加藤さんのところには、更生を求めて、親に連れられた少年少女が訪ねてくる。かつての自分を重ね合わせて、アドバイスをする。まず「仲間や親の大切さがわかるか」聞くようにしている。たいてい「わかる」という。ならば「自分の好きなようにやっていい」と。「とことん突っ張れ」と。親や仲間への気持ちがあれば、いずれ必ず戻ってくる。その子が自分で見つけた必要な「何か」は、生きていく上で貴重な礎になるはずだから。「何を大切に生きたらいいのか気づいた時が変われるときだ」というのだ。
憎しみや自分勝手な心といった悪いガソリンだとエンジンが壊れるが、人の役に立ちたいとか、感謝したいという良いガソリンだと、長く走れる。「かつてのボクは、エンストしてばかり。家族や仲間の愛というガソリンが、いまのボクを動かしている」。
4つのミッション
加藤さん曰く、「絶対達成する意志で取り組んでいる4つのミッション」がある。
まず《行政機関による矯正保護を終えて釈放された少年少女の再犯率をゼロにすること》。自分の経験上、少年少女の犯罪要因として、「健全な自己欲求の満たし方」がわかっていない。矛先が違うのだ。ただ、大人は、彼らに対して頭ごなしの批判をするのではなく、良き人間関係を築き、力のベクトルを闇から光へ、悪から正しい方向へ向ける環境作りをしてやるべきだ。保護司の資格を申請して、全国の刑務所や少年院などを回り、再犯率ゼロを目指す。
次に《自己啓発のノウハウを、教育現場に無償で提供すること》。5年間で2、000万円あまりの投資で学んだ能力開発、自己啓発を改良して、無償提供している。心、食、家族愛、感謝の心、経済力、人間力、夢の叶え方…。
あちこちから講演会の依頼がくる。小・中学校では、「夢を持って生きる」ことを力説する。イヤだなといったマイナス感情を抑え、自分の目標を持てば、自分も周囲も大切にして生きていくことが出来るようになる。
高校生には、薬物の怖さ、その後遺症の怖さ、立ち直るまでの難しさなど実体験を交えて訴える。大学生には、社会的使命を説く。「使命とは、命を使うことだよ」と。
教職員やPTA関係者の集まりでは、「大人と子どもの重要な関係性」を話す。「時に、真剣に子どもに向き合っているのか!子どもから逃げていないか!」と語気を強めることもある。「ボクは大人の顔色を気にして生きてきた。両親の愛に飢えていた」。
だからこそ「話を聞いてくれる大人」の必要性を感じる。
そして《日本の自殺者をゼロにすること》自分も裏社会から抜け出せず、死のうと思ったことがある。32、000人を超える自殺者を2年間で15、000人に半減し、ゆくゆくはゼロにしたいと思っている。親子が愛と絆を取り戻す体験合宿も実施している。
最後に、《社会起業家の育成に尽力すること》社会起業家とは、「右手にビジネス、左手に社会貢献」この2つが融合出来ている人のことを指す。社会力、人間力、経済力のあるリーダー30、000人を5年のうちに養成する。
信念として「良い種を蒔けば、良い実を結ぶ」という思いがある。外見や振る舞い、言葉遣いを変えていくと、中身まで変わっていくようだ。
とにかく「人は変われる」。正直、また裏社会へ戻るかもしれない。トラブルが起きるかもしれないと怯えていたこともある。だが、講演を重ね、人前で語る機会が増えていく中で、「誰かの役に立っていること」を実感した。不安は消えていった。更生の相談に乗っていても、自分のエゴでアドバイスしていないか不安になることがある。だが、その不安と戦うことも大事なことだ。「トラブルやアクシデントも、悲劇の顔をしたチャンスだ」と思えばいい。
加藤さんの夢も変わってきた。「親のようになりたくない」から「自分のような思いの子どもを減らしたい」になり、「人生につまずいても自分の足で歩ける人を育てたい」と膨らんでいる。
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