海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 グラウンドで繰り広げられるスクラム、タックル、トライ…。選手たちの一挙手一投足に、歓声があがる。中でも、えんじと黒のジャージは、絶大な人気チームだ。
 創部93年の由緒あるチーム、早稲田大学ラグビー部。東西対抗と大学選手権の大学タイトル24、関東大学対抗優勝34回、日本選手権優勝4回を誇る名門チームだ。
 そのチームを、カリスマと言われた清宮克幸監督から引継ぎ、独特の選手育成法で、見事なチーム作りをしたのが前監督の中竹竜二さんである。中竹さんは、去年3月まで4年間、早稲田の監督を務め、現在は、日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターという立場である。

カリスマの後任リーダー

 それにしても、5年前、突然、早稲田の監督を要請されたときは、カリスマ清宮さんの後任が務まるのかと、本人が一番驚いた。清宮監督は、トップダウンで、強烈なリーダーシップを発揮した。およそ10年優勝から遠ざかり、低迷していたラグビー部を再建し、5年間で大学選手権3回優勝、2回準優勝に導いた。その清宮さんの推挙なら、「男として受けざるを得まい」。サラリーマンをやめて引き受けた。「勝って当然」というプレッシャーもあったが、偉大な人の後を継げる嬉しさもあった。
 就任直後は、清宮さんと、ことごとく比較され、批判もされた。「あるべき論に引っ張られていたら切りがない。引力は責任を取ってくれない」と、世論に振り回されなかった。
 選手たちは、清宮さんのような魔法の言葉を待っていた。それがないとわかると、信頼されていない空気が伝わった。「日本一オーラのない監督」を自認した。細身でなで肩だから、存在感がなく、威圧感もない。声に迫力がない。口調も視線も柔らかだ。表情もどこか自信がなさそう。すべて清宮さんと対照的だった。
 「期待にこたえない。他人に期待しない。怒るより謝る」これが中竹スタイルだ。そうすれば、感情のコントロールが出来て、イライラもしなくてすむ。

オーラのないリーダー

 中竹さんの独特の育成法は、自らのリーダーシップを発揮するのではなく、選手が練習や試合での課題を自分で考えていく方法だ。それを「フォロワーシップ」という。リーダーをフォローする人間が確立されていれば、組織はしっかりする。

 リーダーだけで解決策を求めてきた組織論には限界がある。これからは、自律したフォロワーが求められる。若者は、機会を与え、環境を整え、立場を用意すれば、挑戦や失敗の繰り返しの中で、劇的に成長する。
 学生の主体性を尊重し、ともに考え、ともに戦うチーム作りを目指した。監督、コーチ、部員が対等に議論する関係は、オーラがないから作りやすかった。オーラのないリーダーは、チーム内に溜まった不満や疑問も吸収しやすい。
 就任2年目の出来事だった。部員の一人が、練習後「中竹死ね!辞めろ!」の罵声を浴びせたことが耳に入った。こういう態度を取ると、ふつうは、原則休部か退部だ。中竹さんは、この一件が、チームをまとめるきっかけになると予感した。数日後、その部員と個人面談をした。彼は、不満をまくし立てた。聞くだけ聞いて、「直接見たことか」と質したら絶句した。彼は、噂や推論で判断していた。見てもらっていないと訴えた彼の練習や試合を、きちんと見ていたことを具体的に説明した。彼は、泣き出した。男らしくない態度は許せないと指摘した上で、いろんな話をじっくりして、誤解は解けた。
 「何が出来る?」と聞いたら、彼は「部員の誤解を解く」と自分から言った。想像通り、これ以降、チームの雰囲気は改善された。2007年度、2008年度の大学選手権連覇を達成した。

昔から目立たないリーダー

 中竹さんは、1973年、福岡県中間市の生まれ。
 1つ上の兄、9つ下の弟の3人兄弟。鉄工所経営の父は絶対専制君主だった。元番長で、すごい威圧感、存在感だった。ただし、ああしろこうしろと親の思い通りにはしなかった。兄がやっていたのを見て、ラグビーを始めたが、それに関しても、とやかく言われなかった。ラグビーの試合すら見に来なかった。
 目立たない少年だった。なのに、学級委員を任された。地域のラグビーチームのリーダーにもなった。福岡のラグビー名門校の東筑高校でも、ラグビー漬けの日々を送った。1浪して、早稲田大学へ進んだが、チーム一足が遅く、3年間レギュラーになれなかった。だが、チームの潤滑油的存在でもあり、理不尽なことは、監督やコーチに物申した。こうした姿勢が買われたのか、チームメイトから主将に推された。3年までレギュラー経験のない初の主将だった。

いまや日本ラグビー界のリーダー

 2019年、日本で開催予定のワールドカップに向けて指導者養成が急務だが、中竹さんは、いわばコーチを育てるコーチという役回りを担っている。
 日本代表は1987年の第1回大会から途切れなく出場を続けているが、本大会では、ジンバブエに勝ったのが唯一の勝ち星だ。2007年のフランス大会ではオーストラリア代表91−3という大差で負けており、世界のトップクラスの国々とはまだ大きな開きがある。
 2019年に向けて、コーチたちに、課題を与えて、考えさせるようにしている。変化に即座に対応しながら、選手のここが伸びた!と成果で語れるコーチを育てるべく、東奔西走しながら全力投球の日々だ。いまや日本ラグビーの未来は、中竹さんの双肩にかかっている。
 中竹さんは、「判断」と「決断」は違うと考えている。「判断には、良し悪しがあるが、決断にはない。あるのは、やるか、やらないかだけ。未来は未定だから『判断』出来ない。だが、思い切って未来に向かって『決断』しよう!」静かな口調の中に、内に燃えたぎるマグマを感じた。2019年が待ち遠しい。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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