海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
ちょっとおじゃまします
 だだっぴろいだけの工房にZip−FMが流れる。誰にも邪魔をされずにお気に入りの音楽に耳を傾け、自分らしい物をつくりたいという気持ちを高める。自分だけのよさを見つけることも、この工房から生まれた。
 憧れの常滑に足を踏み入れて四年。すべてが順調のようだ。学生時代は勉学よりも一人旅ばかりだったという。岡山県備前をはじめ、焼き物の産地はよく出掛けた。趣味は、食器を集めること。趣味が高じて、陶芸家を志した。
 以前は、どちらかというと常滑焼きのような灰釉、焼締め、土ものなどの趣のあるものに夢中だったと彼女はいう。「でも、やっぱりカラフルで明るいものの方が私らしいかなぁ」と、私も自然とかわいらしい物に目がいってしまった。鮮やかなブルー、ピンクの模様の上絵付けされた皿。その皿をロマンチックに織り姫と彦星の逢瀬かなぁ…と連想させる。
 彼女のオフを覗いてみた。オフも感性と技術を磨いている。その一つが、試作訓練所で行われている後継者育成事業に参加していることだ。講師は、伝統工芸士のユニークな先生方四名。間近で見るロクロの技術に「えー」という驚きと感動の連続だったという。急須作りの高い技術取得を目指している。ただ今、急須作りに奮闘中といったところだろうか。いずれ、急須業界に旋風を吹き込むであろう、期待のニューヒロインの誕生が待ち遠しい。もう、迷いはない。「半磁器で急須をつくるのが夢」と、彼女の目は自信と希望に満ち溢れていた。
 今年二月に初個展を開いた。個展の難しさと厳しさが身に染みた。自分の目標もわかった。個性的に味付けをしないといけない物足りなさ、飾り気のなさを痛感した。ヘコンだけど、大きな収穫も得たと、感想をもらした。
 「しばらくは常滑で頑張ろうかなぁ。お金はないけど、すごく楽しいんですよ」と、彼女は常滑を満喫している。
(赤井伸衣)