恩師の記念行事で上京、会場には朝日新聞社、新潮社ほか何社か来ていた。

　朝日新聞には過去に、１００枚くらいの写真作品を紛失し「後任にちゃんと返却するように伝えたんですがね～、えへへ～」と幕引きされたことがあった。

　それ以来の怨念の（笑）朝日新聞社、二次会で、酔いが少し回ったころ隣の席に移って「ずいぶん以前の話だが‥、朝日新聞社は不誠実で大っ嫌いだ」と切り出した。もちろん近づくための口実。彼は趣味のバンドでドラムスとのことで、すぐに音楽の話に、YOSHIKIに始まってリンゴ・スターに、最後には「やっぱ～、ビートルズ最高～！！」で、宴会が終わるまで小一時間。

　改めて名刺を見たら、名は佐々木広人さん、朝日新聞出版の本部長、新聞以外の出版物の実質トップということなのだろう。ネットで調べたら、なんと『終活』という言葉の生みの親だという（２００９年）。「へ―、あの人が‥」。まだ40代のイイ男だ。

　『終活』とは「人生の終わりのための活動」の略。むしろそれまでなかったのが不思議だとさえ思った。

　一方、同音の『就活』、ボランティア活動で知り合ったJazz研究会の学生さん達と「就活、順調？」と話したりした。彼らは、学業もサークル活動も真剣にやりながら『就活』を終え、社会に出ていく。今まで幾度も見送った。

　彼らを見ていると、大変だが『就活』とはなんと希望に満ちた未来が待っている言葉なのか、と思う。同音異義語でこれほど辿り着く結果が真逆なのは思いつかない。

　JazzにSummertimeという大好きな子守歌がある。

　「夏になると魚が跳ね、綿の木が育ち、父さん金持ち、母さん美人、だから坊や泣かないで‥」。何度も演奏された。

　「卒業式に、花束ならぬ、綿束を作って贈ろう！」。庭では今、真っ白な綿花がいっぱいはじけている。

　しかし、今年も卒業式に一般人は入れない、家族でさえもだ。

　『就活』を終え、社会に飛び立つ晴れの姿が見られない。

　新型コロナウイルスが憎い。憎い。

伊藤　明德

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