姪の就職2
三人の話は続く。
「とにかく時代のスピードが速く、しかも世界中が混沌としている状態ですね」
「いや、まったく同感ですね」
「今年の景気は下降するという人が多いですね」
「アメリカの景気も陰りを予感します」
「米中の間で緊張が高まっていますので、へたすれば世界恐慌になる心配もあります」
「そこまでいかないと思いますが…」
「確かに中国の動きは不気味ですね。言論の自由が保障されていませんので、どこまで実態がつかめているのか心配です」
「その通りですね。中国経済は下降しているという経済人もいますが、以前、中国経済は行き詰ると予測した専門家も多くいました。しかし実際はアメリカを凌駕しようという見方もあります」
「米中が冷戦時代に入れば、世界は緊張しますね」
「ただ、これほど往来が自由になっていますので、以前のソ連のような時代とは違うと思いますね」
「双方は核を使えないとわかっていても、核保有を拡大しようとしています」
「21世紀は話し合いで解決するしかないのですが、どうしても局地戦争が起こっています。これは危険ですよね」
「だいたい、今は景気がいいのかというと、いろいろ景気に関する数字は就職率などいいのですが、実態は格差が拡大しており、よくないという人も少なくないですよ」
「政府の今後の政策を見ていると何をしているのかと疑いたくなります」
「確かに理解に苦しむところはありますね。例えば10%の消費税で景気を悪化させないように緩和策を打っていますが、それなら消費税を凍結したらいいのではと思ってしまう」
「還元策は複雑すぎて、結局失敗するように思いますね」
「そうだね」
「大阪の橋下さんが言っていましたが、外国人を日本に招き入れるのも、単に労働力の補充ということでやると、余った場合はどうしようもない。だから彼らを日本人とすべての面で同じ待遇にするということでないと失敗すると話しておられました」
「確かに業界の人手不足ということで安易に取り組んでいますが、景気が悪化すれば状況は一変すると思いますよ」
「外国人が多く住む町では、子供の学校教育、家族と土地の住民との融和といいますか、習慣や決まりごとに慣れるのに時間がかかるようですね」
「そうでしょうね」
「住民だって役所の手続きや自治会との付き合いなど面倒なのに、外国人なら戸惑うことも多いと思いますよ」
「それでも就職が保障されていればまだしも、日本語も読めないとなると混乱しますね」
「日本人は島国で純粋性を保ってきましたので、外国人との共生では苦労するでしょう。朝鮮人との付き合いもいまだに面倒を起こしています」
「これからの時代、多様性を認めなければいけないと言われるが、慣れるまで時間がかかるでしょう」
「日本の過去を振り返ると、GDPが伸びているほどに幸福度は伸びていないということがはっきりしているため、全体に景気感がないのでしょうね」
「おカネやモノで人間は満足しないということでしょう」
「おカネは大事だけど、失敗する人も少なくない」
「先日、『ほたる川のまもりびと』という長崎のダム工事で沈む村人の反対闘争を描いたドキュメンタリー映画を見たが、村人の中には県から示された高額の補償金に目がくらみ、それを受け取って村を出た人がいた。その人は博打と酒に溺れ、いまは生活保護を受けている。慣れない大金をつかんだため、人生が狂ったのだと、村人はつぶやいていたのが印象的だった」
「確かになれない大金はよほど意識していないと失敗することが少なくないですよ」
「いま話題になっている日産のゴーン会長だって、法律的にはわかりませんが、日本人の心情としたら大リストラを断行している最中に私腹を肥やしていると見られたらイメージダウンの心配があります」
「確かにそうですが、ゴーン会長の立場からすれば、瀕死の状態だった日産をルノーの力を借りて再建したのだから、国際感覚の標準からいえば、もっと報酬をもらってもいいだろうと思う点はわからないでもないな」
「真三さんは経営者だったからゴーン会長の心情が理解できるのですね」
「経営者というのは一般にそうだろうということですが、きわめて欧米型とは思います」
「これがグローバル化でしょうか…」
「これからいろいろ問題が出てくるでしょうね」
「日本の場合、宗教が絡んでいないので、まだトラブルが少ない方かもしれない」
「いま一つわかりにくいのが、ファーウェイ問題ですね」
