帰国して、最初のCDもリリースし、年間100回のコンサートをこなすようになった。しかし、「考える余裕もなく、ただ機械的に演奏をこなす自分に疑問がわいた。「いつも同じ演奏をしていていいのか…」
そこで、また内なる声に耳を傾けた。「なぜ、そのステージで演奏するのか、いつも自問自答してから演奏しよう!」と内なる声が答えた。
コンサートにテーマを置くことにした。家族向けのコンサート、ソナタシリーズ、クライスラー連続演奏…。
これからは、バッハの無伴奏に挑戦しようと思う。「バッハは、自分にとって、大きな存在。バッハが自分の音楽の基本。バッハの楽譜には、あまり情報が書き込まれていない。だから難しくもあり、やりがいもある」。無伴奏全曲演奏が目標だ。
人生を豊かにした結婚
2007年9月、知子さんという伴侶を得た。知子さんも、4歳から趣味でヴァイオリン習っていて、30歳すぎてから、また専門的に勉強を始めていた。川畠さんのコンサートにも、時折、足を運んでいた。出会いは、またまた因縁のあるロサンゼルスだった。日本から、わざわざ聴きにきた知子さんと知り合った。「彼女の明るくて素直な声に恋した」という。最近、視力が少し回復して、彼女の輪郭がわかるようになった。その印象を問うと、「大丈夫でした」との答えに大爆笑した。
楽譜を読んでくれたり、演奏について率直な感想を言ってくれたり、一緒に音楽を作る感じだ。「苦しいことは半分に、嬉しいことは倍になった」と、川畠さんは、結婚の効能を嬉しそうに言う。
結婚後、演奏も変わったと、よく言われる。「繊細な演奏に力強さが加わった」とか「演奏が大人っぽくなった」とか…。「自分でも自然体で弾けるようになった」と思う。
振り返ってみて、8歳の時の出来事は、運命だと思えるようになった。
「そこから新たな人生が始まったのだと、いまなら思える。見るだけでは意識出来ないもの、自分の心の奥深くにあるものを知る力がついた。自分の心の声に耳を澄ませた時に聞こえてきたものにしたがって生きてきたから、いまのボクがある」。
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