四海波の笠松川の橋のたもとに立っていると、河和の航空隊の兵器などを載せた大きな米軍のトラックが3台、4台と猛スピードで北上して行った。すごい砂ぼこりだ。今度は反対側から深緑色のジープが猛スピードで来た。綺麗で派手な女性が、米兵の膝の上に足を乗せて腕を首に回している。フロントガラスを前に倒しているのではっきりと見えた。女性は日本人で、名古屋から乗せてきたのだと思った。しばらくすると次々と。
ジープが入っていった敷地には、水色ときわどい黄色をあしらった、一部の丸い窓が印象的な派手な建物が存在感を見せて『FUKI HOTEL』の看板があった。横付けした米兵は私を見つけて「カマヘン…ボーイ!ボーイ!」。チューインガムをくれた。怖くて食べるのを躊躇していると、早く食べなさい‥と言ったのだろう、噛みだすと米兵は微笑んだ。
庭には大きなプールがあったが、ホテル建屋の東側は松林が美しく、敷地内まで海が来ていた。ある日、綺麗でグラマラスな日本人の女性が、チャプチャプと水浴びをしていた。こっそり覗いている私を米兵が見つけて「カマヘン…ボーイ!ボーイ!」。チョコレートをくれた。飛び上がるほどうまかった。
豪華なダンスホールもあって、電気蓄音機と大きなスピーカーが置いてあった。よく楽団が演奏していた。米兵がドラムを叩いていたこともあった。日本人の管理人に見つかった時は、追い出された。それでも、松の木によじ登って覗いた。
このホテルには、村の祭りの時は山車も寄った。いろいろいっぱい貰えたという。
米兵の言った「カマヘン」は「Come in」ではなく、きっと「Come on in」がそう聴こえたのでは…。お客を迎え入れる気持ちでの「さあさあ、お入り」ではないか。米兵たちは少年を大切に思っていたのだ、と私は思った。
話を聞き終えた瞬間、目の前の少年は私の歳を瞬間的に追い越した。そしてFUKI HOTELはいくらネット検索しても出てこない…。四海波はやっぱり浦島太郎の世界だ…。
伊藤 明德
・『新・現代家庭考』 就職115 ・私の出会った作品53 ・この指とまれ296 ・長澤晶子のSPEED★COOKING!
・日々是好日 ・知多の哲学散歩道Vol.23 ・若竹俳壇 ・愛とMy Family ・わが家のニューフェイス ・意地悪?or仲良し?
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四海波の笠松川の橋のたもとに立っていると、河和の航空隊の兵器などを載せた大きな米軍のトラックが3台、4台と猛スピードで北上して行った。すごい砂ぼこりだ。今度は反対側から深緑色のジープが猛スピードで来た。綺麗で派手な女性が、米兵の膝の上に足を乗せて腕を首に回している。フロントガラスを前に倒しているのではっきりと見えた。女性は日本人で、名古屋から乗せてきたのだと思った。しばらくすると次々と。
ジープが入っていった敷地には、水色ときわどい黄色をあしらった、一部の丸い窓が印象的な派手な建物が存在感を見せて『FUKI HOTEL』の看板があった。横付けした米兵は私を見つけて「カマヘン…ボーイ!ボーイ!」。チューインガムをくれた。怖くて食べるのを躊躇していると、早く食べなさい‥と言ったのだろう、噛みだすと米兵は微笑んだ。
庭には大きなプールがあったが、ホテル建屋の東側は松林が美しく、敷地内まで海が来ていた。ある日、綺麗でグラマラスな日本人の女性が、チャプチャプと水浴びをしていた。こっそり覗いている私を米兵が見つけて「カマヘン…ボーイ!ボーイ!」。チョコレートをくれた。飛び上がるほどうまかった。
豪華なダンスホールもあって、電気蓄音機と大きなスピーカーが置いてあった。よく楽団が演奏していた。米兵がドラムを叩いていたこともあった。日本人の管理人に見つかった時は、追い出された。それでも、松の木によじ登って覗いた。
このホテルには、村の祭りの時は山車も寄った。いろいろいっぱい貰えたという。
米兵の言った「カマヘン」は「Come in」ではなく、きっと「Come on in」がそう聴こえたのでは…。お客を迎え入れる気持ちでの「さあさあ、お入り」ではないか。米兵たちは少年を大切に思っていたのだ、と私は思った。
話を聞き終えた瞬間、目の前の少年は私の歳を瞬間的に追い越した。そしてFUKI HOTELはいくらネット検索しても出てこない…。四海波はやっぱり浦島太郎の世界だ…。
伊藤 明德