「おそらく中国のファーウェイがAIやロボットで世界最先端を行っているので、米国は先行き恐れている表れではないだろうか、前島さんはどう思います」
「いやー、詳細がわかりませんので、何とも言えませんが、ファーウェイが中国政府にとって重要な企業であるのでしょうね。この企業を中核にして中国はAIやロボットの分野で世界をリードしようとしているのではないですか。そうなると米国にとって軍事面でも将来、中国の後塵を拝する危惧を抱いているのでしょう」
「そうでしょうね」
「中国の人口は米国の3倍以上でしょう、おそらく中国経済の規模が米国を凌駕するのは時間の問題でしょう。そうなると世界をリードしたい米国としては、いまのうちに中国を叩いておかないと、取り返しがつかないと思っていませんか」
「それはあるでしょうね。中国はなんといっても共産国で共産党一党支配の国ですからファーウェイは中国政府と一体になっていると考えますよね」
「そこが問題の核心でしょう」
「ソ連崩壊後、自由主義経済、つまり西側が経済では絶対に強いと信じてきたのです。ところが中国の台頭はその自信が崩れてきたように見えますね」
「中国もあれだけ大きい国ですから、想像以上に問題や課題を抱えているかもしれないが、先端技術の分野で、例えばロボットや宇宙飛行で一番進んでいることを見せることができれば、国民の国威発揚にもなりますし、西側の国々にも脅威を植えつけられる」
三人の話は最後の一杯だけということで始まったが、なかなか終わらない。それだけ三人は好奇心が旺盛ということだろう。
「ところで真三さん、インドはどうなのですか」
「先日、インドの映画・パッドマンを見ました。映画には感動しましたが、インドの大衆社会は実に遅れているというか、格差社会がひどいように思いました」
「どういうことですか」
「パッドというのは女性の生理用品です。北インドの貧村で暮らす、気のいい愛妻家の主人公はある日、新妻が生理のときに汚いボロ布で手当てしていることを知り心を痛める。不衛生だと市販の生理用ナプキンをすすめるが、『高価すぎる』と妻に拒否されてしまう。そこで彼は安価なナプキンを自作しようと思いつく。当時、インド女性のナプキン使用率はたったの12%。
インドでは古い因習と価値観で生理=穢れと考える人々の意識は根強く、愚直な彼は妻を守りたい一心で試作品を自らの股にあてがい実験を繰り返す。つらいのは、妻が研究を非難し、恥だと泣いて実家に帰ってしまうことだった。村の人たちも彼を変わり者だと非難する。
映画後半で彼の一途さと発想力が、幸運を引き寄せる。ついに彼がナプキン製造機を発明したのみならず、それを安価で農村の女性たちに販売し、女性たちが儲けを出せるシステムも思いつき5億人の女性を助けるという成功物語でした」
「面白そうですね」
「長時間の映画はユーモアもあってあきさせない。しかも社会の弱点を突き、まだまだ不当なほど地位の低い女性たちを応援し、再考を促す内容に仕上がっている」
「だからインドの貧困を見せられた思いなのですね。舞さんはそういうインドで滞在されるのが心配になりません」
「先日、インドからはがきで生活の一端を伝えてきました。」
「たしか舞さんはバンガロールに行かれたのですね」
「インドは舞の父親が離婚後、交際した女子大生がインドのアンタッチャブルに関心がありました。その遺書的な手紙を見て、いつかインドへ行こうと考えたようです」
「そうでしたね。以前にお聞きしました。友人という方、舞さんの大学のクラブの先輩で、インドでヨガを学んでいたのですね」
「そうです。舞は彼女のすすめでインドのシリコンバレーといわれるカルナータカ州の州都、バンガロールの日系企業の門をたたいた。この企業のトップはインド人ですが、得意先に日本企業が多く、受け付けでの対応に日本人を求めていたようです」
「入社できたのですか」
「バンガロールに滞在している間、契約社員で入社できるようになったようです」
「では日本の大学は休学ですか」
「そうなると思います。現地ではインターナショナルスクールに入学して語学の特訓を受けているそうです」
「一安心ですね」
■岡田 清治プロフィール
1942年生まれ ジャーナリスト
(編集プロダクション・NET108代表)
著書に『高野山開創千二百年 いっぱんさん行状記』『心の遺言』『あなたは社員の全能力を引き出せますか!』『リヨンで見た虹』など多数
※この物語に対する読者の方々のコメント、体験談を左記のFAXかメールでお寄せください。
