海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

ナンセンスな麟太郎さん
 絵本文章家の内田麟太郎さんが、これまで手がけた絵本は100冊を超え、数々の賞も受けている。個性的な文体で独自の世界を醸し出している。内田さんの絵本には、おかしさとあたたかさがある。
 最近では『ともだちや』シリーズが人気だ。シリーズ全体で150万部、第1巻だけで31万部出ている。キツネとオオカミの友情が描かれている。
 ある日、キツネは1時間100円で、次々、友達になってあげる「ともだちや」を始めることを思いつくことから、ストーリーが展開していく。「はじめにタイトルありき。タイトルの響き、語感に刺激されて」書き始めた。

 内田さんといえば、ナンセンス絵本の名手。「ナンセンスの笑いは、知的でも論理でもなく『赤ちゃんの笑い』に近い」。みんなが笑える笑い。とにかく人を笑わせたい。過去の自分が「笑い」に救われていたから・・・。
 長新太さんと絶妙のコンビを組んだ。長さんとの共同作品といえば、絵本にっぽん賞を受賞した『さかさまライオン』。ライオンの影が、いつも影の存在である自分を嫌になり、ふとした拍子にライオンの本体と入れ替わって大活躍するという物語。
 『さかさまライオン』の受賞は、育ての母との関係に大きな変化をもたらす。長年憎んでいた育ての母親との関係に変化が起きた。受賞を知らせたら、母は、喜びのあまり電話口で泣いた。内田さんは「何かが終わった」と感じた。そして、それまで一度も見たことがなかった子ども時代の夢を急に見るようになった。それは、一人ポツンと野原に立っている寂しい夢だった。

 内田さんは、1941年、福岡県大牟田市の生まれ。6歳の時、生みの母が28歳で亡くなり、その後、父が再婚した。新しい母の連れ子2人、再婚後に生まれた2人。あわせて6人の男兄弟となった。しかし新しい母は、自分の産んだ子しか愛さず、相当辛い思いをした。「家に帰るのがイヤだった。小学生からグレてしまい、いつもひとりだった」。
 ついに19歳の時、鬱屈した思いが爆発した。母を殴り、台所へ包丁を取りにいこうとしたら、母が逃げ出した。内田さんは、その後、追い詰められるように東京へ向かった。

 東京で看板職人になった。趣味の詩を書く仲間や、21歳で結婚した妻が心のよすがとなり、母親への復讐の念がしだいに薄らいでいく。
 37歳の時、二日酔いで看板を描いていて、梯子ごと倒れ、腰椎を骨折。看板工に戻るのは不可能だった。2ヶ月の入院中に「子ども向けの詩」を書き始める。生活のためだった。

ナンセンスでなくなった麟太郎さん
 育ての母と心が通じたのは12年前、55歳の時だった。講演のついでに立ち寄った実家でたまたま2人きりになった。卓袱台の上にはお菓子があった。言葉少なくお茶を飲んでいた。そのときの光景は目に焼きついている。
 唐突に母が切り出した。「麟ちゃん、愛せなくてごめんね」。「もういいよ」とだけ答えた。母のその一言で、『もう母のことを書いてもいいんじゃないか・・・』と思った。
 内田さんは、書くまい、書けないと思っていた「おかあさん」をテーマにした作品を書くようになった。『かあちゃんかいじゅう』、『おかあさんになるってどんなこと』、『かあさんのこころ』と沈黙を破った後は、次から次に堰を切ったように出版した。「これらの絵本を書くために生きてきたのか・・・」と本人が思うほどだった。
 『おかあさんになるってどんなこと』で、内田さんはこんなふうに書いている。『おかあさんになるってことは・・・しんぱいして、おもわずぎゅっとだきしめて、おもわずなみだがでることよ』と。母親になり切れない女性が増えている昨今だから、「お母さんになることは難しくない」と訴えかける。
 自分もそうしてもらいたかったから、どの子も無条件に愛されてほしい。たとえ、血がつながっていなくても子どもを愛することは出来る。
 もう「ナンセンス」だけにこだわる気持ちはない。かつては「ナンセンスでなくては」と執着していた。母を許し、自分の気持ちを素直に受け入れられるようになってからは、「自分の気持ち」がそのまま作品に出せるようになった。
 「人間誰しも、昨日までの自分から、新しい自分に生まれ変われる」可能性を持っている。過去に執着していた自分を乗り越える力を持っている。
 内田さんの好きな言葉は、「昼寝、ごろ寝、またね」だとか。内田さん、またね!

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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