海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 放送作家の小山薫堂さんは、多彩な企画力の持ち主だ。映画『おくりびと』の脚本を手掛けたことで知られるが、熊本県のPRキャラクター「くまモン」を仕掛けたり、日光金谷ホテル、京都の下鴨茶寮など企業の経営改善を任されたり、数多くの仕事を手がけている。その仕事術の根底には「人を幸せにする」というゆるぎない軸がある。小山さんは「あの手この手でサプライズを考えて、誰かを喜ばせることが生き甲斐だ」という。僕と同じ気持ちの持ち主だと親近感を抱いた。

サプライズ大作戦

 小山さんに喜んでもらいたいと、僕もサプライズを周到に用意した。
 今年夏、熊本県の天草で、偶然「維新の蔵」という看板を見つけた。名前に惹かれて近づいて行ったら一軒家のようなケーキ屋さんだった。そこには、天草出身の小山さんの色紙があり、先客として訪れていたことがわかった。著書の『ふくあじ』でも紹介しているお気に入りの店なのだ。
 そこで一計を案じたムラカミは、店主に頼みこんで、くまモンのプレートをつけたケーキを、対談当日の午前中指定で送ってもらう手筈を整えた。
 当日、事務所に行ったら、サプライズに喜んだ小山さんが満面の笑みで迎えてくれることを予想していた。ところが、何かの手違いで届いていない…。ムラカミは焦った。
 だが、サプライズの神様は見捨てていなかった。名刺交換したばかりの、これ以上望んでもない絶好のタイミングで、宅配便が届いたのだ。このサプライズに小山さん以上に喜んだのは、ムラカミだった。演出しようとしても偶然はやってこない。このサプライズもひょっとしたら小山さんの神通力だったかもしれない。

超プラス思考のお父さん

  くまモンは小山さんの分身みたいな気がする。サービス精神旺盛で、人を幸せな気持ちにしてくれる。一見つまらなく思える日常を特別な記念日に変えるにはどうしたらいいかを、いつも考えている。ちょっと視点を変えるだけで、つまらないと思っていたことが輝きだす。
 事務所を訪れる人に楽しんでもらえるよう、受付をカフェにした。事務所のスタッフの誕生日をサプライズで祝う方法を真剣に考える。タクシーに乗ると、運転手さんが笑顔になる話術を試みる。大きなプロジェクトであろうと、ささやかなイベントであろうと、常に感情移入出来る企画、参加したくなる企画を考えている。

 小山さんが仕事を引き受けるときに念頭におくことは、その仕事は誰を幸せにするのか、その仕事は自分にとって楽しいことか、その仕事は新しいか、この3つだ。
 そういう小山さんの性格に大きな影響を与えたのは、超ポジティブシンキングなお父さんだ。「人は知らず知らずのうちに、最良の人生を選択している」「今、起きている最悪の出来事は、最良の出来事にたどりつくまでの回り道」「人生はいいほうにいいほうに進んでいる」というお父さんだった。
 お父さんは戦争が始まって大陸に疎開し、終戦で引き揚げてきた。当時、お父さんは、8歳。2歳の弟をおぶっているのが重くて向こうに置いてきたいと思ったそうだ。それでも抱きかかえて船に乗ったが、「あのとき弟を置いてきたら彼の人生も変わっていたかもしれない」と話していた。人生は、ちょっとしたことで枝分かれしてしまうと思ったそうだ。
 だからこそ、マイナス思考でない人生を意識して生きたのだろう。

熊本でのサプライズ

 「くまモン」はアドバイザーをしている地域振興キャンペーン「くまもとサプライズ」のキャラクターとして生まれた。くまモンを動かす熊本県庁のチームが、部署の垣根を越えて「くまモン」を盛り上げて行こうと動き、口コミで人気が広がっていった。
 「くまもとサプライズ」というキャンペーンを企画したのも、県民の意識改革を促したいと思ったからだ。観光キャンペーンというと「うちはいいところだから来て」と外の人に呼び掛けることばかりに目を向けがちだが、まず自分たちが灯台もと暗しで気づいていない地元の良さを発見し、それを発信していこうと提案した。自分が住んでいるところの良さに、気づいていないことが多い。県外の人が驚くような熊本県の良さを見つけると、自分たちも幸せな気分になれるはずだ。自慢できるものを見つける過程で、これはみんなが驚くだろうなとか、喜ぶだろうなとか、人がどう感じるかを慮るようになれる。県民みんながそういう意識になったら、日本一のおもてなし県になれると小山さんは言う。
 小山さんが、熊本でタクシーに乗ったとき、女性の運転手さんがなかなかメーターを動かさない。それを指摘したら「いえ、わかっていますよ。この信号でいつも引っかかるから、信号を過ぎたらメーターを入れます。そうしないとお客さんが信号にイライラするでしょう」って答えが返ってきた。それに感激したので、「こういう人がいることこそが熊本の価値なんですよ」と1回目の会議で話した。
 そうしたら2回目の会議のときに、職員がサプライズを用意していた。小山さんを驚かせようとその運転手さんを探して会議に呼んでいたのだ。彼女から「小山薫堂のおくりびと」と書いた名刺まで渡された。新聞記者も呼んでいて「くまもとサプライズの提唱者がサプライズされた!」という記事になった。

50歳の自分に贈るサプライズ

 昔は死ぬことが怖かったそうだ。「子どもの頃、半ズボンをはいているときに、長ズボンをはくことなく、おしゃれもすることなく死んでいくのかな」と悲観的だった。
 「ノストラダムスの大予言の影響も大きかったですよね。誰もがもしやという思いで、今のうちにと動いた人も多かったはず。そういう意味では、今の世の中に必要なのはノストラダムスの大予言のようなものかもしれません。人生に限りがあると知ったら、一生懸命何かをしようとするでしょう」
 明日があると思わず、今日を真剣に楽しく生きていくと、人生も変わっていく。
 小山さんは、来年、五〇歳の節目を迎える。五〇歳になったら一か月間、休暇を取ろうと考えている。「いったん自分をリセットしたい。携帯を持たずに旅に出て、車で寝泊まりしながら日本中の銭湯をまわるとか、いろいろプランを考えている。僕は五〇代を、六〇代七〇代になった自分がより心豊かに過ごせるような準備期間と考えています」。
 小山さんが自分で自分にどんなサプライズを用意するのか楽しみだ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

イネ・セイミ

 インディアンフルート教室開講しました。
誰でもすぐに吹けます
入会受付中!!

 講師 イネ・セイミ
《フルート奏者 指導歴30年》
1レッスン・1時間5,000円
(ティータイム付)

申込み・お問合せ
seimiine@oasis.ocn.ne.jp


 何か始めたいと思っている貴女へ。
数年後、素敵にフルートを奏でる姿が
そこにあります。
楽しく個人レッスン致します♪