海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

ONEDAY ONE

 『♪横たわる君の顔に朝日が差して…』
 1979年の大ヒット曲『きみの朝』。歌っていたのは、岸田敏志さん。ありゃ、名前が違う?知らぬ間に、岸田さんは改名をしていたのだ。「智史」を「敏志」に改めた。
 21世紀を目前に控えた2000年、何か注目を集めることをと、改名を思いたった。以前から、「智史」は書きづらく、しっくりこなかった。読み方は、そのままに漢字を変えてみた。
 しかし、名前を知ってもらうことが、どんなに大変なことか痛感した。8年経った今でも、同一人物と思われないことが多い。それだけ、以前の名前「岸田智史」のインパクトが強かったということだ。

 日本武道館で開いた1991年の15周年記念コンサートを一つの区切りに、岸田さんは、歌手活動から遠ざかっていた。『渡る世間は鬼ばかり』などのドラマ、『ミス・サイゴン』などの舞台…と、俳優としての活動に力を入れていた。
 最近、再びコンサート活動を始めたのは、母の一言からだ。5年前に亡くなった母に、病床で「もう一度、歌っている姿が見たい」と言われた。
 2003年6月に母は亡くなり、生前に母の願いは聞き届けられなかったが、3ヵ月後の九月に、コンサートを再開した。
 『COCOLO』という歌がある。「日本に生まれてよかった」…生前、母が口にしていた言葉を紡いだ。故郷に帰るたびに、母が愛した風景が壊されていくことを実感する。「すべての芸術は自然の模倣といわれる。僕も、自然からインスピレーションをもらうことが多い。」故郷への思い、身近な人に対するやさしさが、地域や環境をよいものにする道につながっていくことを願って作った曲だ。
 岸田さんの最近のコンサートのタイトルは、〈エコとエゴ〉。濁音のあるなしで、ずいぶん違う。便利は悪くないけど、追求しすぎるとエゴになる。エコを叫びながら、エゴをやめられない。
 歌で環境保護を訴えようと思っている。原点は故郷にある。親から受け継いだものを守り続けて、次世代へつなげていきたい。故郷のあたりまえ≠フ日常がいかに大切なことかと思う。
 〈ONEDAY ONE〉をスローガンに、「CO2削減のために出来ることを一日一つしよう!」と、コンサートで呼びかけている。岸田さん自身も、車の運転を減らして、自転車や徒歩に切り替えた。暑い日は、窓を開けて、打ち水をしている。寒い日は、シャツを一枚多めに着るようにしている。不便とは思わない。得るものが多い。「日本に生まれてよかったと思える日本になるようにしていきたい」

3つの偶然

 岸田さんは、昭和28(1953)年の岡山生まれ。
 両親に兄弟、親戚のほとんどが教師という家系に育った。周りは、当然教師になるものと思っていた。岸田さん自身もそう思っていた。
 幼いころは、上の兄2人や友達と、山や川で、よく遊んだものだ。ピアノも兄と一緒に習ったが、音楽より体育が得意だった。中学では、野球部に所属。ショートで一番を打っていた。そして、京都教育大学体育学科に入り、体育教師を目指していた。
 しかし、いくつかの偶然が人生を変えた。
 偶然その1。中学卒業直前、宿題で作った曲が、優秀作になった。その曲が、合唱部員によって、全校生徒の前で披露された。
 偶然その2。大学に入って自分で歌を作り始めた。大学ノートに詩を書いては、コードを書き込んでいた。それを仲間の前で歌っていた。「3年生のとき、学生食堂で斜め向かいに座っていた女子学生が、僕の歌を口ずさんでいたのを聞いて、背筋に電流が走る衝撃を受けた。僕の歌を気に入って覚えていてくれた人がいる。見知らぬ人にもメッセージが伝わった。歌うって何て素晴らしいことなんだ!」
 偶然その3。大学4年生の夏休み、友人と北海道旅行に行った。その帰り道、東京のいとこの家に立ち寄った。これが、歌手・岸田敏志誕生のすべての始まりになった。
 いとこは、シンガーソングライターを目指していた。いとこの前で、自分の歌を披露して、録音に取った。いとこが、そのテープをレコード会社に持ち込んだ。岸田さんの歌声が、消し残りのテープに入っていた。その録音を、酒井政利プロデューサーが、偶然、耳にする。酒井さんといえば、山口百恵や郷ひろみなどを手掛けた腕利きのプロデューサーだ。酒井さんから、しきりに勧誘を受け、上京してデビューを果たすことになる。
 歌手になってレコードを出すと言ったら、教師になるのが当然だと思っていた父は、大反対した。なんとか口説き落とした。後年、父の名刺を何げなく見ると「岸田智史の父」と印刷してあった。息子の活躍ぶりを見るにつけ、父は、まんざらでもなかったのだ。

 先日のコンサートで、二人の子どもは、一緒にステージに立っていた。28歳の長男はドラマーとして、女優をしている26歳の長女はバックシンガーとして。「お父さんは嬉しいよ」と、岸田さんは喜びを隠さなかった。かっこつけないところが、岸田さんの魅力になっている。
 岸田さんは、私とは同級生だ。年齢を重ねてくると、同じ年というだけで嬉しくなる。同級生が一生懸命歌っている姿を見ていて嬉しくなり、「僕も頑張らなくっちゃ」と励まされた。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

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1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
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「言えなかったありがとう」
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■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

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