海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 ここにも手付かずの自然が残っている。朝・夕と時間によって変化する田園風景を、じっくりと見渡して観察する。う〜ん、やっぱり私には、この田園風景はどこか淋しく映ってしまう。肌寒く感じる秋風のせいか、稲刈りの終わった田んぼのせいか…。その田園の中に、谷川さんの工房はある。
 以前のように作品が売れなくなった昨今、谷川さんは営業術なるものを仲間から教えてもらっているようだ。作家や職人として活躍する仲間とのふとしたコミュニケーションから、刺激を受けることも多い。急須が10万円で売れたと聞けば、ヒントを探り、その人の仕事の奥深さを垣間見る。焼き物の他産地の訪問にも余念が無い。情報収集だけは盛んだけれども、一向に作品は売れないとぼやいている。何かを作っている人は、ぼやくだけでなく、相手が求めているものを瞬時に察することが必要なのだろう。
 谷川さんは日用雑器の他にもオブジェも手掛ける。ガス窯で焼いた物や薪窯で焼いた物まで多種多様だ。薪窯で焼いた変化の多いごりっとしたものが、谷川さんは好きなようだ。薪窯は焼いている実感もあり、イメージ通りには焼けない、もどかしさがある。でも、それらが楽しい。物作りをしていて、これはという物は残していないけれど、いずれ残したいと話す。
 仕事の苦労話を知りたく、聞いてみると「楽しく人生を送りたい。生きているのが苦労」と、冗談とも聞こえる返事が返ってきた。生きる喜びも、生きる苦しみも、作品を生み出す喜びも、作品を生み出す苦しみも、全部、この工房でどっぷりと味わっているのだろう。
 近頃、谷川さんはお茶ナビの会に参加した。世間に問いかけることも、経済活動も必要だと感じ始めたからだ。
(赤井伸衣)