海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
  16歳の頃、手先の器用な子を探していると聞き、知人に連れていかれたところが、資陶苑だった。初めて土に触れた瞬間は、とても楽しかった。その時の楽しさは、今も変わらない。そのまま弟子入りし、あっという間に50年が過ぎた。50年間、限界まで頑張ってきたという自負がある。資陶苑では、勤務時間外に自分の好きな物をマイペースに作ってきた。資陶苑勤めの50年を磯部さんは、人に恵まれたと振り返った。師匠は物事に柔軟に対応する人だった。物事の考え方も師弟関係も堅苦しくなく、生き方も無駄に飾ることなく、仕事では責任をもたせてくれたので、生きがいも感じていたと、磯部さんは話す。
 退職後の今は、今日はソフトボール、明日はグランドゴルフ、来週はお茶ナビの会…と、人生を謳歌している。ソフトボールは30年のキャリアをもつ。ピッチャー兼監督だ。急須作りも遊びも生涯現役を目指している。
 磯部さんの作品は女性のファンが多い。9割が女性だ。
 印花文、藻掛け、窯変、火だすぎ、焼締…。ずらっと、作品が並ぶ。どれも、一点ものの贅沢さに満ちている。派手な色ではないけれども、個性的な色使いでコーディネートされている。ゴージャスではないけれど、ヴィンテージ感漂うデザインはなかなかオシャレだと思う。シンプルでカッコいい、さりげなく個性を主張したい人が、社会、世相を先取りしているような磯部さんの作品を好きになるのも頷ける。
 作品展では磯部さん自ら、常滑の宣伝と一期一会のお茶でおもてなしをしてくれる。誰もが、そのお茶にほっこり≠キるのだ。この磯部マジックに女性はファンになるのだろう。会話は女子会のノリだから、楽しいし、心地いいのだ。居心地がいいから、ついつい長居してしまう。そして、磯部さんはおじいちゃんだけれども、ちょっとだけイケメンだから心憎いのだ。
 磯部さんのファン(主に女性)は、東京、大阪、名古屋、福岡……と、全国に増殖中という。
(赤井伸衣)