福祉の大きな壁にもぶつかった。福祉行政では、高齢者、障がい者、子どもと厳しい線が引かれ、どれか一つに絞らないと補助金も出ないありさまだった。
惣万さんの粘り強い説得交渉の結果、3年後には、富山県と富山市も「このゆび」にとまってくれた。縦割りを見直し、柔軟な補助事業を打ち出したのだ。平成11年、富山県初のNPO 法人として認可された。認可された5月12日は、惣万さんが敬愛するナイチンゲールの誕生日でもあった。
赤ちゃんからお年寄りまで、障がいのあるなし問わず、一緒にケアする活動方式を《富山型》とも《富山方式》とも呼ぶ。行政の柔軟な補助金の出し方も、《富山型》と呼ばれている。障がい者が地域で普通の生活を営むことを当然とする真のノーマライゼーションが実現した。この《富山型》が全国に広まりつつある。
明日の百人より今日の一人
お年寄りにも、子どもにも、障がい者にも、境界を作らないメリットは、いくつもある。
子どもの世話をすることで、お年寄りが生き生きとしてくる。子育てをしていた頃を思い出し、生活の満足感が高められる。
子どもの動きに触発され、お年寄りの動きも活発になってくる。子どもの相手が仕事だと思って来ていた認知症のお年寄りもいる。認知症でも、子どもの名前は覚えている。
役割がある、頼られているという誇りが、性格を前向きに変えていく。
子どもも、お年寄りから叱られたり褒められたり、親とは違うスキンシップを得られる。と同時にお年寄りの温かさ、厳しさを身をもって知る。お年寄りが介護される姿を見ることで、子どもに思いやりの心が自然に身につく。
障がい者も、身近な居場所を確保出来て、社会的自立が図れる。知的障がい者も、認知症のお年寄りに教えることで、存在感を得る。
地域に生まれた新たな家族、みんなが同じ仲間という気になってくる。
惣万さんが支えにしている言葉に、赤十字の理念で「明日の百人を救うより、今日の一人を救え」がある。目の前で困っている人を助けることが使命だと思っている。自分に何が出来るか考えつつ、小さなことをコツコツ積み重ねていくしかないと思っている。
惣万さんの語る富山弁は、実に味わいがある。
「やわやわとやらんまいけ」コツコツやっていくことをこう言い表した。
「ゆっくりやっていこうよ」という意味合いである。
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