまで週3回の4コースが記載されている。学費は入学金1万円と合わせて9万円とある。時間は午後6時30分~8時30分だからサラリーマンの真三には続けられない。

 科目(マイコンとは)についての内容:マイコンピュータとマイクロコンピュータ、マイコンの現状と応用、マイコンの近未来とその発展、ソフトウエアー、ハードウエアー、ファームウエアー、何故のCなのか?、各種プログラミングの言語比較、さらに科目としてプログラム(C言語を用いて)、マイコンの中身となっている。

 真三はベーシックを基礎からみっちり学ぼうと思ったらおカネと時間が十分でないと難しいということであることを知った。しかも第3外国語をマスターする根気がいる。当時、40歳の真三には絶望的だった。行政と産業情報センターの共催で行うマイコンスクールもあるが、これは中小企業を対象としたもので3分の1以下の費用で受講できる。ただ内容的には大学の理工学部か工業高校出で実務経験者が対象になっている。要するに専門分野は市の催しでも費用と時間はかかる。

 この日、店のフロッピィコースの教室に申し込んでいた。参加者は真三と合わせて4人だけで、見たところ30~40歳のサラリーマン風である。

「この中でフロッピィをお持ちの方は何人おられますか」と講師がたずねた。

 手を挙げたのは真三だけである。

「フロッピィも慣れてくると難しくありませんので、ぜひマスターしてください」

 講師の話だと、前日から各デスクにマイコン、CRTディスプレイ、フロッピィを4組準備したという。受講者の一人はPC―9800を会社で使用。真三の持っている機種の上の機種で、後の二人は富士通のFM7を自宅で使っている。教科書は『仕事に役立つ実践BASIC』を用いる。フロッピィの概念はこの講座でつかめる。ただシーケンシャルファイル(順次読み出しファイル)の作り方については、その時は理解できたつもりでも、自宅でやってみるとうまくいかない。講習は午後5時まで続いた。

 この講師がマイコンについて余談で話した時に、メーカーのなかには一つのモデル機種を売り出しても他のメーカーの動向を見て、すぐに新機種を出すところがあるが、このあたりはよく観察して買うことが大切だという。たえずモデルチェンジされるとユーザーが迷惑する。またマイコンを買いたいと相談を受けるが、何に使うのか目的をはっきりさせないと選択が難しいそうだ。自動車でも荷物を運ぶのか、スピードを楽しみたいのかといったように用途に応じて選ぶように、マイコンでも目的に応じて機種を選択すべきだという。もっとも真三に言わせれば、自動車のようにイメージがはっきりしないので選択に困るわけで、普通ならゲームもしたいし、ビジネス用にも使いたいと広範囲の用途を考えるのが自然で、とくに個人使用の場合はそうである。沖電気のようにビジネス専用機種に限定しているところは、プログラムを作りやすいようにできているという。機種別のソフトとその内容を説明したパンフレットをメーカーは準備すべきだ。これは今流行のスマフォでも同じで、書店で売っている書籍を買わなければ、商品に付いている説明書だけではほとんど役に立たない。書籍は決して安くなくリスクが少なくない。ソフトも広範囲の機種に使えるよう、メーカーは考えるべきである。同じメーカーでもゲームソフトが使える機種とそうでないものも少なくない。ましてメーカーが違えばどうにもならない。

 最近、総務省はスマフォの2年間縛りや通信費の値下げを要請しているが、社会主義国でないのだから通信業者、メーカーはもっとユーザーの立場に立ったことをしないと、世界から取り残される。

「確かに消費者が置き去りにされているように思いますわ。果物でも家で食べる時に中身が腐っているときがあります。面倒なのでそのまま捨てることも多いですが、返品するには領収書が必要ですし、時間や交通費を考えると、料金の返済だけでは納得できないことがあります」

「メーカーや流通業者、スーパーなど大量販売をするために商品を雑に扱っているように思える時がありますね」

「やはり過当競争の影響ですか」

「そうでしょうね。これから人口減がいろんなところに弊害をもたらすと思いますよ。どうしても人手不足のため従来通りのサービスを維持できないのです」

「モノだけではないですね。介護や老人ホーム、病院など命にかかわるところでも人手不足は深刻になっています」

「だから海外からの移住者を政府は緩和しようとしていますね」

「そうです。日本も欧米並みに移民政策を考えなければならない時代が来るでしょう」

「今は観光客の増加に喜んでいますが…」