今回は「就職」「日本のゆくえ」「結婚」「夫婦」「インド」「愛知県」についてです。物語が進行する中で織り込むことを試み、一緒に考えます。
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姪の就職2
三人の話は続く。
「とにかく時代のスピードが速く、しかも世界中が混沌としている状態ですね」
「いや、まったく同感ですね」
「今年の景気は下降するという人が多いですね」
「アメリカの景気も陰りを予感します」
「米中の間で緊張が高まっていますので、へたすれば世界恐慌になる心配もあります」
「そこまでいかないと思いますが…」
「確かに中国の動きは不気味ですね。言論の自由が保障されていませんので、どこまで実態がつかめているのか心配です」
「その通りですね。中国経済は下降しているという経済人もいますが、以前、中国経済は行き詰ると予測した専門家も多くいました。しかし実際はアメリカを凌駕しようという見方もあります」
「米中が冷戦時代に入れば、世界は緊張しますね」
「ただ、これほど往来が自由になっていますので、以前のソ連のような時代とは違うと思いますね」
「双方は核を使えないとわかっていても、核保有を拡大しようとしています」
「21世紀は話し合いで解決するしかないのですが、どうしても局地戦争が起こっています。これは危険ですよね」
「だいたい、今は景気がいいのかというと、いろいろ景気に関する数字は就職率などいいのですが、実態は格差が拡大しており、よくないという人も少なくないですよ」
「政府の今後の政策を見ていると何をしているのかと疑いたくなります」
「確かに理解に苦しむところはありますね。例えば10%の消費税で景気を悪化させないように緩和策を打っていますが、それなら消費税を凍結したらいいのではと思ってしまう」
「還元策は複雑すぎて、結局失敗するように思いますね」
「そうだね」
「大阪の橋下さんが言っていましたが、外国人を日本に招き入れるのも、単に労働力の補充ということでやると、余った場合はどうしようもない。だから彼らを日本人とすべての面で同じ待遇にするということでないと失敗すると話しておられました」
「確かに業界の人手不足ということで安易に取り組んでいますが、景気が悪化すれば状況は一変すると思いますよ」
「外国人が多く住む町では、子供の学校教育、家族と土地の住民との融和といいますか、習慣や決まりごとに慣れるのに時間がかかるようですね」
「そうでしょうね」
「住民だって役所の手続きや自治会との付き合いなど面倒なのに、外国人なら戸惑うことも多いと思いますよ」
「それでも就職が保障されていればまだしも、日本語も読めないとなると混乱しますね」
「日本人は島国で純粋性を保ってきましたので、外国人との共生では苦労するでしょう。朝鮮人との付き合いもいまだに面倒を起こしています」
「これからの時代、多様性を認めなければいけないと言われるが、慣れるまで時間がかかるでしょう」
「日本の過去を振り返ると、GDPが伸びているほどに幸福度は伸びていないということがはっきりしているため、全体に景気感がないのでしょうね」
「おカネやモノで人間は満足しないということでしょう」
「おカネは大事だけど、失敗する人も少なくない」
「先日、『ほたる川のまもりびと』という長崎のダム工事で沈む村人の反対闘争を描いたドキュメンタリー映画を見たが、村人の中には県から示された高額の補償金に目がくらみ、それを受け取って村を出た人がいた。その人は博打と酒に溺れ、いまは生活保護を受けている。慣れない大金をつかんだため、人生が狂ったのだと、村人はつぶやいていたのが印象的だった」
「確かになれない大金はよほど意識していないと失敗することが少なくないですよ」
「いま話題になっている日産のゴーン会長だって、法律的にはわかりませんが、日本人の心情としたら大リストラを断行している最中に私腹を肥やしていると見られたらイメージダウンの心配があります」
「確かにそうですが、ゴーン会長の立場からすれば、瀕死の状態だった日産をルノーの力を借りて再建したのだから、国際感覚の標準からいえば、もっと報酬をもらってもいいだろうと思う点はわからないでもないな」
「真三さんは経営者だったからゴーン会長の心情が理解できるのですね」
「経営者というのは一般にそうだろうということですが、きわめて欧米型とは思います」
