海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

ポジティブ家族
 対談した日は、一年前、小堺さんの母のお通夜の日だった。小堺さんは、母が亡くなってから母への思いが募っている。映画が好きで、よく一緒に見ていた。
 『ローマの休日』に、グレゴリー・ペックが一人で王宮を去るシーンがある。幼い一機少年が「悲しいとか寂しいとかいう気持ちじゃないんだけど、この場面はなんだか嫌だ」と言ったら、「それはせつないという気持ち。大人になったらわかるわよ」と教えてくれた。

「映画はエンドマークが出て終わりだけど、人生にはエンドマークが出ないの。そのあとも人生は続いて、二人は毎日相手を思い出しながら暮らすの。でもふと気づけば、いつしか思い出さなくなっている。人間ってそういうものよ」とも。子ども扱いせず、人間として向き合って人生教育をしてくれた。
 12年前、自分ががんになったとき、人生のエンドマークを意識した。「がんと言われたら、そりゃ驚きますよ。がんという名前の響きがよくないですよね。ピロリ菌みたいにかわいい名前ならいいのに(笑)」。
 「原発不明頸部リンパ節転移」で、どこかにあったがんが転移したようだが、いくら調べても大もとのがんが見つからないので消えたのではと言われた。入院するまでは、このまま死んじゃうのかと…いろいろなことを考えた。「元来こういう性格なので、病院に入ったとたんにケツをまくっちゃったところがあるんです(笑)。あれこれ悩んでも仕方がないから、先生に全部任せようって」。
 宮本武蔵の『五輪書』を読んで肝が据わったという。「水は無理をしない」と書いてあった。水は高いところから低いところへ流れ、遡ったりはしない。器に入れたらどんな形にもなる。「僕も水のように力を抜いて、なすがままでいようと考えたらものすごく楽になりました」。

 「そういう人生観は、以前からあったように思いますが、病気になって、それまで忘れてフリーズドライになっていたものにお湯が注がれて思い起こされたような感じですね」。
 小堺家は、マイナスことばを使わない。
 父が母に「出ていけ!」と言ったら、「どこからーっ?」って言い返すような母で喧嘩にもならない。
 祖母も「お前の鼻は運が入る鼻だ。その口には福があるから食べ物に困らない」と言うような人だった。そう言われると、普通なら気にするようなことでも逆に自慢になる。
 小堺さんは、色覚異常の色弱。中学の検査でそれがわかったときは、さすがに落ち込んだ。なりたかったデザイン系の仕事の道が、そこで閉ざされてしまった。でも父は「いいな、お前は人と違う色が見られて」と言ってくれた。
 どんなお相手の心も解きほぐしてしまう小堺一機さんの誠実さとサービス精神は、明るい家族のもとで培われたようだ。

カードトーク
 小堺さんの番組でおなじみの「サイコロトーク」ならぬ「カードトーク」をやってもらおうと、漢字一文字が書かれた五枚のカードを用意した。この中から一つ、小堺さんが選んだカードの字は「恋」!。
 「何を話そうかなあ。そうそう、祖母に言われたことがありました。『恋は美人だけがするものじゃなく、ブサイクだって恋をするの。黙っていてもチヤホヤされる美人より、ブサイクのほうが恋に工夫をするものなのよ。恋は心にあらず≠ニ書くように、理屈じゃないの。だから『私のどこが好き?』と聞かれたら、『全部好き』と言えばいい。『私のこと思い出してね』と言われたら、『思い出すことなんてない。忘れることはないんだから』と言えばいいと、子どもの僕に言うんですよ(笑)」。
 「父は『女と付き合うときは三という数字を意識しろ。会って好きだと思ったら、三日のうちにデートに誘え。三か月すると飽きてくるから、ちょっと違う自分を見せろ。三年付き合ったら結婚を考えろ。それでダメなら点がついてザンネンになる』って」。
 ここでも、家族の話になった。ちなみに奥さんとは三年で結婚をせず、「念には念を入れて倍かけて六年かけました(笑)」と、笑わせてくれた。

「構えない」と心の扉は開く
 それにしても、小堺さんは人の心の扉を開けるのに長けている。コツを聞いてみた。
 「いまは相手の方に『小堺くんだ』とわかってもらえて、その時点で少し扉が開いている状態になりますが、自分が何者か知られていなかった頃は難しかったですよ。最初は自分の番組で、役者のオバさまたちをこっちに向かせようとして四苦八苦。萩本欽一さんに『お前は一人でしゃべっちゃう。五〇ccの原付バイクのくせに、八〇キロ出そうとするからうるさいんだよ』と言われたことを思い出しました。で、オバさまたちに話を向けたら、どんどんおもしろい話が出てくる(笑)。僕は大間のマグロ級のオバさまたちに、前日から必死に仕込んだメザシを出していたようなものだったんですね。だから北風と太陽の話のように、必死に扉を開けようとしないほうが、かえって相手の扉が開くような気がします」。
 僕も新人アナウンサーの頃は、いかに相手の話を引き出そうかとばかり考え、次の質問で頭がいっぱいになって相手の話を聞いていなかった。それで大事な話をスルーしてしまっていた。インタビューの極意は、へたな質問をするより、とにかくどんな球を投げられても拾うレシーブ力にかかっていると思うようになった。小堺さんも同じ思いだったのかと嬉しくなった。
 ブラウン管の中と同じく、人をごきげんな気持ちにさせる人だった。人をごきげんにさせるということは、ご本人が「ごきげん」になる術を心得ているからだ。その「ごきげん」は、家族が作り出したものでもある。 「楽しかったです」と小堺さんは、ごきげんな表情で次の場所に移動して行った。その後ろ姿を見送りながら「ごきげん」な気持ちになった。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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