そして6月には、恐竜の頭の骨の一部が見つかり、さらに話題を呼んだ。今後の発掘調査で、恐竜の全貌が明らかになる可能性が高まっている。
恐竜が変えた人生
二人は、すっかり時の人となり、取材を受けたり、講演に行ったりと多忙な毎日を送っている。
足立さん(63)は岡山県美作市の生まれ。美作市周辺には、古墳や遺跡がたくさんあり、幼い頃、考古学者になりたいと夢みていた。丹波市の柏原高校を定年退職した後も、非常勤講師として英語を教えている。週末には、柏原市の観光ボランティアも引き受けている。そんな仕事の合間をぬって趣味の化石探しを続けていた。足立さんは、特に生痕化石(1億年以上前の昆虫たちが這った後が残る化石)にロマンを感じている。「恐竜の足跡も昆虫の足跡も同じ《いのち》の証し」だという。
村上さん(62)は、丹波市山南町の生まれ。映像機器メーカーの営業マンだったが定年退職して、故郷にUターン。悠々自適の暮らしを楽しんでいた。村上さんは、「定年退職後は、のんびりゴルフを楽しみにしていたのに、一回もゴルフ場に行けない」と笑う。
二人は、大学時代の同級生だった。足立さんが、故郷に村上さんが帰ってきたと聞き付け、35年ぶりに、再会を果たし、化石探しに誘った。村上さんは、「足立くんは、僕が幼いころ遊んだ篠山川流域のことを僕以上に詳しく知っていた。これは負けていられない」と思った。たまには、化石探しに付き合うのもいいかと、軽い乗りで参加したら、人生が一変したのだった。
地域を恐竜で変えたい
丹波市では、《恐竜を活かしたまちづくり課》を設けて、文字通り、恐竜を地域振興に結び付けたいと施策を考えている。
当然、二人も、この発見を故郷の活性化に役立てたいと考えている。
足立さんはこう言う。「恐竜は知的財産。環境や自然、生命に興味を持ち学習するチャンスだ。子どもたちを自然に戻すきっかけにしたい。自然は、疑問も与え答えも用意してくれている。疑問を見つけ、解く力も身につけてほしい。恐竜化石にしがみつくのではなく、恐竜の力を借りて、地域活性化をはかろう!」
村上さんはこう言う。「恐竜は、心の宝物。恐竜が一役買うから、地域活性化をみんなで考えてとテーマを与えてくれたのではないだろうか…。大規模なハード整備はいらない。一時的な活性化で自然を失うようなことはあってはならない。人と自然の博物館の分館を設置したらいい。しかも上久下の伝統産業・檜皮ぶきの民家風の建物で。それから、発掘現場にある旧・上久下発電所を使ったパネル展示をしたり、恐竜列車を走らせたり…。アイデアは次々沸いてくる」
二人と話していると、世紀の大発見をしたというような気負った思いを感じさせない。恐竜化石が自分たちを変えたように、地域が変わっていったらいいという思いで一致している。
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