「色心二法」の中身の紹介の前に、「円頓菩薩戒」について書きます。

 町田久成の『敬徳大和上略伝』には敬徳が「円頓菩薩戒」を身につけるべく修行したという叙述が何度も出てきます。 ということは、敬徳の「色心二法」への言及は「円頓菩薩戒」に則っての言及であることが明らかとなります。そしてそれに感動したのが『フェノロサ』、という図式が成り立ちます。

 このことを角度を変えて説明しましょう。

 フェノロサは明治新政府から国家の枢要となる官吏の養成を目指す東京帝国大学のお雇い外国人教師として招聘され来日します。異国の宗教である仏教に関心を持ちますが当初はキリスト教との比較の域を出ませんでした。浄土真宗の僧、赤松連城との対話を読むとそう読み取れます。しかし仏教に惹かれるものがあったのでしょう。仏教の奥義を求めてフェノロサは町田久成の別邸で開講する櫻井敬徳に入門し仏教徒になるのでした。因みに町田久成は薩摩藩の家老の一人で上野の博物館を創始した人。久成が敬徳の弟子になった経緯は定かではありませんが敬徳の教導職としての全国公演を聞いて、これこそ仏の道と感服して入門したと思います。そうでなければ、別邸を敬徳のために開放するなど考えられないからです。

 そして、フェノロサはこの敬徳との邂逅の後に急速に仏教画論を深めていきます。仏教画の深さが理解できるようになったからでしょう。

 以下で、「色心二法」「円頓菩薩戒」「フェノロサの仏画論」を紹介する中で敬徳の哲学者像を明らかにしていきます。

「色心二法」について(『日本思想大系14「日蓮」』)色心の「心」は人間の心。「色」は人間世界。 人間世界は人間の心の在りようによって決まる。人間が慈悲の心を持たず、私利私欲に生きれば人間世界は地獄世界になり、人間が慈悲の心を持ち、共存の心に生きれば人間世界は極楽世界になる。

 この言を聞いてフェノロサはこの思想は仏教にあってキリスト教にない思想と理解して仏教に入信することになったのでした。人間の努力によって世界を変えることができるという思想に感動して、旧約聖書は『神を信じ神を愛せよ』と言い、新約聖書は『神を愛し隣人を愛せよ』と言いますが、仏教ほどに慈悲の心で実践すれば慈悲の世界は実現するとは言っていないと思って。

「円頓菩薩戒」について(寺井良寛著『天台円頓思想の成立と展開』)円頓菩薩戒の意味は速やかに菩薩に至るための戒という意味です。梵網経に示された仏者が守らねばならない戒を解説した本です。十の重戒と、四十八の軽戒を解説しています。まとめて十重四十八軽戒と言います。これらの戒はタすべて禁戒で慈悲実践の妨げになるからいけないと説きます。殺人も窃盗も淫行も慈悲実践の妨げになるからいけないと言います。『慈悲の実現』これこそが仏の願いだと。

 慈悲は隣人愛と同じです。釈迦は、「一人子を大切に思う母の心で以て、いかなる衆生に対しても慈しみと悲れみの心を起こせ」と言い、これを『慈悲の心』と言います。フェノロサはこの教えに感動し仏弟子となり墓を法明院に置くことを遺言としたのでした。

『フェノロサの仏画論』について(村形明子訳『ホートン・ライブラリー資料』)

フェノロサは、観音菩薩像を慈悲で結ばれた世界の実現を願う仏の姿と理解します。決して偶像崇拝などと揶揄しません。(この続きは10月号に)

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 「色心二法」の中身の紹介の前に、「円頓菩薩戒」について書きます。

 町田久成の『敬徳大和上略伝』には敬徳が「円頓菩薩戒」を身につけるべく修行したという叙述が何度も出てきます。 ということは、敬徳の「色心二法」への言及は「円頓菩薩戒」に則っての言及であることが明らかとなります。そしてそれに感動したのが『フェノロサ』、という図式が成り立ちます。

 このことを角度を変えて説明しましょう。

 フェノロサは明治新政府から国家の枢要となる官吏の養成を目指す東京帝国大学のお雇い外国人教師として招聘され来日します。異国の宗教である仏教に関心を持ちますが当初はキリスト教との比較の域を出ませんでした。浄土真宗の僧、赤松連城との対話を読むとそう読み取れます。しかし仏教に惹かれるものがあったのでしょう。仏教の奥義を求めてフェノロサは町田久成の別邸で開講する櫻井敬徳に入門し仏教徒になるのでした。因みに町田久成は薩摩藩の家老の一人で上野の博物館を創始した人。久成が敬徳の弟子になった経緯は定かではありませんが敬徳の教導職としての全国公演を聞いて、これこそ仏の道と感服して入門したと思います。そうでなければ、別邸を敬徳のために開放するなど考えられないからです。

 そして、フェノロサはこの敬徳との邂逅の後に急速に仏教画論を深めていきます。仏教画の深さが理解できるようになったからでしょう。

 以下で、「色心二法」「円頓菩薩戒」「フェノロサの仏画論」を紹介する中で敬徳の哲学者像を明らかにしていきます。

 

「色心二法」について(『日本思想大系14「日蓮」』)色心の「心」は人間の心。「色」は人間世界。 人間世界は人間の心の在りようによって決まる。人間が慈悲の心を持たず、私利私欲に生きれば人間世界は地獄世界になり、人間が慈悲の心を持ち、共存の心に生きれば人間世界は極楽世界になる。

 

 この言を聞いてフェノロサはこの思想は仏教にあってキリスト教にない思想と理解して仏教に入信することになったのでした。人間の努力によって世界を変えることができるという思想に感動して、旧約聖書は『神を信じ神を愛せよ』と言い、新約聖書は『神を愛し隣人を愛せよ』と言いますが、仏教ほどに慈悲の心で実践すれば慈悲の世界は実現するとは言っていないと思って。

 

 「円頓菩薩戒」について(寺井良寛著『天台円頓思想の成立と展開』)円頓菩薩戒の意味は速やかに菩薩に至るための戒という意味です。梵網経に示された仏者が守らねばならない戒を解説した本です。十の重戒と、四十八の軽戒を解説しています。まとめて十重四十八軽戒と言います。これらの戒はタすべて禁戒で慈悲実践の妨げになるからいけないと説きます。殺人も窃盗も淫行も慈悲実践の妨げになるからいけないと言います。『慈悲の実現』これこそが仏の願いだと。

 

 慈悲は隣人愛と同じです。釈迦は、「一人子を大切に思う母の心で以て、いかなる衆生に対しても慈しみと悲れみの心を起こせ」と言い、これを『慈悲の心』と言います。フェノロサはこの教えに感動し仏弟子となり墓を法明院に置くことを遺言としたのでした。

『フェノロサの仏画論』について(村形明子訳『ホートン・ライブラリー資料』)

フェノロサは、観音菩薩像を慈悲で結ばれた世界の実現を願う仏の姿と理解します。決して偶像崇拝などと揶揄しません。(この続きは10月号に)