海外の旅この指とまれちょっとおじゃまします元気のでてくることばたち
元気のでてくることばたち 村上信夫NHKアナウンサー

球児だった板東さん

 今年も、夏の高校野球のシーズンがやってきた。90回を数える今年は、記念大会だ。伝説の球児11人が、母校のユニフォームを着て、甲子園に集う。その中の一人が、50年前、徳島商業のエースだった板東英二さんだ。
 8月2日、思い出の甲子園でメッセージを発信して、抽選で選ばれた親子100組とキャッチボールをする。ボール一つが結ぶ絆を確かめ合いたいと、その日を心待ちにしている。「甲子園は、出るだけで価値のあるところだ」という。

 板東さんは、毎年この時期が来ると、熱くなる。特に開会式は、日程をやりくりしてテレビ観戦するようにしている。
 テレビでのマルチタレントぶりだけを知る最近の人たちは、板東さんが高校球児だったことを知らない人も多い。
 ちょうど50年前。もう、半世紀になる。第40回記念大会(昭和33年)徳島商業のエースとして出場。その後誰にも破られていない一大会で83奪三振という記録を達成した。ハンカチ王子の斎藤祐樹くんも、78でわずかに及ばなかった。
 そして準々決勝では、富山代表の魚津高校と、延長18回を戦い抜き、引き分け再試合となった。結果、決勝まで進んだが、山口県代表の柳井高校に敗れ、準優勝に終わった。
 50年前の徳島新聞にこんな記事があった。当時18歳の板東少年曰く「試合に行く途中に美人に会うと勝ったんだか、決勝戦の前は会わなかった」と。なかなかの度胸である。
 「準優勝も引き分け再試合も、おまけ。開会式で徳島県代表、徳島商業高校≠ニ呼ばれ、グラウンドに一歩踏み出したときが、いちばん気持ちが高まった」

マルチ人生

 昭和15(1940)年、旧・満州生まれの68歳。ほっぺに少し赤みがあるのは、凍傷のあとだ。7歳で引き揚げてくるまで、栄養失調になりながら、母のもんぺを握りながら、大陸を8ヶ月さまよった。足手まといになる末っ子は置いていかれると言われ、必死だった。いまでも、夜の外出や外国に行くのが不安なのは、幼い目に焼き付いた記憶が消えないからだという。
 引き揚げた博多港でもらった握り飯が忘れられない。「ぜいたくなものを食べるより、温かいご飯に卵で十分」。

 父の郷里の徳島県の旧・板東町(鳴門市)に戻り、落ち着き先は、第一次大戦時、ドイツ軍捕虜がいた捕虜収容所跡。2畳の土間に5畳の板の間。そこに家族6人が暮らしていた。盥で行水し、机代わりのミカン箱で勉強をし、川で蟹を捕り、畑の芋を失敬しては、なんとかかんとかの自給自足で糊口を凌いだ。
 アメリカ軍からの配給にあったバットとボールで野球を始めたら、めきめき頭角を現した。中学時代は、連戦連勝の板東さんのワンマンチームで、注目を集めた。学費免除、部長宅に下宿という条件の徳島商業に入った。
 朝9時から夜10時まで 毎日千球の投げ込みをさせられた。ご飯も喉を通らない練習の日々だった。耐える力と負けん気が培われた。
 高校卒業後、王や長島を上回る2000万円の契約金で、中日ドラゴンズに入団した。本音は、六大学に行きたかった。教師になりたかった。家庭の事情が、それを許さなかった。プロ野球生活11年で77勝65敗。リリーフとしてもチームを支えた。しかし高校時代の無理がたたって肘に浮遊軟骨が出来て、5回以上投げるとしびれが取れなくなった。しかし「痛い」ということは一言も発しなかった。
 ただこう思った。「超一流選手は、楽をしていてもやれる。自分のことを、高校時代は鷹だと思っていたが、プロの世界では上には上がいる。所詮は鳶と、超えられない壁を実感し、野球が好きでなくなっていた。
 そして、引退。野球解説者からタレントになった。歯に衣着せぬ野球解説、野球で培った瞬発力を生かした司会、明快な回答を見せるクイズ番組…とまさにマルチぶりを発揮した。俳優にもなった。懐かしいところでは《金曜日の妻たち》でただ一人不倫をしない夫役。NHK朝のドラマ《ええにょぼ》でヒロインの父親役。映画《あ・うん》では、日本アカデミー助演男優賞を受賞する好演を見せた。
 どんなに忙しくても、約束の時間は守る。むしろ約束した時間より30分は早く行く。世話になった人に、直筆のお礼状も欠かさない。小生の番組宛にも、一人のリスナーとして何度もFAXをいただいた。几帳面な人柄を反映している。
 いまもレギュラー10本を抱える。東京─名古屋─大阪を週に2往復するノンストップ人生を送っている。「超多忙にしておかないと落ち着かない。明日から食べられなくなるかもという不安感が拭えない」のだ。
 今年から、ブログも始めた。携帯電話で写真を撮っては、文章も考えて、小まめに更新している。ブログのタイトルは『ブレイクしたいねん!
 ここまでブレイクしているのに、古希を目前に控えて、まだブレイクしたいらしい。止まるところを知らぬ生き方が、板東さんを老けさすことはない。

■村上信夫プロフィール
NHKチーフアナウンサー
1953年、京都生まれ。
明治学院大学卒業後、
1977年、NHKに入局。
富山、山口、名古屋、東京、大阪に勤務。
現在は、「今日も元気で!わくわくラジオ」(ラジオ第一8:35〜)、
「BS将棋中継」などを担当。
これまで、「おはよう日本」「ニュース7」「育児カレンダー」などを担当。
教育や育児に関する問題に関心を持ち続け、横浜市で父親たちの社会活動グループ
「おやじの腕まくり」を結成。
趣味は、将棋。
著書に「元気のでてくることばたち!」(近代文芸社)
「おやじの腕まくり」(JULA出版局)
「いのちの対話(共著)」(集英社)
「いのちとユーモア(共著)」(集英社)

「元気のでてくる"ことばたち"」
(近代文芸社)
1,500円(税別)
おなじの腕まくり「おやじの腕まくり」
(JULA出版局)
1,400円(税別)
「言えなかったありがとう」
好評発売中

■イネ・セイミプロフィール
フルート奏者として活躍中。俳画家。
絵画を幼少より日展画家の(故)川村行雄氏に師事。俳画を華道彩生会家元(故)村松一平氏に師事。俳画の描法をもとに、少女、猫等を独自のやさしいタッチで描いている。個展多数。

* 俳画教室開講中
 ところ:常滑屋
 と き:月1回 第2金曜日 午後1時〜
 会 費:1回 2,500円(4ヶ月分前納制)
 問合せ:0563−32−0583

イネ・セイミ

 堀江実のポエムコンサートをCDでお届けします。

  詩と朗読
  フルート
  ピアノ
  構 成

  Disk1
  Disk2
 堀江実
 イネ・セイミ
 はちまん正人
 佐藤よりこ

 光のように
 花のように

 言霊に癒されるCD堀江実のポエムガーデン
 やさしい風がふいています。
 木々の梢は光っています。
 あなたの心がやすらぎで満たされますように。
 あなたの心に喜びがあふれますように。

2003年10月22日発売 CD2枚組 3,150円(税込み)