海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 『村上海賊の娘』で今年の本屋大賞を受賞した和田竜さん。鎧兜を身に着けたら、そのまま戦場に行けそうな風貌だ。
 1969(昭和44)年、大阪で生まれた。「竜」という名前は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』にちなんでつけられた。
 その後中学2年まで広島で育った。早稲田大学政治経済学部卒業後、テレビドラマの制作会社に務めたが、繊維業界新聞社に転職。2007(平成19)年、『のぼうの城』で小説家デビューを果たす。これが累計200万部のベストセラーとなり、映画化されたときは脚本も担当した。続けて、戦国をテーマにした『忍びの国』『小太郎の左腕』を発表。そして、今年『村上海賊の娘』で本屋大賞を受賞し脚光を浴びた。

史料集めは楽し
 ボクは、先祖が村上水軍だと聞かされて育ってきた。父は何かにつけて「お前は村上水軍の末裔だ」と言っていた。父は兵庫県丹波市の出身だが、陸に上がった村上水軍の一部が丹波に住み着いたと言っていた。去年、尾道と因島に行く機会があって、ようやく村上一族のお墓にお参りしてきた。
 和田さんは、この小説を書いて以来、愛媛や広島に行くと、村上海賊につながる人たちから感謝の言葉をかけられるそうだ。そして、彼らは一様に自分の先祖が村上海賊だということを誇らしげに語る。海賊とはいえ地元住民は、いまだにかなり好意的に受けとめている。戦国の世にあって、自分たちの暮らしを守ってくれたという思いがあるようだ。和田さんも、広島に住んでいた少年時代、「村上海賊はかっこいいなあ」と憧れていた。その時点からすでに、強くて自由で颯爽としている海賊のイメージが出来上がっていたのかもしれない。
 この小説は、週刊誌で連載が決まってから史料調べに一年間費やした。だが、史料集めは苦にならない。新しい発見をすると目の前が開けてくる感じがあるからだ。
 例えば、敵方の泉州侍の頭、眞鍋七五三兵衛が海賊だったとわかったとき、木津川合戦は海賊同士の戦いだったと腑に落ちるものがあった。大坂本願寺にくみする毛利家と、それを迎え撃つ織田家との戦いというより、実は村上海賊と泉州海賊との戦いだったと位置づけられる。

 村上海賊の総元締めともいえる村上武吉に娘がいたと知ったのも、いろいろな史料を探して、ようやくわかったことだ。初めから女の子を主人公にしたいと考えていた和田さんは、長州藩の『萩藩譜録』の記述で発見し、これでやっと書けると思った。
 女の子を主人公にしようと思ったのは、海賊から想起されるイメージと真逆なものを描きたかったからだ。配下の海賊たちがすごい荒くれ者でも姫様だけには頭が上がらないとか、その姫様が乱暴者で男どもを牛耳っているとか、そのあたりからおもしろい展開ができると思った。和田さん自身も主人公の景(きょう)のような活発なタイプの女性が好きらしい。「元気で露悪的な女性のほうが人間として信用できるじゃないですか(笑)」
 景の父親の村上武吉は実在するカリスマ的海賊だが、小説では、娘には徹底的に甘い父親という側面も描かれている。「娘を甘やかす以外、何ができる」というセリフに人間味を感じる。「村上武吉は歴史的にも有名な人物で、有能な海賊でした。だからこそ何かギャップのある側面を描くことで、さらに人間が大きく見えてくると思ったんです」
 武吉のキャラクターを作るうえで、モデルとなった人はいないが、和田さん自身、親に甘やかされて育った。「僕は甘やかすということを肯定的にとらえていて、甘やかすことで人間の能力が際限なく伸びていくような気がするんです。景もそれによって能力がどんどんいい方向に向かっていきます」
 最近、若い人が自己肯定できないのは、親にうるさくダメ出しをされて育ったせいかもしれない。そのままでいいと親に言われて育つと、自分自身を認められるようになると思う。

無類の戦国好き
 和田さんは小説を書く前に、まずシナリオを書き起こすスタイルをとっている。大学時代は劇団に入っていて、シナリオも書いていた。それが小説に生かされている。
 「僕自身、役者で端役をやっても、ただの賑やかしでは面白くないと思っていたので、どんなに小さな役でも物語があるような脚本を書くよう心がけました。そのスタンスは今も変わりません」
 普通なら通行人Aで終わりそうな登場人物であっても、丁寧に書く。司馬遼太郎の小説などは、出ては消えていくように次々人物が出てくるが、歴史小説を読み慣れていない人にとっては名前だけ聞いてもピンとこない。和田さんは、極力、登場人物を少なくした上で、Aさんはこんな人で、Bさんとは見た目も性格も違うということを示すよう心がけている。
 これまで出した小説は戦国ものばかりだ。これまでの歴史小説で、手に汗握る戦闘シーンをここまで克明に書いたものはなかったと思う。
 「僕は海外の映画のような、バトルシーンそのものの面白さを描きたいので、合戦の場面には力が入るんです。一つは、単純に敵をやっつけるという痛快さ。もう一つは、その戦いの中で登場人物がどう情を交わすかというところ。敵方はただ悪いやつで、単にやっつけましたという物語ではなく、戦ってはいるけど両者ともきちんとわかりあった人間同士というくだりがあると、そのバトルがさらに面白くなるはずです」
 子どもの頃から戦いものが好きだった。「ガンダム」→「必殺仕事人」→「ターミネーター」→「和田戦国小説」という系譜になる。和田さんが戦国時代に惹かれるのは、抑圧感がないからだ。人物が爽快で、個性的。破格で喜怒哀楽がはっきりしている。
 きっと和田さんの中にも戦国魂が内在しているにちがいない。

■村上信夫プロフィール
2001年から11年に渡り、『ラジオビタミン』や『鎌田實いのちの対話』など、NHKラジオの「声」として活躍。
現在は、全国を回り「嬉しい言葉の種まき」をしながら、文化放送『日曜はがんばらない』(毎週日曜10:00〜)、月刊『清流』連載対談〜ときめきトークなどで、新たな境地を開いている。大阪で『ことば磨き塾』主宰。
1953年、京都生まれ。
元NHKエグゼクティブアナウンサー。
これまで、『おはよう日本』『ニュース7 』『育児カレンダー』などを担当。著書に『嬉しいことばの種まき』『ことばのビタミン』(近代文藝社)『ラジオが好き!』(海竜社)など。趣味、将棋(二段)。

http://murakaminobuo.com


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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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