海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 ページをめくるのがもどかしいほど、面白い小説がある。この作家の書くものは、どれを読んでも面白いのだ。作家の名は百田尚樹さん。
 作家デビューは、今年映画化もされる『永遠の0』。
 妻子のために命を惜しむ零戦パイロットが、なぜ戦死しなければならなかったのか。謎解きの中で戦場の無残さが浮かび上がる作品だ。幅広い世代の支持を得て、160万部を超えるミリオンセラーとなった。この作品は、亡くなった児玉清さんも「嬉しいを何回重ねても足りない稀有な作家との出逢いだ」と激賞していた。

多彩な内容は、多彩な体験から
 1956年、大阪・東淀川生まれ。
 勉強は嫌いで、一日中、遊んでばかりいた。ガキ大将で喧嘩は強かった。関西によくいる「しょうもないことばかり言うおしゃべり」だったそうだ。作文は苦手だった。
 高校を出てぶらぶらしていたら、出ていけと言われ、しかたなく勉強して同志社へ進む。
 このあたりは『錨をあげよ』に重なる。
 大学で3年間ボクシングに熱中し、新人王にもなった。この体験がのちに『ボックス!』に生きる。
 大学在学中に、ABCテレビの恋愛バラエティー番組『ラブアタック!』の常連で出演していた。「かぐや姫」という称号の、すごく綺麗な女子大生に男子学生が、あの手この手でアタックし、くす玉が割れたらカップル成立。だめなら「みじめアタッカー」と烙印が押される。百田さんは、伝説的な「みじめアタッカー」だった。だが、番組での自己PRをスタッフに注目され、放送作家への道を歩む。大学は5年で中退した。
 関西発の人気番組『探偵ナイトスクープ』の構成作家を番組発足以来、ベストセラー作家になったいまでも務めている。構成作家の百田さんが、小説を書こうと思ったのは、「テレビは一過性。100%自分の仕事といえるものを形に残したい」と考えたからだ。
 読書家の父は幼い百田さんに、「おまえも大きくなったら本が書ける人になったらええなぁ」と言っていた。作家デビューしたとき、父は認知症で、読んでもらうことは叶わなかった。

同じスタイルはない
 めまぐるしく作風が変わるというか、一作ごとにジャンルが異なる。ただ人間観察の鋭さには、共通したものがある。そこに、何をどういう視点で取り上げたらいいか、どうすれば読者が喜ぶか…、構成作家として培ってきた勘が働く。
 僕の一押しは、時代小説『影法師』。
 将来を嘱望された男がなぜ不遇の死を遂げたのか。下級武士から筆頭家老にまで上り詰めた名倉勘一は、竹馬の友、磯貝彦四郎の行方を追い、ついにその真相を知る。二人の運命を変えた事件の真相に男の生き様があった。見えないところで守ってくれている「影法師」…なかなか気づかない大切な存在がいることを、百田さんは、教えてくれる。
 最新作『夢を売る男』は、作家志望者が失望しそうな出版社の内幕もの。
 高校ボクシングにかける青春群像を描く『ボックス!』。
 『聖夜の贈り物』は、イブの夜、5人の女性に起きた奇跡の物語。
 モンスター』は、整形して絶世の美女になった女性の謎を追う物語。
 『風の中のマリア』では、オオスズメバチの視点で自然の厳しさ、美しさを描いた。
 25年前に書いていた幻の処女作がもとになった『錨をあげよ』。永遠の理想の女性を、独断と偏見で求め続ける男は、百田さん自身に重なる。

 そして、大作『海賊とよばれた男』は、現代の日本人が忘れかけている「勇気」や「誇り」を持った男たちの姿がそこにはある。そんな男たちを率いた一人の気骨ある経営者の人生。モデルになった出光興産の創業者、出光佐三の95年の生涯はまさしく凄絶としか言いようのないものだ。
 百田さんは、「この男を書かねばならない!」「この素晴らしい男を一人でも多くの日本人に知ってもらいたい!それが作家としての使命だ」と感じた。作家になって以来、執筆しながらこれほどの充実感を覚えたことはないという。
 この作品は「小説」という形を取っているが、登場人物はすべて実在し、ここに描かれた出来事は本当にあったことだ。小説は、戦後日本企業の知られざる快挙「日章丸事件」を掘り起こし、国家と社会のために奮闘した男たちの生きざまを描き出し、現代人に「渇」を与えている。
 「これは遠い昔の話ではない。誇りをもち、日本を復興へと導いた男たちがいた。自信を失った現代の日本人に、彼らと同じ血が流れていることを知ってほしい」と百田さんは語る。

 「モットーとして、同じことはやらない」。だが、作品の方向性は一緒だ。「人生っていいな」と思ってもらえる作品を書いている。人生を肯定し、人が生きることの素晴らしさを描くことが、作家のテーマだと思っている。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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