海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

本気の想いがあれば「伝わる」
 テレビショッピング「ジャパネットたかた」の名物社長だった田明さんが引退をしてから二年。いささか甲高いあの独特の声で、CMが見られなくなってさみしくなった。
 田さんにはずっとお会いしたいと思っていた。著書『伝えることから始めよう』に書かれていた「伝える」ことと「伝わる」ことは似て非なるものだということも、僕が長く言い続けていたことなので、わが意を得たりという感じだったのだ。

 「商品が売れなかった理由を考えたとき、そのよさが視聴者に伝わっていないためだと気づいたんです。そのたびに何度も伝え方を変えてきました。僕の通販人生は、その繰り返しだったといえます。ただしゃべっているだけでは、心に響かないんですよ」。
 わかりやすい商品説明の仕方は、ラジオショッピングで培われた。ラジオでは、商品の形も想像の中でイメージしてもらうしかない。小さいといっても伝わらないので、名刺サイズとか、ズームインを遠くのものを近づかないでも撮影出来る…というふうに、誰が聞いてもわかるような言葉を心がけた。
 田さんはテレビで話すときと違って普段の話し方はテンションが低い。
 「みんなに伝えたい、感動を共有したいという思いが強くなると、自然にテンションが上がってきます。なまりがあるとみなさんにいわれますが、無理に標準語を使う必要はないんです。うまくしゃべろうと思わないことが、人に伝えるための秘訣かもしれませんね。素で話す言葉がいちばん伝わりますよ」。
 本気で伝えたいと思って話すことは、その思いが言葉にのる。それは通販だけでなく、すべてに通じることだ。役人が書いた文章をそのまま読んでいる国会議員の答弁も、まったく伝わってこない。夫婦、子ども、職場の人間関係や国会の議論も、相手に伝わることで理解され、よりよい関係につながっていく。

田さんの師匠は…

 高田さんが、師匠として仰ぐのは、世阿弥だ。
 世阿弥のいう「我見(自分側から相手を見る視点)」「離見(相手が自分を見る視点)」「離見の見(全体を客観的に見る視点)」に共感した。
 「僕らはいつもお客さまの立場になって、商売をさせていただいています。いい商品だと思っていても、自分がそう思っているだけかもしれないとか、つねに自分を振り返ってみることが大切なんです。『それは、あなたがいいといっているだけでしょう』と思われたら、お客さまは離れていってしまいますからね」。
 「この商品は、みなさんの暮らしの中で、こういう使い方をしたら暮らしがこう変わりますと、第三者目線で説明するよう心掛けてきました」。
 「商品を売るためにこちらの思いを伝えることも大切ですが、『離見の見』を考えるとどうなのかなと。自分が矛盾を感じた商品は、あまり売れないんですよ。こちらがいいと思わなかったら、伝わる言葉も出てきません。まずは、自分が商品に惚れこまないと」。
 「いい悪いという評価が出てきますが、それも解釈次第。人間の性格だって、ぐずぐずしている人は慎重な人という解釈もできるでしょう。弱点はすばらしい一面でもあるんです。商品も同じで、ある炊飯器をすばらしいといって売ったあとに、別な炊飯器のすばらしさを訴えてもいい。それぞれのよさがあって、いちばんが一つとは限らないんです」。 いちばんが複数あるという考え方は、まさに「離見の見」。これだけがいいといえば「我見」が強くなる。

社長退任後の夢

 それにしても、67歳で、潔く社長を辞めたものだ。100年後も続く企業にするため、元気なうちに後継者にバトンを渡そうと考えたそうだ。
 デジタル化テレビが売れに売れた2010年をピークに、その後二年間は売り上げが激減した。そこで2013年を「覚悟の年」と定め、過去最高益を出せなければ社長を辞めると宣言した。
 「そのくらいいえば、みんなも本気になるだろうと思いました。結果的にその年は最高益を出したんですが、このへんでもうやめてもいいかなと(笑)」。
 2015年、長男に会社を託した。以来、経営にはまったく口を出していない。辞めて二年、会議に出たことも一度もない。佐世保の本社には社員食堂があるが、先日久々に呼ばれて行ってみたら「タニタ食堂」に変わっていて驚いたらしい。
 ただ、BSで放送している「おさんぽジャパネット」だけは続けている。
 日本各地に埋もれているいいものを見つけて紹介する番組だ。
 「僕自身も楽しいんです。とくに女性の方々にはどこに行っても声をかけていただいて、いろいろな方とお話ができる。地方のみなさんは本当にがんばっているので、その思いも伝えていきたいんです。この番組はビジネスというより、ジャパネットの企業理念としてのミッションだと考えています」。
 企業理念といえば、ジャパネットは社員やその家族を大切にして、いまの会社では珍しい社員旅行も続けている。費用はすべて会社もちで、1997年頃から毎年海外に行っている。去年は、両親や祖父母を連れてくる社員もいて、総勢500名以上でシンガポールに行ってきた。

 「過去にとらわれず、未来に翻弄されない。今を生きる」のが田流の生き方だ。ギネス超えの117歳まで生きる気だ。「夢持ち続け日々精進」と、人生まだ50年続くのだから、常に自分史上最高を目指している。だから、いつも本気。ミッションとパッションを大事にしている。だから、ボクも本気で向き合った。心が躍り、ボクの声の方が、いささかテンションが高かったように思う。
 対談が終わって、田さんが改まって「村上さん、お願いがあります」と。
 「はい、なんでしょう?」「テレビショッピングに出ていただけませんか?」
 冗談でも、そう言っていただけたことに感謝感激だ。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
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「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
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