再び金田一家のお話
金田一家の伝統的雰囲気とでもいうのか、こだわりのなさは三代に共通している。権威や伝統にとらわれずに新しいことをやっていた。秀穂さんの日本語に対する柔軟な考え方も、祖父ゆずり父ゆずりなのである。
三代をひとことで特徴づけてみてほしいと頼んでみた。返ってきた答えはこうであった。祖父・金田一京助は、「情の深い人」。父・金田一春彦は、「世俗的な人」。そして自身については、「いいかげんな人」と自己分析する。融通無碍を理想としている。
秀穂さんには、今もって三代目という自覚がない。「祖父や父は、ことばの実体を追究してきたが、僕は、ことばを発する人間の心理状態に関心がある」
四代目のことについても聞いたみた。演劇を勉強中の長男は、当然ことばに関心を示しているが、秀穂さんは、積極的に四代目になってほしいとは思っていない。親としては、待っているしかない。父がそうしてくれたように。
秀穂さんは、泣き虫だ。成人式の娘の晴れ姿に感動して号泣する。教え子の結婚式で、両親への花束贈呈でもらい泣きする。3人兄姉のトークセッションで、父の話をしようとして、声を詰まらせた。
父が亡くなる二日前、秀穂さんが出ていたNHKの番組を一緒に見ていた。番組が終わると、ニコニコして「よく出来たね」と手を叩いて喜んでくれた。それが秀穂さんが聞いた最後の父の一言だった。
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