夏至を少し過ぎた暑い夕暮れ、プランターに水やりしていたら青蛙がやってきた。我が家では初めての大きさで少々驚いた。

　『青蛙　おのれもペンキ　ぬりたてか』。これは前日、武豊町中央公民館の武豊俳句会の展示を見て初めて知って、強烈に頭に焼き付いた句で、まさにその情景だと思った。

 

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　なぜ焼き付いたか‥、この句中の「おのれ《も》」の表現は、『おのれ《は》』ではないのか、なぜだ？と強く疑問に思ったから。ところが作者は、かの芥川龍之介ではないか、きっと大きな理由が隠されているはず。まずは今何かと話題のAIにチャットで聞いてみた。大体は、仏の小説家ジュール・ルナールの詩「青トカゲ、ペンキ塗り立て、ご用心」を基にしていて、「だからこそ青蛙を見て、おのれ《も》なのだ」と。自身の日記に書いているといい、単純に「青トカゲと同様、青蛙も」というだけの脈絡だそう。納得。

　そんな訳で、たまたまこの句が強烈に残っていたところに、青蛙がやってきたのだ。

　見つめ合っていたら、なんとも可愛いらしく思えてきた。ふっと小学５年の夏休みに岐阜の親戚の家で初めて数日間過ごした時のことを思い出した。入学前の白いワンピースを着た少女が遊びに来たことがあって、男親で一人っ子の私には、それはもうとても眩しく思えた。伯母さんはおやつにビニールの三角形の凍った『カンカンジュース』を買ってきてくれて、二人で食べたり、鬼ごっこ的に家じゅうを追っかけ回したりした。６年の夏休みにもその少女が遊びに来た。白いワンピースだった。「そういえば、その次の夏休みからは来なくなったよな～」と思いに耽った途端、青蛙はぴょんと下のプランターの青じその茂みに消えてしまった。

　サザンの映画『稲村ジェーン』のサントラCDの最後の部分、カップルの女性の声で「短かったね、夏ッ」。

　充実した夏を過ごしたい。

伊藤　明德

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