エネルギーは、ほめることに使う
齋藤さんは、昔は今と違って、批判人間だった。「もともとは明るい性格なんですが、学生時代から三〇代後半まではうっ屈していましたね。論文ばかり書いていると、どうしても内向きになってしまって。大学院の先生の授業まで批判しちゃって、人生を棒に振った時期もありましたよ(笑)。今思うと、自分の力の出し場所がなくて、不満がたまっていたんだと思います」「エネルギーはためこむばかりでなく、適度に出していかないと新しいエネルギーが生まれてきません。僕も本を出版したり、いろいろな人や社会と関わることで精神の健康が回復していきました。だから人と向き合うことが大切なんですよ。社会の流れの中に身を置くと、血液が循環するようにいい気が流れてくると思います」
ある時期から、「世の中にはいいものがあふれている」と考えを切り替えた。全方向審美眼を培った。虚心坦懐に、心底いいと思って褒めるようにしたら、風向きが変わってきた。
そうして今は、人をほめてほめてほめまくる人間になった。人は自分がエネルギーをかけたところをほめてほしい、認めてほしいという思いがある。人は、どこにエネルギーをかけたかを見てほめられると特に嬉しいようだ。「女性がおしゃれをしてきたら、気合いを入れたと思われるポイントをほめるとか(笑)。今日は目がパッチリして見えるよとかね(笑)」。 人をほめるには、まず、枕詞に「いいですね」という。「さすがだ」という顔でうなずく。「ほう」「へぇ」の身体で聴くと、息がほどかれる。「でも」はやめて、ネガティブベールを取る。こうして、ほめる身体感覚を身につけていく。
齋藤さんは嫌いなタイプは、あまりいないらしい。誰に対しても上機嫌で接することが出来る。「僕はわりと安定していますね。初めて会う人で、苦手なタイプかもと思っていても、話してみたらいい人だったということが多いんですよ」。
それは、きっと、齋藤さんと話すことでその人の「いい人オーラ」が引き出されるためではなかろうか。自分の接し方次第で相手の反応も変わってくる。「年を取ってくると、どうしても威張った感≠ェ出てくるので、言葉づかいも大切ですね」。
雰囲気醸し力
齋藤さんと話していて気づいたことがある。「ハイテンション!」と言っているわりに、話し方のテンションがずっと安定しているのだ。急にテンションが上がったり下がったりしないので、落ち着いて話せる。オーバーリアクションもなく、どんな話でも一様に興味を示してくれるので、気持ちよく言葉のキャッチボールができるのだ。急にヘンなボールが飛んでくることもないから、心にさざ波がたたず安心出来る。この新発見を、齋藤さん流に「雰囲気醸し力」と名付けてみた。気を配っていることすら感じさせずに、いい気を配ってくれている。だから、気を使わずに話せるのだろう。
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