海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 跡継ぎとして期待がかかる窯屋の長男として生まれた。石堂陶芸は聖幸さんと、その両親の3人で営んでいる。母・万里子さんは、聖幸さんのことを「やさしくて、時間が合えば、どこかへ連れていってくれる親思いの今どきにしては珍しい子」と、いう。工房を訪ねた時のアットホームな雰囲気に、家族の温かさが伝わってきた。
 土いじりを始めたのは16歳。中途半端な生活ぶりに苦しんだ時期もあった。以来、聖幸さんはずっーと、感性の鋭さが際立つ作品で定評の父・道夫さんの元で、静かな闘志を燃やし続けている。聖幸さんには、「男臭い」という言葉がよく似合う。ゴツゴツとした太く大きな手に、職人としての大きな誇りを感じる。適度な力強さがあり、動きもあり、重みのあるダイナミックな作品は、聖幸さんの職人的なモノ作りで、幅広い層のファンに支持されている。
 夕日が沈む海を連想させるようなカップが目の前に出された。私は、そのカップをひとりで楽しんでいた。この小さなカップの中に優れた技術が凝縮されているのかと思う私に、職人・聖幸さんは「失敗作です」と、笑った。しかし、その笑いには何か内に秘めたものを感じた。
 聖幸さんには、心に期するものがあるという。「大きいものが作りたい」という。「大きいものって何?」と返す私に、ニコッと白い歯を見せてくれた。大きいものとは、まだ、内に秘めておこうということなのだろう。
 父・道夫さんは聖幸さんに、この一言を添えた。「跡を継いでくれたことが嬉しい」と。10年後、どんな職人に成長しているのだろうか、楽しみだ。
(赤井伸衣)