海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 大河ドラマ『龍馬伝』の勝海舟、こころなしか、龍馬のことが気になってしかたないように見える。それもそのはず、演じる武田鉄矢さんは、18の年から、龍馬にかぶれていたからだ。「今度は、龍馬を育てていただけませんか」が出演を依頼する殺し文句だった。一も二もなく引き受けた。
 「落語家のようなしゃべりでコミカルに演じてみたい。しゃべってしゃべってまくし立てる感じで」勝海舟を演じる。「福山龍馬には、気負いがないねぇ。僕は熱すぎるんだね」と述懐する。2人の娘は、福山龍馬にかじりついて見ていて、父が出ることなど関心がないようだと照れ笑いする。

竜馬が生き方を決めてくれた
 今年1月に出版されたばかりの『私塾・坂本竜馬』。熱く熱く竜馬について武田さんが語った初の竜馬本だ。
 18歳の時、受験生だった武田さんは、先が見えず、何のために生きているのかもわからないでいた。そんな折り、故郷の本屋に並んでいた司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を偶然、手に取った。生まれて初めて買った小説だった。
 「その夜の内に、我を忘れ、竜馬と旅に出た。以来、竜馬のように生きたいと思い、還暦の今まで42年間を生きてきた。私を躾けてくれたのが、ほかならぬ竜馬だ」。
 当時、買った本は、いまでも大切にしている。特に第五巻の「回天編」は、何百回読んだことか…。竜馬の切り抜き写真が貼ってある。書き込みもいろいろしてある。肌身離さず、抱きしめるように持っている。
 司馬さんの竜馬に関する表現が素敵で、線を引いたり、しおりを挟んだりして読んだ。カバーは破れ、背表紙の綴じは緩み、黄ばんでしまった。
 「なにしろ、竜馬のようになりたかった。今も、これを見ると、当時の興奮が思い出され、涙が出てくる」。
 『自分で自分の。がら?に合う舞台をこつこつ作り、その上で芝居する』という言葉が、『竜馬がゆく』の中にあった。それが、武田さんの一生を決定する言葉になった。舞台を自分で作る役者を目指した。自作自演、企画・脚本・主演、シンガーソングライターの生き方を選んだ。

竜馬の影響ははかりしれない
 ドラマ『3年B組金八先生』にも、竜馬が影響している。
 竜馬の言葉は、詩人のように巧みだ。決して忘れることができない短い言葉を、ポイッと人の心に投げ込む。すると、その言葉が心の真ん中で波紋のように広がる。

 「人をわなにかけるような言葉ではなく、腹の中でちゃんとぬくもりのできた言葉」。「耳から心にすわりのよい言葉」と司馬遼太郎は、表現している。
 武田さんは、金八先生役を演じた時、教え子に人生などを説く時、この竜馬の声を見習い、「言葉を腹の中で温め、自分の体重をかけて、一つ一つの言葉を生徒の心に置きにゆく」ようにした。そう言えば、ふだん武田さんの語り口も噛んで含めるように優しい。ちなみに金八先生の名字は、『坂本』だ。

竜馬はどうしたかではなく
竜馬は何故そうしたかが知りたい

 たとえば、竜馬の思考方法。竜馬は、土佐藩を脱藩して自由人となった。あの時代に、様々な束縛から逃れ、世界的な視野の広さで、自分の役割を考えられたのは、どうしてか…。あの殺戮の時代に、敵を作らない生き方をした。仇の人物とさえ、手を組むことが出来るのは、どうしてか。竜馬は、並の人とは、視点の置き所が違った。
 『海援隊』は、竜馬が結成した貿易結社。日本初の株式会社と言われる。『海援隊』とは、抜群のネーミングだ。海からこの国を援助する者たちでありたい。軍隊にもなれば、商船隊にもなる自在さがある。海からの視点を持てば、仇と見えた人物も「ただの点」に見える。世界という舞台の中で、日本を考えることが出来た。日本史に初めて登場した日本人と言える。「私さえ忘れてしまえば、絶望には何の意味もない」。それが竜馬の根本にある考え方だ。

 最近の武田さんの活動の中で、興味深く思っているのが、『降りてゆく生き方』という映画だ。武田さん演じる団塊世代の営業マン・川本五十六が主人公。地方都市のリゾート開発に乗り込むものの、村の人たちと関わる中で、経済至上主義の「昇っていく生き方」を見つめ直す。人と人が出会う中で、孤立するのでなく、他者や自然に生かされていることに気付き、新しい生き方に目覚め、つながっていくという物語だ。
 「地に足を着けた生き方が逆に可能性を広げていく。映画から、格差社会から抜け出す道が見えてくるのでは…」。
 自主上映にこだわった映画で、劇場公開やDVD発売、テレビ放映は一切しない。なのに全国で開かれる上映会は、長蛇の列という。いま、とらわれない、こだわらない、昇らない、「降りていく生き方」が求められているのかもしれない。
 先が見えず、生き方に迷った時、「おーい、竜馬」と呼べば、竜馬が答えてくれるはずだと、武田さんは信念で思う。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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