海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 伝統と格式のあるロシアのボリショイ劇場バレエ団で、ただ一人の日本人ソリスト・岩田守弘さん。岩田さんは、19歳の時にバレエの本場ロシアに渡り、研鑽を積み、ソリストとして認められ、活躍してきた。166センチの小柄な体で頑張ってきた。
 「バレエが好きで好きでしかたない」一心で、ボリショイの厳しい練習に耐えてきた。
 一昨年11月、ロシア政府から「日露の文化交流に多大な貢献をした」として、「友好勲章」を授与された。式典では、メドベージェフ大統領から直接、勲章を授与された。岩田さんの活躍を、バレエ大国ロシアが認めたことになる。

 伝説的スターでボリショイの芸術監督も努めたワシーリエフさんは、岩田さんをこう評価している。「モリのような素晴らしいダンサーが踊っていることは、ボリショイ劇場にとって大きな幸福だ。ボリショイ劇場で、モリが活躍していることは、日本が誇るべきことだ」

世界一の道化

 岩田さんは、1970年、神奈川県横浜市生まれ。父・高一さん( 78)は、かつて東京バレエ団で活躍していた。
 バレエを始めたのは9歳から。父のバレエ・スクールで習い始めた。しだいに頭角を表し、17歳で、全日本バレエ・コンクールのジュニア部門1位となり、90年、19歳で、旧ソビエトのモスクワへ旅立った。
 91年、ロシア・バレエ団に入団。93年、モスクワ国際バレエ・コンクールで金賞を受賞し、ロシアでやっていく自信が出来て、バレエ団で出会ったオリガさんと結婚した。マリヤさん( 16歳)とありささん( 13歳)という2人の娘も授かった。
 ロシア・バレエ団は、海外公演が多く、過密スケジュールの旅ばかりで、なかなか家族と一緒にいられない。出来るだけモスクワにいたいと思い、ボリショイ・バレエ団への入団を希望した。
 しかし、すんなりとはいかなかった。当時、ボリショイは外国人を採用しなかったので、当初は、研修生という資格で入った。正式入団してからも、ボリショイで認められるまでが長く辛かった。ボリショイ・バレエ団というのは、格式の高いところだ。ロシア人でもボリショイに入るためには、子どもの頃から、バレエ学校に通い、選りすぐられた人だけが入団を許される。国はよいダンサーを育てるために、生活費や教育費を出している。
 バレエは国の威信をかけた芸術なのだ。200年あまりの歴史があり、歴代の芸術監督や様々なダンサー、そして客の思い(エネルギー)が、劇場に蓄積されている。その様な伝統と格式のある所ゆえに、そう簡単に招き入れてくれるわけがない。下積み生活が長かった。なかなか役がもらえない。踊りたくても踊れない状況が続いた。ひたすら練習を繰り返した。「いいときは成長しない。悪いときに成長する」そう確信しながら…。

 ようやくボリショイデビューの日がやってきた。余りにも役がこないので、「役を下さい」と直訴したら、「猿」の役ならあるといわれた。妻にはやめたほうがいいと言われたが、動物園に行って、猿を観察して臨んだ。「生き生きとした猿」と評判になった。
 その役がきっかけで認められ、役がつくようになった。父にも「世界一の道化になれ」と励まされた。

弱みを強みに変えた

 岩田さんは、ボリショイで準主役クラスの第1ソリストという立場を獲得した。岩田さんの踊る役は、キャラクターダンスが中心だ。感情を動作で表現し、音楽を踊りによって視覚化する。難しいがやりがいのあるポジションだ。単なる脇役ではない。自分の役柄や、存在を深く考えさせられる。振付師の仕事にも役立つ。
 「白鳥の湖」の道化役や「くるみ割り人形」の悪魔の役は、演じていても楽しい。客が喜んでくれ、印象に残る。拍手が沢山もらえる役は、脇役にもある。自分の眼で感じたものを心の栄養にする。「背が低いことは、僕の身体に与えられたこと。それを自分の魅力に変えられた。弱みは最大の強みになる」
 『ロミオとジュリエット』は、クラシックバレエの名作中の名作だ。ドラマティック・バレエ(ロシア・バレエ)の最高峰ともいわれる。
 バレエは、フランス、イギリス、アメリカ、そしてロシア…それぞれ表現の仕方が異なる。ロシア・バレエの特徴は、踊りは古典的な型があるが、演目にストーリー性があり、ダンサーに高い表現力が求められる。ドラマティック・バレエといわれるゆえんだ。
 演者は、型通りに踊るだけでなく、本気で演技も出来なければならない。岩田さんが演じるマキューシオという役は、ジュリエットの兄に殺される。死をきっかけに、ロミオの一族とジュリエットの一族の対立が激化する。だから、死は、重要な場面だ。観客の気持ちを引き付ける死ぬ時の踊りが見せ場だ。岩田さんは「跳躍や回転」だけでなく、目の演技で、死を表す。目の光が、徐々に失せていくというリアルな死を演じる。客席から見ていて、わかるかわからないか微妙なところにも腐心する。そこに岩田さんの真骨頂がある。

40を過ぎ、体力気力の限界と闘ってきた。50歳までは現役で踊りたいと思っていたが、第一線を退くことを決めた。自分を育んでくれたボリショイを退団し、振付師に専念する。そして日本とロシアの懸け橋になろうと意識している。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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