昨年生誕150年を迎えた童話作家でピーターラビットのお話の作者ビアトリクス・ポターについて。

 

昨年イングランド　コッツウォルズ地方を旅した折、美しい自然や伝統ある建物を守る団体ナショナルトラストの活動を多く目にしました。

 

その初代の会員であるポターの父親は産業革命時代多くの自然を開発から守る活動をしていました。娘であるポター自身も生涯にわたって4000エーカー（１エーカーは1200坪）もの土地を開発しない条件でナショナル・トラストへ寄付しています。

 

ビアトリクス・ポター（1866-1943）はヴィクトリア時代の上位中産階級の家に生まれ、乳母と家庭教師によって教育され孤独な幼少期を送る。動植物を多く飼育し、解剖や標本、きのこ類の研究にまで発展するが生物学の論文を発表すること自体が女性であることで拒絶される。女性蔑視の時代、高い教養と社会的進出は困難であった。

 

封建的な両親から逃れるべく、出版社に持ち込んだ一枚の絵が6ポンドで売れる。これを機に絵本作家として自立しようとする彼女の人生が始まるのである。

 

初版本は　「ピーターラビットのおはなし」で重版をかさね5万冊の大ヒットを生む。彼女を理解し愛した、最初の出版社のノーマンウォーレン氏とは39歳で婚約するも婚約して一か月で白血病で他界してしまいます。

 

失意の中、湖水地方に生活の拠点を本格的に移動。この地で農作業に従事するようになる。また彼女の絵本に登場するキャラクターをつかったたくさんのグッズを販売し富を築くといった実業家としての顔も見せた。そうして獲得したたくさんの農地をや財産を管理する弁護士と47歳で結婚。

 

自身の死後には彼女が保有する土地資産を歴史的建造物の保護団体であるナショナル・トラストへ寄付するよう遺言を残して、77歳で息を引き取った。

 

働く女性として絵本作家として自立を成し遂げ、理解あるパートナーを得て、抑圧された誰かのものでなくポターという自己を実現したのである。

 

イングランドの田舎、はちみつ色のラインストーンで作られた村々が点在するコッツウォルズ。その中のバイブリーを描いた作品。

 

手前の清流にはマスが泳ぎ、童話の世界のような家々は、人々が変わらず生活する。朝早くスケッチしていると、小学生が「行ってきまーす」と元気よく出て行った。

 

第24回　ポンデザール展出品作　油彩　Ｆ100号　「いざない」

 

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