海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

大家族の住む一軒家

 お年寄りも、子どもも、障がい者も、何の区別もなく、みんなが笑顔で楽しく過ごす場が富山市にある。デイケアハウス《このゆびとーまれ》。15年前に、惣万佳代子さんが看護師の仕事をやめ、この施設を作った。
 このゆびにとまった人は、原則的に受け入れる。1日平均30人が利用している。誰が利用者で、誰がスタッフかわからない。利用者は、テレビを見たり、料理の下ごしらえを手伝ったり、子どもをあやしたり…みんな思い思いに過ごしている。それぞれ自分が出来ることをして、助け合いながらくつろいでいる。

 施設というより大家族の住む一軒家って感じなのだ。入浴や食事介助など最低限必要なケアはするが、あとはスケジュールに縛らない。地域密着で、多様な人が交じり合い、利用者もスタッフも区別がない中で、互いに役割を持ち、充実した日々を送り、笑顔で死んでいける。そんな場所が《このゆびとーまれ》なのだ。

全国に広まる富山方式
 デイケアハウスとは、デイ(昼間)ケア(世話)ハウス(家)。文字通り、昼間、身の回りの世話をする家のことだ。惣万さんが、デイケアハウスを作ろうと思ったのは、20年の看護経験の中で「病院のベッドではなく、畳の上で死にたい」と望んでいる高齢者が多いこと、そのための家族の負担を少しでも軽くしたいという思いからだ。
 内科と小児科にいたので、高齢者と子どもの相性がいいことは、わかっていた。お年寄りや子どもがひとつ屋根の下で暮らすのは、昔からの日本の文化だ。
 惣万さんの考え方には、母の介護体験も影響している。母は15年リウマチと闘った。母は、ベッドの横に、孫を集めて本を読んで聞かせていた。最後まで、人の役に立ちたいという母の笑顔ばかりが印象に残っている。看護師になろうと思ったきっかけも母の病気だった。
 平成5年、看護師仲間3人と退職金を出し合ってオープンにこぎつけた。《このゆびとーまれ》という名前は、誰でも気軽に利用してもらえるようにと願いを込めて付けられた。
 オープン当初は、利用者も少なく赤字経営だった。初心を忘れず、このゆびをたて続けていたら、市民から年間一千万円以上の寄付があった。学生時代の同級生、勤めていた病院関係者からの寄付もあった。こういう施設の存在を求めている証しといえた。

 福祉の大きな壁にもぶつかった。福祉行政では、高齢者、障がい者、子どもと厳しい線が引かれ、どれか一つに絞らないと補助金も出ないありさまだった。
 惣万さんの粘り強い説得交渉の結果、3年後には、富山県と富山市も「このゆび」にとまってくれた。縦割りを見直し、柔軟な補助事業を打ち出したのだ。平成11年、富山県初のNPO 法人として認可された。認可された5月12日は、惣万さんが敬愛するナイチンゲールの誕生日でもあった。
 赤ちゃんからお年寄りまで、障がいのあるなし問わず、一緒にケアする活動方式を《富山型》とも《富山方式》とも呼ぶ。行政の柔軟な補助金の出し方も、《富山型》と呼ばれている。障がい者が地域で普通の生活を営むことを当然とする真のノーマライゼーションが実現した。この《富山型》が全国に広まりつつある。

明日の百人より今日の一人
 お年寄りにも、子どもにも、障がい者にも、境界を作らないメリットは、いくつもある。
 子どもの世話をすることで、お年寄りが生き生きとしてくる。子育てをしていた頃を思い出し、生活の満足感が高められる。
 子どもの動きに触発され、お年寄りの動きも活発になってくる。子どもの相手が仕事だと思って来ていた認知症のお年寄りもいる。認知症でも、子どもの名前は覚えている。
 役割がある、頼られているという誇りが、性格を前向きに変えていく。
 子どもも、お年寄りから叱られたり褒められたり、親とは違うスキンシップを得られる。と同時にお年寄りの温かさ、厳しさを身をもって知る。お年寄りが介護される姿を見ることで、子どもに思いやりの心が自然に身につく。
 障がい者も、身近な居場所を確保出来て、社会的自立が図れる。知的障がい者も、認知症のお年寄りに教えることで、存在感を得る。
 地域に生まれた新たな家族、みんなが同じ仲間という気になってくる。

 惣万さんが支えにしている言葉に、赤十字の理念で「明日の百人を救うより、今日の一人を救え」がある。目の前で困っている人を助けることが使命だと思っている。自分に何が出来るか考えつつ、小さなことをコツコツ積み重ねていくしかないと思っている。

 惣万さんの語る富山弁は、実に味わいがある。
「やわやわとやらんまいけ」コツコツやっていくことをこう言い表した。
「ゆっくりやっていこうよ」という意味合いである。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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