今夏、プランターに植えたピーマンが結構収穫できた。何年も挑戦して初めて成功。さすがに、秋になったら実を付けなくなり、葉っぱもやや元気がなくなった。引き抜こうとしたとき、ずいぶん前のことだが、通りがかりのおばさんから「葉っぱ食べれるよ」と聞いて、ほんの少しだけ煮てみたことを思い出した。

　あらためて「ピーマン 葉 レシピ」でググってみたら、なんと関連記事が約３８０万件もあるではないか。

　面倒くさい…、という気持ちを抑えて、葉っぱを一枚ずつハサミで切り取り始め、小指の先ほどの小さい実も切り取った。４本処理するのに30分以上はかかった。しかし、私は単純作業が好きなこともあって、その間自分の世界に没頭できた。なぜか、頭の中に高校の現国で習った堀辰雄の随筆『浄瑠璃寺の春』が出てきた。朽ちていくピーマンの枝が作品中の小さな廃寺、それと、わずかに残ったピーマンの花があしび（アセビ・馬酔木）の白い花のイメージに重なったからだろう。そんなわけでその単純作業は実に心地良い時間だった。

　葉っぱはきんぴら風に、実はだし醤油で煮た。早速食べてみた。ごはんのお供に最高！と思った。

　枯れかけて抜いたのを可燃ごみで出せば燃やされるだけ、草・木ごみで出したらリサイクルされそうだが、今回のようにひと手間、というにはかなりの手間だったが、出来上がった料理２品はなかなかの美味、絶品だった。売られている『ごはんのお供』の類は、通常の総菜に比べると結構割高である。そう考えて勝手に金額換算すると、なかなかの金額になるのではと思った。

　『金のなる木』は、葉がコインに似ているのが名前の由来の観葉植物である。役目を終えたピーマン、その葉はコインには全く見えないが『金の貯まる木』と命名したいと思った。

　あ～、コロナが収束したら浄瑠璃寺、行ってみたい！

伊藤 明德

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