海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

聞く力対談
 ラジオで11年、インタビューをしてきた。二千人は超える人の心を開き、話を聞いてきた。「聞く力」はあるほうだと自負していた。
 阿川佐和子さんの文春新書『聞く力』が100万部を超えるベストセラーになっている。
 『週刊文春』の対談ページ「阿川佐和子のこの人に会いたい」は、もうすぐ連載一、〇〇〇回を迎える。「インタビューの名手」といわれる阿川さんに『聞く力』対談を挑んだ。とはいえ勢い込んでのものではなく、同い年の「同級生」のよしみもあって、気は楽だった。結果、「聞く力」の一端を聞くつもりが、聞かれるがままに答えてばかりいた。彼女は、意識させずに懐に入り込むのがうまい。さりとて、わざとらしさを全く感じさせない。作為的でない。還暦前なのに無邪気さがある。魅力的な人だ。

 阿川さんは、「ぜんぜん聞き上手じゃない」という。「本当は私、知らない人に話を聞くのも怖いんです。おもしろい話を聞けなかったらどうしようとか、相手が怒ってしまわないかとか、いろいろ考えちゃう。つまり、小心者で人見知りなの」。とご本人は謙遜気味に言うが、親友の檀ふみさんに言わせると「聞き上手というより聞き好き、しゃべり過ぎ」となる。
 対談ページを読んでいて気づいたことがある。「おもしろそう」とか「さすが!」とか、相槌がすべて肯定言葉なのだ。だから、話したくなる。
 以前、城山三郎さんにインタビューしたときのこと。阿川さんの話に「おもしろいね」「それで?」「どうして?」「それから?」と合いの手(まさに愛の手)を上手に入れながら、穏やかな温かな表情でニコニコ聞いてもらえたそうだ。「この人にはあれもこれもしゃべりたい」という気持ちになった。そんな聞き上手になりたいと目ざしてきた。その通りになっていると思う。
 「下調べも良し悪し。下調べから想定した筋書きを作っても、その通りにいかないことがあるでしょう。本番で話の流れが違ってきたら、その場で軌道修正しなきゃいけないのに、台本にとらわれてしまう聞き手も多いのよ」。段取り通りにやろうとすると、つまらなくなるが、型にとらわれないのが阿川さんの良さだ。

 「ゲストの人生がわかる記事や本を読んで、最低限の知識をもって対談に臨みますが、どの記事よりもさらに深い部分を聞いてみようと思います。やっぱり思っていた通りの人となるより、この人にはこんな一面もあるのか!と意外性を見つけたときは、嬉しくなるんです」。

ムラカミの本音
 その阿川さん、ぼくに、「どうして五八歳にもなってNHK をやめたの?」とするどく切り込んできた。
 「一言でいうなら自分で潮時だと。新しい自分に出会いたかったんでしょうね。三五年間NHKという組織の中では自由にやってきたけど、そろそろ限界かなと思って」と答えると、「こう言っちゃなんですけど、男の人がフリーになろうと考えるのはだいたい四五歳くらいでしょう。ちょっと遅くないですか(笑)四五歳くらいならまだ十分エネルギーもあるし、もうひと花を咲かせたいとか、第二の人生を考えるのはその年齢がギリギリじゃないかと思うんですよ」と追い討ちがきた。
 「僕も四七歳くらいのときにやめようかなと考えたことはありますよ。でもラジオという面白い仕事に出会って思いとどまれたのかもしれません」と折り合いをつけて言うと、まだ納得しない。「あとわずかで定年なのにもう少し我慢して勤めあげようとは考えなかったんですか」。
 たじろぎながら、「NHK という看板を背負って仕事をしたいと思えば、そういう選択をしたと思います。僕がやめると言ったら、ほとんどの人が『なんで?』と聞いてきましたけど…。でも、一人だけ『おめでとうございます』と言ってくれたのが、有働由美子アナウンサーなんですよ。有働くんは、僕が『おはよう日本』で最初に組んだパートナーですが、今まで一緒に仕事をしてきたパートナーの中で最も優れた人だといっても過言ではありません」と、話そうと予期していないことまで、知らず知らずのうちに飛び出してきた。
 「一番印象深かったのは、阪神淡路大震災が発生した時。正確な情報がつかめない状況の中、スタッフも右往左往していて、なぐり書きの原稿を読む僕の横でしっかりフォローをしてくれたのが有働くんでした。間違っていると首を振ったり、大丈夫ならうなずいたり、今必要だと思われる情報の原稿をさっと出してくれたんです。サッカーでいえば名アシストという感じでしょうか。あのときは入社三年目だったのかな」。と述懐すると、「有働さんから新しい門出を祝福されて初めて、ご自分も『めでたいことなんだ』と認識したわけね。村上さんはNHKをやめて、自由になったことを楽しんでいらっしゃる感じね」とまとめてくれた。
 それで、ほっとして、ふと気が緩んでいるところへ、「今までは、自分も言いたいことがあると思っても全部殺してきたんじゃない?」と聞かれ、「自分の意見を言っちゃいけないことが多かったですからね」とつい本音を出した。
 「今はそのマグマが爆発していらっしゃるとお見受けいたしますわ(笑)」。
 おっしゃる通りです。阿川さん。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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