海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
  「どうして、宝生さんの急須の口は可愛いのですか?」私が日常よく使っている、この問いかけから始まった。
 宝生さんの急須の口はふっくらとした曲線に女性らしい唇、キュートさを想像させる。宝生さんの急須の口は可愛い。そう表現した人は、何人かいたなぁ…と、宝生さんはいう。力強さを連想する男性的な急須というよりも、どことなく感じられる上品さ、気品、可愛らしさを連想させる女性的な急須。この可愛らしさが20代の頃から存在したかというと、20代の頃は出来なかったという。若さと自由で走り続けた20代の頃の急須を、今、作ろうと思っても出来ないという。年齢を重ねて、視覚的な刺激も変化してきた。新しい価値観と革新を求めた象徴が、抽象的だけれども「可愛い」ということになりそうだ。
 宝生さんの急須を見て、工房に訪ねてくる人も多いと聞く。新潟からぼたもちを持って訪ねてきてくれた人、宝生さんの為に料理人を呼んでまでご馳走をしてくれた人、イギリスから訪ねてきてくれた人…本当にさまざまな人に出逢った。急須が一人歩きする充実感の中で芸術的・感性的に、使い手に訴える作品が作れていると、宝生さんは確信している。
 宝生さんは心にちょっとの迷いや不安があるとき、以前、問屋と交わした会話を思い出す。「次の急須も自分の急須を買ってもらえるものを作れ」。この言葉にいつも『原点』に返る。そこから新たな刺激を求めるのだという。今後も飽きのこない作品を作り続けていくつもりだ。 
(赤井伸衣)