海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 来年四月に「世界盆栽博覧会」が、盆栽のふるさと、さいたま市で開かれる。日本で開催されるのは28年ぶりのことだ。その日を心待ちにしている女性がいる。盆栽家の山田香織さんだ。

後を継ぐということ
 香織さんは、大学四年生のとき、江戸時代に創業した盆栽園、清香園の五代目を継いだ。だが継承を決断するまでには、様々な葛藤があった。

 五代目を継ぐかどうか、ずっと悩み続けていた。思春期の頃から家業を古臭く感じて恥ずかしくて、友だちに実家が盆栽園だとは内緒にしていた。それくらい家業にコンプレックスを感じていた。
 18歳のときにフランスに行って、日本文化のよさを見直した。フランスの異文化に触れたことで、ダサいと思い続けてきた家業の盆栽が日本文化の一つであると気づいた。だが、継ぐことを決心したのは、もう少しあとのことだ。
 大学時代は就活をして、就職氷河期の真っただ中で、内定も受けていた。社会に出て働くことを捨てきれなかった自分がいた。内定が出て半月ほど悩んでから、跡を継ごうと決めた。内定をもらったことで、逆に背中を押されたような気がするという。「自分の中では、就職活動を始めた頃から盆栽業を継ぐことも考えていた気がします。でもやりがいをもって一生続けられるのか、食べていけるのかという不安もあり、なかなか決心がつきませんでした」。

 いまは、五代目を継いだことを一点の曇りもなく、よかったと思っている。「悩んでいた時期が10年くらいあったので、継いだ時点でもう迷わなくていい、ひたすらこの道を進めばいいんだと救われた気分でした」

 いまは、五代目を継いだことを一点の曇りもなく、よかったと思っている。「悩んでいた時期が10年くらいあったので、継いだ時点でもう迷わなくていい、ひたすらこの道を進めばいいんだと救われた気分でした」
 香織さんは、女性であることや若さを逆手にとって新しいことを自由にやっていこうと割り切った。伝統的な盆栽の世界に身を置きながら、カジュアルな「彩花盆栽」を始めた。

 盆栽は一盆一樹が基本だが、「彩花盆栽」は木や草花を一つの鉢に植えて、自然の風景を表現する寄せ植えの盆栽だ。もともとは清香園四代目の父が考案したものだが、香織さんの代になってから教室を始めた。伝統とは一線を画するものだと批判もあったが、盆栽の楽しさをより多くの方に伝え、裾野を広げていくための手段がほしかった。
 「伝統の盆栽は、樹齢や重厚感などが大切にされるため、一定の見識をもつ限られた方たちだけの趣味になりがちで……。でも昔はもっと庶民に近しい存在でした。清香園は幕末に創業していますが、かつては市井の人々が軒先で楽しむような気軽さがあったんです。そんな遊び心を取り戻したくて、カジュアルな盆栽なら誰でも気楽に楽しめるんじゃないかと思いました」。

八割も失敗する!?
 伝統盆栽の世界は、「成功二割、失敗八割」だそうだ。
 「自分でも驚くほど失敗するんです(笑)。針金で矯正して枝が折れたりすると『あなたはそれだけの体力がないのに、無理させてごめんなさい』と謝ります。そうやって失敗しながら、それぞれの木の特徴を覚えていきます。失敗しながら身に付けたものは、より確かなものになるようです」。
 父の口癖の一つに「焦らず急げ」ということばがある。
 「『焦る』は追いつめられたネガティブな状態のことで、『急ぐ』は自分からポジティブに動いている状態です。焦る前につねに急いでいると、ポジティブな状態でいられます。何事もポジティブにとらえ、最短の時間で最高の仕事をしたいと思っています」。

 盆栽から教わることばかり。「『お前の好きにはさせやしないぞ』という声も聞こえてきそうで(笑)。樹齢何百年の盆栽を前にすると、自分はまだまだと思えてくる。人も、40年生きてきてわかることと、70年80年生きてわかることには大きな差があるんだろうなと思えてきます」。
 70歳になったら、こんなおばあちゃんになりたいという夢がある。「私は生まれてからいろいろな宿題を与えられていました。一人娘だったこと、跡を継ぐこと、そして次は跡取りを産んで育て上げ、清香園を魅力ある盆栽園にしていくことなど、宿題がたくさん。それらの宿題を70歳くらいまでにすべて納めて、そのあとは自由に生きたいと思っています。好きな盆栽をひたすら作ったり、世界中の盆栽愛好家を訪ねていったり。だから年齢を重ねていくことが、楽しみで仕方がないんです」。
 香織さんは、10歳と4歳の2人の男の子の母でもある。山田家に一〇六年ぶりに誕生した男子だ。香織さんも、小さい頃から清香園が遊び場で、盆栽に携わる大人たちに触れていた。息子たちにも愛着をもってもらうため、ひんぱんに清香園に連れてきている。子どもがやってみたいと思える魅力ある家業の姿にしていきたいと思っている。

 凡才では盆栽は出来ない。五代目は生まれながらにして非凡なものを持っている。悩みに悩み抜いて、失敗を繰り返しながら、批評や批判に耐えながら、今日があるのは、先祖から受け継いだ「非凡」という賜物があるからだろう。まだ、ご本人もそのことに気づいていないだろうが…。伝統とは「非凡」の継承だと思った。それはものすごいことなのだとも思った。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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