風葉は反省したと思います。どれだけ批判告発しても、社会は変わらず庶民は救われないままに留まるからです。どうしたらいいのか。庶民の生活を正しく評価し、庶民を社会の主人公として励ます方向に、風葉は舵を切ったと思います。後期の作品群がそれを証明しています。もちろん、庶民の生活をすべてOKと言っているのではありません。堕落した生活態度には厳しい目を向け、素晴らしい生活態度には温かいまなざしを向けているからです。しかし高所からの蔑んだ目はありません。これが風葉の素晴らしさです。
庶民は幸せになるべきだ。これは風葉の願いであり思想です。前期作品はこれに貫かれていました。風葉はこれを求めて後期の作品を書く中で、豊かな結婚生活を育む中にこそ人間の幸せはあるという世界観を獲得していきます。豊かな結婚生活は幸せな社会をつくるし、逆に幸せな社会は豊かな結婚生活の中から生まれて来るものだからです。
後期作品には、『さめたる女・続さめたる女・覚醒』、『ストライキ』、『深川女房』、『青春』、『恋ざめ』、『ぐうたら女』、『世間師』、『無為』が属します。それぞれ検討してみることにしましょう。
『さめたる女・続さめたる女・覚醒』=これら3作品は、本当は別個の作品として書かれていますが、1作品のように読めますので、そのように読みます。この作品から、前期作品とは明らかに違った傾向が出てきます。今までは貧困や差別の中で、まともな生活ができない庶民への連帯としての怒りの告発でしたが、この作品からは庶民の自立心を問題にし、庶民が幸せになれる道は何か、このことを問題にするようになったことが分かります。自立心をもって幸せな結婚をし、幸せになっていこう。これをテーマとするようになります。
この作品は、結婚を知らされず結婚させられた女性の覚醒(目覚め)を問題にしています。こういう愛情も何もない夫婦は偽りの夫婦ではないかと。それで恋愛論にあこがれ、姦通罪の罪を受けようとも、駆落ちを計画したりします。
『ストライキ』=プロレタリア文学と言って過言でない作品です。しかし中心は結婚論です。解雇された兄を守ろうと、妹は身をおとしてまでして支えます。
争議の指導者は、妹に心寄せる黒渕を知って、「少々ぐらいの過失は大目に見て、末の始終の面倒を見てやってくれ」と頼みます。
『深川女房』=娘時代に恋人関係にあって、それが清算できないままに魚屋の亭主と結婚した女房が、その恋人と出会う中で、心が揺らぎます。しかし魚屋の亭主の自分への深い思いを知り、この亭主とともに生きていく決意を固めるという物語です。
『青春』=大作です。この作品において風葉は、結婚を大切にすることこそ庶民の幸せという結婚観を確立したように思えます。永遠の恋こそ至宝と考える主人公が、それだけでは幸せになれず、不幸に落ちていく人々を見て、反省し、愛を築いていく結婚こそ大切と思うに至る話になっているからです。
『恋ざめ』=この作品は『青春』を補完する物語として書かれているようです。
『青春』では結婚論を重視したため、恋愛論を軽視したようになった嫌いがあるからです。この作品では、恋に恋する心の大切さが書かれています。この心があってはじめて豊かな結婚生活が築ける。この主張です。この主張において、私は風葉の結婚論の完成を見ます。
(次号につづく)
・老春の戯言No.004戦争と平和 ・私の出会った作品83 ・この指とまれ326 ・長澤晶子のSPEED★COOKING!
・日々是好日 ・知多の哲学散歩道Vol.38 ・若竹俳壇 ・わが家のニューフェイス ・愛とMy Family ・チューリップが咲いた
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風葉は反省したと思います。どれだけ批判告発しても、社会は変わらず庶民は救われないままに留まるからです。どうしたらいいのか。庶民の生活を正しく評価し、庶民を社会の主人公として励ます方向に、風葉は舵を切ったと思います。後期の作品群がそれを証明しています。もちろん、庶民の生活をすべてOKと言っているのではありません。堕落した生活態度には厳しい目を向け、素晴らしい生活態度には温かいまなざしを向けているからです。しかし高所からの蔑んだ目はありません。これが風葉の素晴らしさです。
庶民は幸せになるべきだ。これは風葉の願いであり思想です。前期作品はこれに貫かれていました。風葉はこれを求めて後期の作品を書く中で、豊かな結婚生活を育む中にこそ人間の幸せはあるという世界観を獲得していきます。豊かな結婚生活は幸せな社会をつくるし、逆に幸せな社会は豊かな結婚生活の中から生まれて来るものだからです。
後期作品には、『さめたる女・続さめたる女・覚醒』、『ストライキ』、『深川女房』、『青春』、『恋ざめ』、『ぐうたら女』、『世間師』、『無為』が属します。それぞれ検討してみることにしましょう。
『さめたる女・続さめたる女・覚醒』=これら3作品は、本当は別個の作品として書かれていますが、1作品のように読めますので、そのように読みます。この作品から、前期作品とは明らかに違った傾向が出てきます。今までは貧困や差別の中で、まともな生活ができない庶民への連帯としての怒りの告発でしたが、この作品からは庶民の自立心を問題にし、庶民が幸せになれる道は何か、このことを問題にするようになったことが分かります。自立心をもって幸せな結婚をし、幸せになっていこう。これをテーマとするようになります。
この作品は、結婚を知らされず結婚させられた女性の覚醒(目覚め)を問題にしています。こういう愛情も何もない夫婦は偽りの夫婦ではないかと。それで恋愛論にあこがれ、姦通罪の罪を受けようとも、駆落ちを計画したりします。
『ストライキ』=プロレタリア文学と言って過言でない作品です。しかし中心は結婚論です。解雇された兄を守ろうと、妹は身をおとしてまでして支えます。
争議の指導者は、妹に心寄せる黒渕を知って、「少々ぐらいの過失は大目に見て、末の始終の面倒を見てやってくれ」と頼みます。
『深川女房』=娘時代に恋人関係にあって、それが清算できないままに魚屋の亭主と結婚した女房が、その恋人と出会う中で、心が揺らぎます。しかし魚屋の亭主の自分への深い思いを知り、この亭主とともに生きていく決意を固めるという物語です。
『青春』=大作です。この作品において風葉は、結婚を大切にすることこそ庶民の幸せという結婚観を確立したように思えます。永遠の恋こそ至宝と考える主人公が、それだけでは幸せになれず、不幸に落ちていく人々を見て、反省し、愛を築いていく結婚こそ大切と思うに至る話になっているからです。
『恋ざめ』=この作品は『青春』を補完する物語として書かれているようです。
『青春』では結婚論を重視したため、恋愛論を軽視したようになった嫌いがあるからです。この作品では、恋に恋する心の大切さが書かれています。この心があってはじめて豊かな結婚生活が築ける。この主張です。この主張において、私は風葉の結婚論の完成を見ます。
(次号につづく)