海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 明治の実業家、渋沢栄一の孫である鮫島純子さん。92歳になった今も、車を運転してどこへでも行けば、社交ダンス教室にも通っている。背筋をピンと伸ばし、食欲も旺盛、会話の内容も魅力的。その生き方を見ていると、年齢をまったく感じさせない。

渋沢栄一から引き継いだこと
 渋沢栄一は、日本資本主義の父とも言われる。第一銀行や一橋大学など五百以上の事業を興したが、財閥を作らず、東京養育院など六百以上の社会事業に貢献した。

 渋沢家の暮らし方は質素だった。大きな家に住んではいたが、それは、客人をもてなすためだった。渋沢栄一は素性のわからない人も平気で家に入れて、身の上相談に応じていた。渋沢は「慈善を慈善として行うのは真の慈善にあらず。余はこれを楽しみとする」という言葉を残している。人の喜びが、自分の喜びにつながっていたようだ。
 91歳で亡くなる直前、肺炎で寝込んでいるところに、貧困にあえいでいる方々に国からお金が出ないと聞かされ、病身をおして、政府に陳情に出向いていった。医師が止めても「私がこの年まで生かされたのは、こういうときに役立つため。それで死ぬなら本望です」と言ったそうだ。「私も今、祖父と同じ心境で、みなさまのお役に立てるならいつでもこの命をお使いくださいという気持ちで生きております」と、すでに渋沢栄一が亡くなった年齢を一つ超えた鮫島さんは言う。
 祖父が亡くなったとき、鮫島さんは9歳だったが、いろいろなことを覚えている。「普通のおじいちゃんだと思っていたら、盛大なお葬式を見て、すごい人だとわかった。天皇陛下から感謝の意を伝える御沙汰書が勅使によって読み上げられ、当時は車なんてそんなになかったのに、葬列に東京中の車が集まったと思えるくらい何十台もの車が続いたことも驚きでした。祖父は学校の援助もしていたので、沿道に各学校の生徒さん達がお見送りに並び、祖父はこれほど多くの方に慕われる人だったのかと初めてわかったんです」。

 祖父は、孫に優しかった。毎週土曜日には孫たちが集まり、一人ずつ祖父に「ごきげんよう」と挨拶に行った。そうすると祖父は「よう来られたな」と頭をなでながら、梅干し飴を口に入れてくれた。「来られた」と、孫にも丁寧なことばを使う人だった。渋沢について書かれた文書によると、どんな時も、どんな人にも丁寧なことばを使っていたようだ。
 矜持をもって生きた渋沢栄一精神のどんな点を受け継いでいるか聞いてみた。「祖父と同じように、世界が平和でなければみんなの幸せはなく、みんなが幸せにならなければ自分も幸せにはなれないと考えてきました」。祖父が亡くなったとき、「これで戦争をやめさせる人がいなくなった」と言った人がいた。徹底した平和主義者だった。

感謝の気持ちで生きる
 講演会で、高齢者がイキイキと生きる秘訣を聞かれることが多い。「もちろん体にいいことをすることも大事だが、すべてに感謝して生きる心が大事」と話す。
 思ってはいても感謝の気持ちは、ついつい忘れがちになる。忘れないために家中に「ありがとう」と書いた紙を貼って意識するようにした。トイレに入って、「ありがとう」の紙を目にすると、つつがなく排泄できることにも感謝出来る。「当たり前のことと思ってしまいがちだが、食べ物を体の栄養にするものと排泄するものに分けるなんてすごいこと」。「私はこの体を神様からお借りしているものと心して、いつもありがとうと感謝の気持ちをもっています」。
 2階から階段を降りていたとき、足を踏み外して骨折したときも、思わず「頭を打たずにすんで、ありがとう」と口をついて出たそうだ。
 鮫島さんは、最近、9人組の組織的な振り込め詐欺に、巧みに騙されてしまい、多額の損をしたが、不思議と落ち込まなかったという。「縁のないことは自分の周りに起きないと思うから、これで私自身の過去のマイナスエネルギーが出て行ったのかもしれないと思ったんです」。なんという人だろう…どんなマイナスのことにも意味があると考えられる人なのだ。
 子育てに悩んでいた頃に「過去生」という言葉に出会い、今の人生は前世とつながっていて、周囲で起こることは、今の世で自分を磨くための応用問題ということに気づかされた。すべてに感謝の気持ちをもつためのトレーニングと受け止めた。張り紙を見ながら「ありがとう」と何度も口に出していたら、感謝する気持ちがあとから心に落としこまれると気づいた。習慣的にありがとうと言っていると、脳のほうが「そうだ。感謝しなくては」と思うようになるらしい。問題が起こると「相手のほうが悪い」と思いがちだが、「憎い相手や意地悪な相手こそ、自分をレベルアップさせるために悪役を演じてくれる大事な存在として、感謝している」。
 純子(すみこ)という名は、祖父がつけてくれた。「純なるかな 純なるかな」と命名書にある。財産も名誉もあの世に持っていけない。持っていけるのは、この世で身につけた「想いの習慣」だけ。純粋な心の持ちようは、アンチエイジングの極めつけなのだと、鮫島さんと話していて確信した。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

イネ・セイミ

 インディアンフルート教室開講しました。
誰でもすぐに吹けます
入会受付中!!

 講師 イネ・セイミ
《フルート奏者 指導歴30年》
1レッスン・1時間5,000円
(ティータイム付)

申込み・お問合せ
seimiine@oasis.ocn.ne.jp


 何か始めたいと思っている貴女へ。
数年後、素敵にフルートを奏でる姿が
そこにあります。
楽しく個人レッスン致します♪