海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 知人に、50歳を過ぎてから、弾けた人がいるからと言われ、出掛けることにした。金髪のかつら、黒と赤のチェック柄のジャケット、水色の蝶ネクタイがキラキラと光るド派手な衣装をまとい、そして片手にサックス。超ごきげんで、超ノリノリだ。その人は、中村慈男さん。「ろくでなし ちんどん隊」の隊長だ。
 中村さんとちんどん屋との出合いは、5年程遡る。60年の人生の中でたくさんの刺激に出合ってきた。でも、テレビで見たちんどん屋には何か自分の中の秘めている可能性のようなものを感じたという。思いたったら、即行動。一宮のちんどん大会に出掛けてしまった故に、素人集団「ろくでなし ちんどん隊」を立ち上げるはめになった。共にするメンバーは10名。職業は自営の人、大学教授、陶芸家、会社員とさまざまだ。結成したけれども素人集団。音楽も口上も衣装も、何もかもが素人だった。現場で観察し、研究し、アドバイスをもらい、特訓した。どんな時でも、ちんどん屋への情熱は揺るがなかった。テンポは悪く、リズム感に欠けた口上も、今では穏やかな語り口となった。ちんどん屋の衣装も板についてきた。1年後の目標は全国大会出場と、スパッと中村さんは言い切る。
 中村さんのカレンダーには予定がびっしりだ。週末は、ボランティアで老人ホームに出掛け、「ろくでなし ちんどん隊」を披露する。そこには、待っていてくれる人がいる。昭和歌謡を歌えば、一緒に口ずさんでくれる。踊ってくれる。喜んでくれる人の顔が見たくて、ついつい頑張りすぎてしまう。時間の経過と共にヒートアップしてくると、中村さんの表情も笑ったり、オヤジギャグを言ってみたり、変顔をしてみたりと…。息継ぐ暇もなく、スピーディーに口上しまくりだ。
 誰が名付けたのか、中村さんのことを仙人と呼ぶ。それとも、中村さんが考えた肩書なのかも。中村さんは楽しいこと、面白いことを運んできてくれるちんどん屋さん。でも、お金儲けの下手な人だ。社会が厳しい今だからこそ、笑って楽しんでもらえたらと、中村さんは言う。
 中村さんが率いる「ろくでなし ちんどん隊」では、随時人材を募集している。ただし、条件が1つある。中村さんが許せる範囲のろくでなしであれば、誰でも入会できるとのこと。
(赤井伸衣)