「この本を書いた思いは、グローバリゼーションの本格化と国家機能の強化という時代状況の中、人間力を強化する必要があるという思いからだ」
「真理は具体的であるべきと考えているから、実行不可能なことは書いていない」
怒らない
怒りの感情を、どうコントロールするかが、よりよい人生を送るポイントだという。
512日、拘置所で暮らしたときも、怒りの感情はなかったそうだ。「自分をごまかしたくない良心のおかげで、怒りで自分を見失うまいという一心で」平静な感情が保てたそうだ。
佐藤さんが言うには、まず、自分の中の「怒り」を紙に書き出すと良いのだそうだ。なんだかイライラするとか、怒りが湧いてきたという時に、この感情がなぜ出てきたのか、どこから出てきたのかを客観的に分析する。嫉妬からくるものなのか、コンプレックスからくるのか、焦りからなのか…。その出所がわかったら、嫉妬やコンプレックスや焦りの理由を分析していく。こうして論理的に感情の糸をほどいていくと、その作業自体で冷静になれる。糸をほどくには、小説や映画で、人生の代理体験するのもいい。気持ちを昇華し、カタルシス(浄化)を得ることで、心を柔らかくするには、芸能や芸術、文芸の役割も大きいという。なるほどと深く合点。
びびらない
「びびらない」ためには、相手の内在的論理を知ることが重要という。
それこそ、検察の取り調べは、びびらせるようなことばかりでは?と問うと、「旧ソ連崩壊という未曾有の体験も大きい。代理経験も含めてさまざまな経験をしておけば、何かびびるような場面に出くわした時でも、『この人は前に会ったあの人に言動が似ているな』とか、『いまの状況は本に書かれていた状況にそっくりだ』と冷静に分析できる。相手がよくわからないから恐怖心が生まれてびびってしまうのだ。経験値の中で、対象がカテゴリーに分けられていれば、恐怖心に陥ることはない」と言い切る。
ただし、自分の限界も知っておいて、びびって逃げることも、時には肝要。「自分ほど、国家の恐ろしさが身に沁みている人間はいないだろう。領収書はしっかり取っておくし、信号無視はしない。国家権力は、どんなことでもケチをつけてくるから」。
飾らない
自分を飾らず等身大で仕事することが大事だとも、佐藤さんは説く。仕事でお互いが認め合う関係になれば、余計な約束事やルールをつくらなくても上手く仕事が形になる。例えば、信頼している編集者や担当者との関係。「彼らとの仕事には心地よいリズム感が生まれるが、それは必要最小限のやりとりで仕事ができるから。つまりすべてがシンプル。とにかく仕事をする相手に真摯に向き合って、嘘や偽りを排除していけばいい」。
「飾らない力を得るには、自分が何者であるかを明確にする。人間としての根っこや軸がしっかりしていれば、虚実の間で揺れ動いても、飾らない関係が作れる。いざというとき素のままで相手に向き合える」。
断らない
仕事は、原則、断らないようにしている。自分に負荷をかける意味でも「断らない」のだそうだ。「常に、実力の上を意識する。思いがけない成果が得られるから。連載60本、毎月300 冊の読書…。すごいとしか言葉が見つからない。
思想信条も左右問わず受け入れる。「節操ないくらい間口が広い」。「キリストほど相手を受け入れた人はいない」とクリスチャンの佐藤さんは言う。
勾留中に、読書や文章を書いたことが、第二の人生を育んでくれた。「勾留にも感謝している」。なんという人だ!これだけ強靭な精神力を持っていても、近寄りがたい存在ではなく、人間的魅力に溢れた佐藤優さんに、親近感を覚えた。
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