チンクエテッレ(その1 ヴェルナッツァ)

チンクエテッレはイタリアの険しいリグーリア海岸沿いに一列に並ぶ、数世紀もの歴史を持つ5つの村の総称です。これらの海辺の村々はどこも急斜面に色とりどりの家が立ち並び、ブドウ畑が広がっています。港には漁船が数多く見られ、トラットリアではリグーリア州の名物ソースであるペストを使ったシーフード料理を味わうことができます。村々はセンティエーロ アズーロという崖沿いのハイキングトレイルで結ばれており、トレイル沿いから広大な海を一望できます(注 ウィキペディア)

 

2011年6月、私たちはイタリアの世界遺産チンクエテッレという海岸沿いに張り付く5つの村群を訪ねました。宿泊地に選んだのは、5つの村で一番人気のある村「ヴェルナッツァ」です(写真①)。

個人での予約はいろいろ不安がいっぱいでした。セントレア─フランクフルトまでは定刻、その後のジェノバ行きが2時間も遅れます。契約したイタリア人のタクシードライバーが待っていてくれるかどうかハラハラしながら出口を出ると、待っていてくれました。ところがイタリア語しか話せません。住所と相手の電話番号を丸投げして、貸別荘のオーナーと直接やり取りしてもらいました。

でこぼこカーブの悪路を飛ばしてヴェルナッツァ村に着いたのは夜の11時過ぎです。

村の入り口のローマ通りまでしか車は入れないということで、重いトランクを転がして石畳の道を300mほどいくとマルコーニ広場の街灯の下でオーナーが迎えてくれました。さて、それからが大変で、この村は断崖絶壁にへばりつくようにアパートやホテルが立ち並んでいて平坦な道はこの広場しかないのです。説明するのが難しいのですが、幅1m弱の階段がくねくね迷路のように(写真②)ずっと山の尾根まで続いています。

借りたアパートは5階建ての4階部分でしたが、アパートにたどり着くまでに地上3階分くらいの階段がありました。20キロもあるトランクをどうしようと途方に暮れていると、たむろしていた若者たちが女性の分だけ上げてくれました(さすがイタリア男)。同行の師匠は男なので手伝ってもらえず、みんなで上げる羽目に。この階段が1週間滞在するあいだ私たちを苦しめます。何せ港でスケッチしていてトイレに行きたくなると地上7階分くらいあるアパートメントまで登らなければなりません。特に忘れ物をした時が最悪で滞在二日目には太ももとふくらはぎがパンパンでした(写真③)。

 

このチンクエテッレの村はかつて大変な土地でした。11世紀頃に要塞として築かれた歴史を持ち、1000年にわたり村々の間を行き来するのは船のみでした。いわば陸の孤島であったため、独自の文化を育んできた往時の面影が今も残ります。家々は海と断崖の間に寄り添うように建ち、急斜面にはようやく根付いたブドウの段々畑が広がります。その希少なブドウからは「シャケトラ」という甘口ワインが醸され、高級ワインとしてチンクエテッレの名産になっています。

現在では鉄道、道路も完備され、その険しい海岸線に適応した独特の暮らしぶりと美しさにより1997年世界遺産に登録されました(写真④)。

 

翌日からスケッチブックを抱えてあちこちで絵を描く私たちは村で話題になっていたようで、暇な年寄りの男連中が大声で「ジャポネ何とか…」「〇〇…ジャポネ」と会話が聞こえてきます。ほとんどの旅行者は、昼頃ポルトベーネレから船でやってきてお土産と昼食をとり美しい写真を撮って帰ってゆきます。金持ちにとって快適なホテルはありませんでしたから。どこの田舎に行ってもそうですが、長く滞在するといろんなことが見えてきます。

この村の路地を歩くとアパートとアパートの間にはロープが渡され、洗濯物がいっぱい干してあります。柔軟剤の香り、潮の香り、レストランから漏れるニンニクとハーブの香り、昼間からワイン飲んでトランプやってるおじさんたちのはしゃぎ声、路地には猫たちが昼寝をし、窓際に花が植えられ、階段の上り下りの際には窓からテレビのイタリア語が聞こえてきます。そんな生活感がすごく近い場所でスケッチすることは、決して美しい写真だけで絵を描く以上のものを心に取り込むことができるのでした。

次号に続く

 

