海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 柴田さんは自らを、「陶芸に能力があったから、焼き物をやったんだよ」と、いう。全パワーを陶芸に注いできたからこそ、言い切れる重みのある言葉だ。仲間の一人は柴田さんを『元祖 黒泥』と呼ぶ。黒泥の急須を一番に作り始めた人だ。そして、いつもみんなの前を行く人だという。みんなの道筋を立てている人のようだ。
 その黒泥の急須を今、私が見ると、モダンなスタイルがとってもいいと思う。だけど、当時は斬新すぎてか、7、8年全く売れなかった。売れるようになりだすと、みんなが作り始め、みんなが作るからという理由で、あっさりと黒泥の急須に見切りを付けてしまう。次は灰釉のグリーンに心を奪われ、灰釉の美しさにどっぷり浸っていた。そんな中、人と同じことをするのは嫌だという理由で、今度は焼き物にはない紅葉色に着目した。この紅葉色は柴田さんが瑞紅と名付け、今や、柴田さんの作品を代表する紅葉色となっている。
 この瑞紅という独特の紅葉色は、ウイスキーを作る過程で産業廃棄物となった搾りかすのトウモロコシの灰(柴田さんは、これを梔釉と名付けた)と土の鉄分、窯の中の酸素の結合によって生まれる。800度で素焼きし、化粧を掛けて、もう一度素焼きし、その後、梔釉を掛けて焼き上げる。三度焼くことによって、窯変して、この独特の紅葉色が誕生する。大変、手間のかかる作業だ。
 志野にも似た重量感ある鮫肌の瑞紅の湯呑みに、しみじみ「深いなあ」と、感嘆してしまう。じっくりと時間をかけて、味わってみたい瑞紅だ。
(赤井伸衣)