海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

20年の変化
 大谷貴子さんが、名古屋で「東海骨髄バンク」を立ち上げてから、丸20年になる。その20年の間に、ずいぶんいろんなことが前進した。ドナーの登録がようやく30万人を超え、計算上は、患者の半数まで移植可能になった。国内の骨髄移植が1万例を超えた。
 大谷さん自身、大学院生だった25歳の時に、慢性骨髄性白血病と診断され、奇跡的に白血球の型が合っていた母から骨髄移植を受け、九死に一生を得た経験を持っている。すっかり元気になったいまは、全国骨髄バンク推進連絡協議会会長として、白血病の患者の命を救うために奔走している。

 講演は、年間300回に及ぶ。都道府県で訪れていない場所はない。白血病のこと、骨髄移植のことを、少しでも知ってほしい一心で全国行脚をしている。まだ残る「遺伝する、伝染する」といった偏見をときたいという思いもある。

 20年間の変化と言えば、なんといっても、大谷さんが「魚屋さんの女将さん」になったことだ。95年2月、埼玉県加須市の青年会議所主催の講演がきっかけだ。会議所の専務理事をしていた関口隆さんと交際の末、97年7月に結婚した。
 バンクにどっぷり浸かっていた自分に新しい世界を教えてくれた人だ。「この10年で夫の頭髪は10万本減り、私の体重は10キロ増えた」と大阪人のノリで話す。

姉の愛ある叱咤
 千葉大学の大学院で英語の研究者を目指していた。修士論文の提出を控えた86年12月、発病した。治療には、骨髄移植しかなかったが、提供者と患者の型が適合しなければならない。親子では可能性が低い。他人同士でも、500人から10000人に1人の確率と言われる。ただ兄弟姉妹では、4分の1の確率で適合する。姉との一致に望みを託したが合わなかった。卒業アルバムを手がかりに、同級生一人一人に電話して、必死の思いで依頼したが、適合者は現れなかった。
 万事休すかと思った矢先、万に一つの確率でと、母が再検査を受けたら、なんと適合した。しかし、喜びもつかの間、病状は進行し、細胞のほとんどがガンに侵された状態だった。7人の医師団のうち6人が移植に反対した。残る1人も「成功の可能性は1%」と言った。それを聞いた姉が「1%もあるやん」とあっけらかんと言い放った。その言葉が、慎重な医師団の決意を促した。

 周囲が沈みがちな中にあって、姉の深い愛情と叱咤激励は大きな支えになった。妹が病気と聞き、住んでいたアメリカから、急遽帰国してくれた。姉は「親が泣いてばかりだったから、私がやらなければ」と思ったからと、後にパワフルな言動や行動の理由を教えてくれたが、大谷さんは、「逆の立場だったら、決して、あそこまではできない」と思った。
 「骨髄バンク作ったら?」と言ったのも姉だった。アメリカの骨髄バンク事情も調べた上で、「貴子に間に合わなくても、誰かの命に間に合えば、生きた値打ちがあるよ」とこともなげに語った。
 明けて88年、1並びの1月11日に、移植手術は行われた。大谷さんはこの日を第2の誕生日と呼んでいる。去年2度目の成人を迎えた。
 助けられた命を生かして、白血病のために役立ちたいと、退院後、骨髄バンク設立に向けた活動を開始した。患者たちには、「今日を信じてください。今日寝たら、明日が今日になって、その今日を信じてほしい」と、自らがそう思い続けて生還した体験に裏打ちされた言葉で励ます。医師と患者の架け橋になるには、プロの知識を身につける必要があると考え、92年には、初級カウンセラー、94年には、精神対話士の資格を取得した。

 実は大谷さんの両親は、最高裁までに及ぶ長い離婚調停の後、発病と時を同じくして、離婚していた。
 一昨年6月、父は胃がんで死去したが、その半年前に、両親は復縁した。亡くなる半年前、父が自ら母に看病を頼んだのだ。父の病床に家族が全員顔を揃え、家族がまた一つになれた。
 内科医だった父は、大谷さんが白血病とわかったときは、わが娘を救えない絶望感から泣いてばかりいた。しかし自分の発病後は『自分が、子どもより先に死ねるとわかって良かった』と、穏やかに語っていた。
 父に反感を抱いていた時期もあったが、「父がいるからこそ、自分がいる」と気づけた。病気を経験して多くの感情に出会ったことが、大谷さんを成長させてくれた。
 「生きているそのこと自体が人の役に立つ。小さな積み重ねが誰かのためになる」。大谷さん自身が、誰かのために生き続けたいのだ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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1,400円(税別)
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

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