タケカワさんは、奈良橋さんのことを「短い言葉で真実を語る人」と言っている。それは英語脳だからかもしれない。日本語だと主語のあとにダラダラと言葉が続いて、結論になかなか至らない。詞を書くときも、余分な言葉をそぎ落として、よりシンプルな言葉で伝えようと努めている。
つもりの排除
奈良橋さんの著書に、「話したつもり、聞いたつもり、わかったつもりの会話が人と人とのコミュニケーションを難しくさせ、誤解を招く」とあった。自分の思いが強すぎると、人にゆだねたり、人の話を聞けなくなったりする。
コミュニケーションの原点は「Really talk & really listen」。真剣に話し、しっかり聞くことだと言う。伝えたいことを全力で話し、全力で聴く必要がある。
「自分の魂から相手に向かって一筋の光が届き、相手は心を開いてその光を受け取るイメージ」という奈良橋さんのことばは深い。
奈良橋さんが作詞した「銀河鉄道999」には、「ずっと旅は終わらない」という歌詞がある。奈良橋さん自身の旅もまだまだ先へ先へと続いていく。
「夢中になっているものがたくさんあって、その先を考えるすき間さえない。五本の電車が同時に出発を待っているような感じ(笑)。来年は、亡くなった今井雅之から引き継いだ映画のほかにもう一つ、公開予定の映画があります。広島の被爆者・佐々木禎子さんとアメリカで彼女のことを広めた女性の二人の物語で、映画のタイトルは「千羽鶴」です。この仕事はキャスティングだけでなく、どっぷりと中に入りこんでいるから忙しくて(笑)。」
「つもり」を排除しているから、どんなことにも先入観を持たない。「全力」で相手を理解し、許し、尊重する。
だからこそ、人の美質を見抜き、国の枠にこだわらず、「橋渡し」が出来るのだろう。諍いをなくすヒントが、奈良橋さんの人生にあるような気がした。
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