海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 明日からの個展の為、搬入にやってくるであろうと思われる谷川省三さんを個展が行われるギャラリーで待ち伏せした。数十分後、谷川さんは現れた。
 以前どこかでお会いしたはず、私の祖父と面識があったはず・・・と、私の曖昧な記憶から話した。やっぱり、私の曖昧な記憶は確かだった。初対面に近いはずの谷川さんが、もう数十年来の友人のようであったり、時には祖父に似た感覚をもったりして、話は弾んだ。
 谷川さんは高校生の時に先生から、宋・南宋時代の青磁の陶片を見せられ驚いたという。宋時代の白磁は燃料に木材・石炭が使われていたため、やや黄みがかった発色となっていたようだ。青磁は透明感のある灰緑色やオリーブグリーンの深い青緑色が多かった。宋・南宋時代は天目茶碗も特徴的なものであった。天目茶碗は曜変、油滴などがある。この時の衝撃を、谷川さんは人間が作る宝石だ!!と表現した。
 卒業後は気持ちの中では陶芸家志望もあったけれど、まずは勤めてみようと思い、当時としては珍しいトンネル窯に魅了され、某試験室に勤めることとなった。釉薬の研究に没頭した。土作りも学んだ。谷川さんが人生の師でもあると慕う人々との出会いもあって、7年間勤めた後、独立した。高校生の頃に抱いた陶芸家としての自分を確立させていくことになる。
 陶芸は限りなく探れる世界だと、谷川さんは話す。釉薬の中の色を限りなく求めたい。難しいものほどやりがいがある。思うようにならない、どうしても辿り着けない、失敗の先に思うものに近づく楽しみもある。必ず、こういうところがあるはず、長いスパーンで見れば近づける。自分の意志がどれだけ伝わるのか、そんな過程も陶芸の楽しみであり魅力という。
 15年前に中国に出掛けた。窯跡で陶片を拾い、その歴史を探った。机の上で計算しているよりも、はるかに飛び越えたスケールの大きさを感じた。
 谷川さんは、いつも青春?という。限られた時間、まだまだやりたいことがたくさんあって、毎日を無駄にはできないという。
 後日、谷川さんの個展をゆっくり、じっくり見て回る。「個性的なものを」と、ついつい強欲な気持ちになってしまいがちの私だが、谷川さんの作品は穏やかな気持ちで見られそうだ。自分好みを確認しながら??。自分の気になる物を探しながら??。意外な物に反応する自分が面白かったり??と。私の場合、ピンクであったり、多くの色が使われているものが気になるようだ。祖父との楽しかった思い出が、交錯しているのかな? 
(赤井伸衣)