大谷さんは、宮川大介さん、花子さんの売り出しに成功した。無名の二人を、あの手この手で乗せながら、全国区にしていった。「大・花は、私にとって最高のおもちゃ。自分だけの大好きなおもちゃを、どうしたらもっと面白く遊ぶことが出来るか、考えるだけで楽しく、元気になる」「仕事だと思うからしんどい。仕事を、自己実現のためのおもちゃだと思えば気が楽になる」
結婚のため、吉本を退社したが、再び活動を再開。吉本時代の経験や人脈を生かし、27歳で企画会社を立ち上げた。イベントプランニングや吉本とのジョイントで「よしもとリーダーズカレッジ」といった事業展開をする。しかし、「字解きをしてみると、起業は、己が走って作るもの。企業は、人を止めることになる。10年たって、管理しはじめ、人を止めていた」ことに気づく。
会社をほかの人に任せ、自分はフリーのプロデューサーとして、心を元気にする研修事業を展開することにした。志のある人を育てていこう、自分で動く人材を育てよう。いわば企業を活性化するコンサルタントだ。定年を控えた管理職にも「いまさらとか、この年になってと言うのはやめましょうよ。消化試合の人生送るのやめましょうよ」と呼びかける。
名刺には、「教育こそ究極のエンターテイメント」と刷り込んである。研修は、《コーチング》に基づいて行われる。大谷さんが36歳にして出会った《コーチング》という考え方は、5年ほど前にアメリカから入ってきたメソッドだ。「ああせい、こうせい」は、限りなくティーチに近い。ティーチは、最初に答えが用意されていて、それを教え込むことだ。相手に考えさせ、答えを出させ、戦略を練らせるのがコーチだ。自分の思いついたことを形に出来たら、元気になれるはずだ。
コーチングは、相手を認め、引き出し、応援することだ。「ひたすら話を聞いてくれる出来のいい恋人のようなものだ」と、大谷さんは比喩する。そして、こういうことは、吉本のマネージャーとして実践してきたことなのだ。
コーチングとは、結局、自分のコーチングでもある。「人を育てようという人間は、自分が幸せでないとアカン」と言い切る。そして、「商売は、自分だけが幸せでもアカン。みんな幸せにしないとアカン」と続ける。
「なぜ?」より「どう?」
日本人はWhyを使いすぎる傾向がある。自分の境遇を不幸だと嘆いている人は、その理由を過去に求める。「あのとき〇〇だったから、あの人が〇〇って言ったから」なぜ、なぜと問い詰めることが多い。もっとHowを使ったらいいのにと、大谷さんは思っている。どうしたらいいのか、一緒に考えたい。どうしたら失敗しないのか、一緒に考えて、行動を変えていけば、必ず変化が見えてくる。小さなゴールを達成したとき、思いっきり、自分をほめればいい。そうしたら、自分が言われたら嬉しい言葉を他人にかけられるようになる。大谷さん自身は、「会えてよかったと言われるのがいちばん嬉しい言葉」だそうだ。
いまの世の中、一億総評論家だ。批判や批評が多すぎる。もっと、尊敬すること、ほめることを大切にする世の中にしたいと大谷さんは考える。
「最近の若い人はありがとうって言わないと憤っている人は、自分がありがとうって言われる人生を送っていないのではないか」「人の人生を応援出来る喜びを感じようよ。ありがとうって言われ出すと、友だちが増えるよ」
大谷さんの笑いえくぼが、さらにくっきり見えた。
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