海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 「将来は東京に出て、バリバリのキャリアウーマンに…」と、幼い頃のなりたかった自分にはなれなかったけれど、今、気負わず、ありのままの自分を描けているような気がすると話す、とこなめ焼卸団地の『やまや』の女主人・山田信子さん。このお店を開いて23年になる。人との出会いが仕事を繋いだ。
 店内のテーブルには火鉢が置かれ、そこではちょっとしたおしゃべりを楽しむことができ、お茶好きの人が集まるサロンとなっている。毎月第一日曜日の10時から16時まで『作り手とお茶の入れ方教室』が開かれている。自分の急須を持参で、毎月参加する人もいるという。この『作り手とお茶の入れ方教室』は、山田さんの常滑焼に対する強い危機感から始まった。常滑の急須職人に後継者は少なくない。山田さんは常滑の急須は世界に誇れる技だと思っている。私たち世代で、この常滑の急須を衰退させては、常滑にとっても大きな損失だと思っている。そんな思いから、常滑市内のどこかで月一回ではあるけれど、こういう活動を通して、常滑の急須を広めていきたいと、いう。
 店内は陶器の他に、山田さんのお気に入りの鞄、洋服や手袋などの1点ものが販売されている。羊毛を染めて紡いだ糸から作ったという手袋は、ピンク、オレンジ、ブルー、グリーン…と、どれも色合いが柔らかく、全部独り占めしたくなるような可愛らしさがある。女性は美しいものや可愛いもの、いいものに触れると、心も優しくなり、美しくなるものだ。そして、こうした素敵な品々に出合ったら、すかさず、作家をチェック、すぐに作家と交渉するという。周りからは、「なんなの、その行動力は?」と、笑われるけれど、「これが私なの」と、山田さんは言う。
  『来る者拒まず、去る者追わず』この言葉は、山田さんの心の中に、大切に置いてあるという。山田さんはコミュニケーション抜群。自分よりずいぶんと年下の青年とも自然体で話に花を咲かせる。そして、話題豊富。面倒見がいい。いつも、このお店には老若男女問わず、誰かがいる。この人のポジティブさが好きだ。聞けば、皆が山田さんの大ファンであり、山田さんも皆が好きだという。年配の人からは、「私たちは行く所がないから、このお店はずーっと続けてね」と、心に響く、素敵なエールが送られることもしばしばあるという。だから、山田さんの夢は100歳になっても、このお店をやっていること。そして、皆が私を必要としなくなった時、一人でリュック一つで日本の小さな美術館巡りがしたいと話した。
(赤井伸衣)