海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 培った熟練の技に独自の遊び心を加えた三代目・素三のぐい呑みは実にユニークだ。多くのファンに愛された三代目のぐい呑みは、三代目を語るうえで欠かせない代表作となっている。朱泥のぐい呑みの中に蟹や鯛などの海で生息する縁起のよい生きものがあしらってある。だから、お酒をグイッと呑んだら蟹や鯛などが、ひょっこりと顔を出しているといった感じだ。今もなお、三代目の作品を求めて、四代目の工房を訪ねてくるファンは少なくないという。四代目の手元には、三代目が遊び心で作ったと思われる手のひらにのるくらいの大きさの蟹のオブジェが残っているだけだ。
 三代目から受け継いだぐい呑みに、知多半島の豊かな海の生きものが意匠化され、四代目のこれまたおちゃめな表情をしたタコやイカ、細部にまで忠実に表現した蟹や伊勢海老、リクエストから生まれた鶴と亀などのぐい呑みが生まれた。三代目が亡くなり四代目を継いでいくうちに、三代目の功績がいかに素晴らしかったのかと改めて気づくという。一つ一つに表情のあるぐい呑みは一期一会であって、周囲に明るい気持ちをプレゼントしてくれる。そんな空気が伝わってくる。
 四代目の魅力をクローズアップさせたのは、新感覚の「干支の急須」シリーズである。目が小さく、可愛く作ってはいけないという思いがあり、酉が一番難しかったと苦労話を聞かせてくれた。急須の口は動物の口、急須の胴は動物の胴体、急須の手は動物のしっぽといった具合に。これらの急須は繊細な輝きを放ち、毎年どんな新しい息吹を吹き込んでくるのかとコレクターは心待ちにしている。
 他にも、七宝柄の急須、七宝彫りの急須、縞彫りの急須や松皮模様の急須も見逃せない。七宝彫りの急須は、梅・桜・椿・紅葉などをデザイン化し、彫り、色をつける。細工と絵を合わせた急須だ。四代目の定番中の定番作だ。
 四代目の想いは、日々是丹精。「今がいい作品を作っているはず」と、柔和だった顔に鋭さが増した眼で断言した。だから、体力維持も怠ることをしない。早朝、常滑の海岸を背景にウォーキングをする四代目の姿がある。
(赤井伸衣)