 

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チンクエテッレ

(その1 ヴェルナッツァ)

チンクエテッレはイタリアの険しいリグーリア海岸沿いに一列に並ぶ、数世紀もの歴史を持つ5つの村の総称です。これらの海辺の村々はどこも急斜面に色とりどりの家が立ち並び、ブドウ畑が広がっています。港には漁船が数多く見られ、トラットリアではリグーリア州の名物ソースであるペストを使ったシーフード料理を味わうことができます。村々はセンティエーロ アズーロという崖沿いのハイキングトレイルで結ばれており、トレイル沿いから広大な海を一望できます(注 ウィキペディア)

 

2011年6月、私たちはイタリアの世界遺産チンクエテッレという海岸沿いに張り付く5つの村群を訪ねました。宿泊地に選んだのは、5つの村で一番人気のある村「ヴェルナッツァ」です(写真①)。

個人での予約はいろいろ不安がいっぱいでした。セントレア─フランクフルトまでは定刻、その後のジェノバ行きが2時間も遅れます。契約したイタリア人のタクシードライバーが待っていてくれるかどうかハラハラしながら出口を出ると、待っていてくれました。ところがイタリア語しか話せません。住所と相手の電話番号を丸投げして、貸別荘のオーナーと直接やり取りしてもらいました。

でこぼこカーブの悪路を飛ばしてヴェルナッツァ村に着いたのは夜の11時過ぎです。

村の入り口のローマ通りまでしか車は入れないということで、重いトランクを転がして石畳の道を300mほどいくとマルコーニ広場の街灯の下でオーナーが迎えてくれました。さて、それからが大変で、この村は断崖絶壁にへばりつくようにアパートやホテルが立ち並んでいて平坦な道はこの広場しかないのです。説明するのが難しいのですが、幅1m弱の階段がくねくね迷路のように(写真②)ずっと山の尾根まで続いています。

借りたアパートは5階建ての4階部分でしたが、アパートにたどり着くまでに地上3階分くらいの階段がありました。20キロもあるトランクをどうしようと途方に暮れていると、たむろしていた若者たちが女性の分だけ上げてくれました(さすがイタリア男)。同行の師匠は男なので手伝ってもらえず、みんなで上げる羽目に。この階段が1週間滞在するあいだ私たちを苦しめます。何せ港でスケッチしていてトイレに行きたくなると地上7階分くらいあるアパートメントまで登らなければなりません。特に忘れ物をした時が最悪で滞在二日目には太ももとふくらはぎがパンパンでした(写真③)。

 

このチンクエテッレの村はかつて大変な土地でした。11世紀頃に要塞として築かれた歴史を持ち、1000年にわたり村々の間を行き来するのは船のみでした。いわば陸の孤島であったため、独自の文化を育んできた往時の面影が今も残ります。家々は海と断崖の間に寄り添うように建ち、急斜面にはようやく根付いたブドウの段々畑が広がります。その希少なブドウからは「シャケトラ」という甘口ワインが醸され、高級ワインとしてチンクエテッレの名産になっています。

現在では鉄道、道路も完備され、その険しい海岸線に適応した独特の暮らしぶりと美しさにより1997年世界遺産に登録されました(写真④)。

 

翌日からスケッチブックを抱えてあちこちで絵を描く私たちは村で話題になっていたようで、暇な年寄りの男連中が大声で「ジャポネ何とか…」「〇〇…ジャポネ」と会話が聞こえてきます。ほとんどの旅行者は、昼頃ポルトベーネレから船でやってきてお土産と昼食をとり美しい写真を撮って帰ってゆきます。金持ちにとって快適なホテルはありませんでしたから。どこの田舎に行ってもそうですが、長く滞在するといろんなことが見えてきます。

この村の路地を歩くとアパートとアパートの間にはロープが渡され、洗濯物がいっぱい干してあります。柔軟剤の香り、潮の香り、レストランから漏れるニンニクとハーブの香り、昼間からワイン飲んでトランプやってるおじさんたちのはしゃぎ声、路地には猫たちが昼寝をし、窓際に花が植えられ、階段の上り下りの際には窓からテレビのイタリア語が聞こえてきます。そんな生活感がすごく近い場所でスケッチすることは、決して美しい写真だけで絵を描く以上のものを心に取り込むことができるのでした。

次号に続く