海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 桜の名所・吉野の近くにその寺はある。近鉄吉野線下市口駅の目の前にその寺はある。浄土真宗光明寺は、室町時代の創建からおよそ500年。いま寺を預かるのは、21世住職になる。住職の名は、三浦明利(みうら・あかり)さん。墨染の衣に袈裟姿も初々しい29歳。
 住職としての日々は、早朝から忙しい。朝一番に、本堂で経をあげるお勤めをする。これが、ボイストレーニングのようになっていて、声の調子で、体調がわかる。朝8時位から、「お月参り」といって、月々の命日の日に、門徒の家を廻って経をあげる。日に5〜6軒から10軒位。門徒の家は300軒ほどあるから、ほぼ毎日のことになる。

 そして、三浦さんには、もう一つの顔がある。忙しい住職としてのお勤めの合間を縫って、シンガーソングライターとしての活動もしている。

煩悩のさせる技?
 何でも夢中になってしまう子だった。絵を描くことも好き。音楽や演劇も好きで、母にクラシックのコンサートや歌舞伎などに連れて行ってもらった。
 4歳から始めたピアノも習っていたが、いまひとつ馴染めず、中学生になった時、ギターを始めた。学校で、ギタークラブを作って皆で自由に、好きな音楽を楽しんだ。ジャズ、ロック、ファンク、ラテン、ポップ…なんでも聴いた。
 高校は、地元の吉野ではなく、大阪の天王寺まで電車で片道2時間位掛けて通っていた。ギターを抱えて、朝早くから夜まで、バンドでロック三昧の日々を送った。
 龍谷大学に入って、音楽仲間4人と「モガフープ」というグループを結成した。モガは、モダンガール。フープは輪。女性たちの輪を作りたいという気持ちが込められている。ロックが基本の音楽だったが、かっこいいものを作って驚かせようという気持ちが強かった。こんな曲も、あんなテクニックも、ライブでは、大ノリだった。全国規模のコンテストでグランプリを獲得するほどの腕前だった。

 住職になることは、子どもの頃からの希望だった。母の胎内にいるころからお経を聞いて育ち、お経が好きだった。心地よかった。母もお寺の娘だったが、母から継ぎなさいと言われたことはなく、「好きなことをしなさい」と言われていた。寺を継ぐとしても、ずっと先のことだと思っていた。
 三浦さんが音楽に明け暮れていたある日、大きく運命が転換することが起きた。突然、住職をしていた父が煩悩に惑わされる出来事があり、突如、家を出てしまったのだ。当時は、余りにショックが大きくて、父のことを思うと、冷静な気持ちになれなかった。とてもまじめな人だと思っていたのに、煩悩には勝てなかったようだ。最近になって、「縁に触れた」のだと思えるようになった。

 寺の跡継ぎのことが心配になった。バンドも私が抜ければ、皆も困る。住職になれば、大学を辞めなければならないかもしれない。自分が描いていた将来の夢が、消えてしまったような気がした。そんな時、バンド仲間が、背中を押してくれた。「今まで音楽が出来たのは、両親のお陰でしょ。今度は、明利がお寺のために何かをする番だよ」と言って、気持ちを解きほぐしてくれた。大学も休学ということで、「戻れる時に戻りなさい。」と言ってくれた。音楽のことは、いったん諦めて、住職に専念しようと決断した。

仏の道も音楽の道も
 しかも、母は、ガンで闘病中だった。孤独な中、忙しく、苦しく、寂しかった。その頃、夢の中に、悲しんでばかりいる自分が出て来たことがある。何故、私だけがこんな目にあわなければならないのかと悩んだこともある。
 だが気丈な母は、退院した時、「全てのものが輝いて見える」といっていた。残りの人生をお寺のことに費やしたいと、明利さんを叱咤激励しながら、一生懸命、寺のことを教えてくれている。一端、諦めかけた音楽を、再び始めたのも、母に「あなたの声好きだから、歌って」と勧められたからだ。
 仏の道と音楽の道は別だと思い込んでいた。声明という、仏典に節をつけて詠じられるものがある。親鸞聖人も、仏の教えを、当時流行していた「今様」という歌にして、皆が楽しく口ずさめる「和讃」として500曲も作った。今では、仏の道と歌の道は一つだと確信している。
 バンド時代の音楽とは変わってきた。一緒に歌ってもらえたら嬉しい音楽を志向している。生きることへの感謝、慈しみの心、出会いを大切にする心を表現したいと思う。「住職をしているからこそ生まれてくる音楽があるはず…」と三浦さんは言う。
 『ありがとう〜私を包むすべてに』は、三浦さんの代表曲と言っていいと思う。「何かをしてくれてありがとう、というだけでなく、もっと『有り難い』という気持ちを込めた」曲だ。「住職になってから、一人で頑張ってきたつもりでいたが、本当は、自分の力だけで出来たことなど何もなかった。皆、様々なご縁を得て、助けていただいたから出来たこと。門徒さん、家族、友だち、…私を包むみんなに『ありがとう』と伝えたかった」。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

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 ところ:常滑屋
 と き:月2回 第2、4金曜日 午後1時〜3時
 会 費:1回 2,250円(3ヶ月分前納制)
 問合せ:0569−35−0470

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