海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
 先月、彼の初個展が常滑で開かれた。会場はファンが途切れることはなく、常に人いきれでいっぱいであった。グレーのスーツを着こなし、甘いマスクで語り掛け、全てのファンを魅了してしまう。さわやかな青年であった。常滑にまた一人、手ごわい若手陶芸家が現れた。
 個展には粉引きの湯呑み、マグカップ、コーヒーカップなどの日用雑器が多数展示されていた。彼の作る日用雑器には定評があり、絶大な人気を誇っている。雪溶けのような早春を連想させる、甘く優しい粉引きとは対照的に、石の入った信楽の土と灰釉で作陶した花瓶は荒っぽさ、男性のたくましさ、強さを表現しているかのようにも思える。彼が目指す重み、存在感のある作品であろうと思われる。
 陶芸の世界に飛び込んで、9年。奥の深いことに気づき、土味を生かした作品作りに悪戦苦闘の連続である。まだ、作品を通して自分を表現できない難しさに、もどかしく、歯がゆく思う瞬間があるようだ。私の質問に一つ一つ慎重に答えてくれる。そんな心遣いが嬉しくも感じる。「楽しく物を作って生活したい」あまりにも漠然としすぎる返事が、初々しく、新鮮にも感じられる。「何をしている時が一番楽しい?」と聞くと、「陶芸をしている時が一番楽しい」と即答で返ってきた。趣味は、スノーボードとジェットスキー、やぱりまだまだ若い!!27歳だ。
 彼の明るい人柄、雰囲気はファンを和ませ、スマートな体に似合わず、力強い作品が持ち味で、堂々としている。土の特性を生かし、引き出す、彼なりの表現力は美しい。
 初個展は快調な出だしであった。
(赤井伸衣)