海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 やっと、磯部さんを紹介することができた。数年前には、あっさりと断わられ、今回もあの手この手を使い、無理やり応じてもらった。以前は何となく磯部さんに尖ったイメージをもち、居心地の悪さだけが先に立っていた私だが、素顔は陶芸をこよなく愛し、陶芸を上手に自分の刺激にしている人だった。
 磯部さんは父の経営する児童福祉施設と陶芸家としての活動と、二足の草鞋を履いていた。29歳の時、陶芸家の吉川秀樹さんに出合い、趣味で陶芸を始めた。45歳で児童福祉施設での仕事を辞め、独学で本格的に陶芸家として歩み始めた。独学が故に、苦労も多かった。苦労話も決してシリアスでなく、マイペースたっぷりなので、聴き入ってしまう。その爽快な話しぶりに「余裕」さえ感じられる。
 轆轤を回した時に最も重要だと思っていることは、陶芸家として、一人の人間として感じていることを、どうやって焼き物に伝えればいいのか、ということだという。磯部さんは、薪窯による自然釉を得意としている。窯の中の位置、炎の流れ、潮の満ち引き、天候、薪の種類などで、深い緑色や瑠璃色、真っ黒と、多種多様な姿となる。磯部さんの大壺は存在感のある、豪快な印象を受ける。
 磯部さんの原動力は「お酒」。日本酒も焼酎もビールも磯部さんにとって欠かせないもの。普段の生活をさらに充実させるためのエネルギー補給のようなものだ。が、自分の作った杯で呑むことはないという。「まずく感じる、汚く感じる」と、照れ隠しに笑っていた。
 朝日陶芸グランプリなどの数々の輝かしい受賞歴をもつ磯部さんは、7月23日(金)〜8月1日(日)集大成となる最後の個展をギャラリーセピカで予定している。その後は、原点に戻ってみようと思うと話す。
(赤井伸衣)