海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 私が2ヵ月前から秘かに、このコーナーに是非と思い続けていた夏目さんご夫妻にようやく会えた。その夏目さんご夫妻は、私のキャラクターにすぐ慣れて、二人の表情も言葉も個性が出始めた。雅仁さんがおどけて話せば、かよ子さんはそれを嬉しそうに眺めている。二人は仕事場もプライベートもいつも同じ。
 二人の出会いは陶器会社に先輩、後輩として勤めていた頃にさかのぼる。雅仁さんは8年の会社員を経て、一念発起、吉川秀樹氏に弟子入りする。自分で自分のものを作りたい。急須が作りたい。そんな思いからだった。師匠の黙々とロクロを回す緊張感や職人技を見よう見まねで覚え、コツを?み、かよ子さんの支えもあり、念願の独立を果たす。
 以前の常滑の急須は彫りが施されているものが数多くあった。この素晴らしい伝統をなくしてはいけない、後世に伝えていかなければという思いは、二人とも強い。雅仁さんがロクロをひき、その作品にかよ子さんが彫りを施す。雅仁さんからかよ子さんは彫りの才能を認められ、雅仁さんの作品の中心にかよ子さんの彫りがスポットライトを浴びている。
 かよ子さんの彫りは実に繊細で、気の遠くなるような作業だ。その繊細な彫りを「好きだから続けられるし、腕も上がるのよ」と、さらっと言ってのける。その彫りの美しさをかよ子さんは存分に楽しませてくれる。幾何学模様であったり、満開の桜であったり…と。どれも丁寧な職人技が光っている。
 彫りは相手にさまざまなものを連想させる。時には、その作家の人柄までも感じさせてくれる。かよ子さんの彫りは、一つ一つのつぼみが、一つ一つ咲き誇り、満開になっていく桜のような、そんな優しさに包まれている。いつの時もかよ子さんの暖かな視線の先には雅仁さんがいる。雅仁さんの視線の先にはかよ子さんがいる。2人の空間は心地よく、穏やかな風が吹いている。二人が仲睦まじく、いい関係で居られる。幸せな気持ちになれる。周囲にも、作品にも、その空気は伝わる。その夫婦一体の作品「窯変総彫サクラ茶注」が第38回長三賞を受賞した。
 7月29日(金)から8月10日(水)まで、方円館で「前川修三・夏目雅仁展」を予定している。
(赤井伸衣)