「これがグローバル化でしょうか…」
「これからいろいろ問題が出てくるでしょうね」
「日本の場合、宗教が絡んでいないので、まだトラブルが少ない方かもしれない」
「いま一つわかりにくいのが、ファーウェイ問題ですね」
「おそらく中国のファーウェイがAIやロボットで世界最先端を行っているので、米国は先行き恐れている表れではないだろうか、前島さんはどう思います」
「いやー、詳細がわかりませんので、何とも言えませんが、ファーウェイが中国政府にとって重要な企業であるのでしょうね。この企業を中核にして中国はAIやロボットの分野で世界をリードしようとしているのではないですか。そうなると米国にとって軍事面でも将来、中国の後塵を拝する危惧を抱いているのでしょう」
「そうでしょうね」
「中国の人口は米国の3倍以上でしょう、おそらく中国経済の規模が米国を凌駕するのは時間の問題でしょう。そうなると世界をリードしたい米国としては、いまのうちに中国を叩いておかないと、取り返しがつかないと思っていませんか」
「それはあるでしょうね。中国はなんといっても共産国で共産党一党支配の国ですからファーウェイは中国政府と一体になっていると考えますよね」
「そこが問題の核心でしょう」
「ソ連崩壊後、自由主義経済、つまり西側が経済では絶対に強いと信じてきたのです。ところが中国の台頭はその自信が崩れてきたように見えますね」
「中国もあれだけ大きい国ですから、想像以上に問題や課題を抱えているかもしれないが、先端技術の分野で、例えばロボットや宇宙飛行で一番進んでいることを見せることができれば、国民の国威発揚にもなりますし、西側の国々にも脅威を植えつけられる」
三人の話は最後の一杯だけということで始まったが、なかなか終わらない。それだけ三人は好奇心が旺盛ということだろう。
「ところで真三さん、インドはどうなのですか」
「先日、インドの映画・パッドマンを見ました。映画には感動しましたが、インドの大衆社会は実に遅れているというか、格差社会がひどいように思いました」
「どういうことですか」
「パッドというのは女性の生理用品です。北インドの貧村で暮らす、気のいい愛妻家の主人公はある日、新妻が生理のときに汚いボロ布で手当てしていることを知り心を痛める。不衛生だと市販の生理用ナプキンをすすめるが、『高価すぎる』と妻に拒否されてしまう。そこで彼は安価なナプキンを自作しようと思いつく。当時、インド女性のナプキン使用率はたったの12%。
インドでは古い因習と価値観で生理=穢れと考える人々の意識は根強く、愚直な彼は妻を守りたい一心で試作品を自らの股にあてがい実験を繰り返す。つらいのは、妻が研究を非難し、恥だと泣いて実家に帰ってしまうことだった。村の人たちも彼を変わり者だと非難する。
映画後半で彼の一途さと発想力が、幸運を引き寄せる。ついに彼がナプキン製造機を発明したのみならず、それを安価で農村の女性たちに販売し、女性たちが儲けを出せるシステムも思いつき5億人の女性を助けるという成功物語でした」
「面白そうですね」
「長時間の映画はユーモアもあってあきさせない。しかも社会の弱点を突き、まだまだ不当なほど地位の低い女性たちを応援し、再考を促す内容に仕上がっている」
「だからインドの貧困を見せられた思いなのですね。舞さんはそういうインドで滞在されるのが心配になりません」
「先日、インドからはがきで生活の一端を伝えてきました。」
「たしか舞さんはバンガロールに行かれたのですね」
「インドは舞の父親が離婚後、交際した女子大生がインドのアンタッチャブルに関心がありました。その遺書的な手紙を見て、いつかインドへ行こうと考えたようです」
「そうでしたね。以前にお聞きしました。友人という方、舞さんの大学のクラブの先輩で、インドでヨガを学んでいたのですね」
「そうです。舞は彼女のすすめでインドのシリコンバレーといわれるカルナータカ州の州都、バンガロールの日系企業の門をたたいた。この企業のトップはインド人ですが、得意先に日本企業が多く、受け付けでの対応に日本人を求めていたようです」
「入社できたのですか」
「バンガロールに滞在している間、契約社員で入社できるようになったようです」
「では日本の大学は休学ですか」
「そうなると思います。現地ではインターナショナルスクールに入学して語学の特訓を受けているそうです」
「一安心ですね」