海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

 新聞や雑誌の題字、映画やテレビドラマのタイトル文字、様々な分野のアーティストとのライブパフォーマンス…いろんなところに武田双雲さんが揮ごうする文字が躍っている。来年の大河ドラマ『天地人』の題字も手がけた。義と愛を重んじた戦国時代の武将、直江兼続が主人公だ。「傷つきやすい人間が志を持って飛び跳ねるイメージ、弱そうだが元気のある字に仕上がった」と双雲さん自身もご満悦だ。

武田双雲が出来るまで(前編)
 双雲さんは33歳。格闘家のようなガッチリとした体格をしている。身長も1メートル90センチはある。胸板も厚い。1975年、熊本市生まれ。3人兄弟の長男である。三男も書道家・双龍として活躍している。9歳下の三男をおんぶして世話をしていた。だから子守りは得意なのだ。
 3歳から書道家の母(双葉)に手ほどきを受けていたが、書道家になるつもりはなかった。サラリーマンに憧れていた。東京理科大を卒業して、NTTに就職した。「満員電車、くだらない会議…一つ一つに感動した。興奮した。視野が広がった」
 NTT川崎支店に新人として配属され、そこで出会いがあった。伴侶になる玲子さんとの出会いだ。玲子さんに言わせると「うるさいし、下品だし、まるで野獣のようだから」キライなタイプだった。一方の双雲さんは、「ほとんど話さず物静かなのに、自分の意思は通す」と分析していた。互いに、いままで出会ったことのない珍しいタイプだった。だからこそ、惹かれあったのだろう。
 双雲さんは2000年の夏、熊本に帰省して、母の書を見て、改めて「うまい!」と感心した。母の字をインターネットに紹介した。先輩の名刺を「書」で作ったら好評だった。新たな世界が広がりそうな予感がした。
 NTTを辞め、書道パフォーマンスのイベントを企画する。玲子さんは、週末の休み、その手伝いをしてくれた。2003年9月、二人は結婚する。
 新婚旅行先で、自分一人だけタッタカ先に行く双雲さんを目の当たりにして、玲子さんは離婚しようかと思ったという。「ティッシュペーパーを取って」と言ったら、箱ごと投げつけられ、ショックで泣いたという。まさに二人の結婚は異文化の出会いだった。

武田双雲が出来るまで(後編)
 新婚生活をスタートさせたものの、書道家として軌道に乗るまで時間がかかった。「書教えます」のチラシを1000枚作っても、電話1本も来なかった。しかし双雲さんは決して悲観的にならなかった。お金が減っていくこと自体が面白いと思える性格だった。彼の信条は「行き当たりバッチリ」なのだ。
 地元の藤沢駅前の路上で、書道パフォーマンスを展開した。「あなたの言葉書きます」と銘打って、その人と話したことをもとに、その人を表す言葉を書く。
 最初に書いた字は、酔っ払いに頼まれた「松田聖子」だった。金持ちの人と身の上話をした上で書いた「豊」の一文字を見て、その人は泣いた。
 双雲さんは「伝えたがりや」だ。伝えたいことを先に考えていると、いろんな書が出てくる。自分が何時間かけても伝えられないことを「書」にしている。

 「電車で足を踏まれてイライラしたとき、何でイライラしてるのかな?料理をおいしいと思った時も、何でおいしいと思っているのかな?」というふうに、もう一人の自分が双雲さんの言動や行動を面白がって見つめている。日常の積み重ねを面白く見ているのだ。家庭生活もそのように見ている。
 双雲さんは「結婚とは、ぜいたくな修業だ」と言う。「違うから楽しい」のだ。半円が重なり合う「○」の書がある。「武田双雲」は、双雲+玲子で出来上がっていると自認している。玲子さんは愛ある批判者だ。出来上がった書を見て、「全然ダメ」「興味ナイ」とストレートな物言いをする。「褒めてくれるのは1割程度だけど、大体、評価は当たっているんだよね」と双雲さんは苦笑する。

 双雲さんは、二人の子の父親である。長男が3歳3ヶ月、長女が7ヶ月。二人が生まれるとき、いずれも立ち会った。長男の時は9時間に及んだ。「これまでの人生で一番頑張った」と言う。出産に立ち会い、「愛がほとばしった」。産声に感動して号泣した。かなりの感激屋である。誕生の翌日「愛」の一文字を揮ごうとした。愛の上にめらめら燃える炎のようなほとばしりが描かれている。
 子どもたちとは、一緒になって徹底的に遊ぶ。「無二の親友、気の合う仲間って感じ」だそうだ。夫人に言わせると、もう一人、大きな子どもがいるようだ。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
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「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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